小6算数「およその面積と体積」指導アイデア《およその面積の求め方》

執筆/新潟県新潟市立総合教育センター指導主事・竹内直也
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一、新潟県新潟市立新津第一小学校校長・間嶋哲

目次
単元の展開
第1時 身の回りのもののおよその面積について、方眼を工夫して数えて求め方を考える。
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第2時(本時)地図上の複雑な図形の概形を捉え、都市などのおよその面積の求め方を考える。
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第3時 いろいろな立体の概形を捉え、およその体積や容積の求め方を考える。
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第4時 学習内容の定着・習熟を図る。
本時のねらい
直線で構成されない複雑な図形の面積について、求積公式を使える基本図形として概形を捉えて、およその面積を求める方法を考えることができる。
評価規準
直線で構成されない複雑な図形の概形を基本図形として捉えて、およその面積を求め、求め方を説明することができる。
本時の展開
これは、日本でいちばん面積が大きい都市・岐阜県の高山市の形です。高山市の面積は約何㎢でしょうか。
この図だけでは、面積は分かりません。
前の時間みたいに、マス目が欲しいです。
では、方眼上の地図を見せましょう。これです。

マス目の一辺の長さが5㎞ってことは、1マスで25㎢だね。
でも、マス目がいっぱいだなあ。
しかも、ぐにゃぐにゃしているから、マス目を一つずつ数えるのは大変そう……。
ぐにゃぐにゃした形のおよその面積は、どうすれば求められるだろうか。
見通し
もっと、きちんとした形だったら簡単なのに。長方形とか。
およその面積だから、だいたいでいいってことだよね。
正確ではないけれど、大ざっぱに見れば三角形っぽいよ。
○○さんの言った、「三角形っぽい」形が見えますか。
見えます! 確かに三角形っぽい。こんなふうに考えれば、だいたい三角形に見えるでしょ。

本当だ。あ! 僕は、台形が見えたよ。
だいたい三角形、だいたい台形と見れば、公式を使っておよその面積が求められるね。
本単元の学習で最も大切なことは、「概形を捉える」ことです。つまり、子供が「だいたい三角形」「だいたい台形」と言ったように、複雑な図形のおよその形を既習の基本図形と見なす見方です。しかし、初めから三角形や台形をかき込んだ状態で図形を提示してしまっては、そのような見方を子供から引き出すことはできません。そこで、「三角形っぽい」という見方を発揮した子供の発言を取り上げ、代表の子供に三角形や台形などの基本図形の辺に当たる部分を指でなぞらせたり、一辺だけ引かせたりして、概形を捉える見方を学級全体に徐々に広げていくとよいでしょう。
自力解決の様子
A つまずいている子
図形をどう見たらよいかが分からず、元の図形を数本の直線で囲んで直線図形に変形しているだけで、求積できないでいる。
B 素朴に解いている子
図形の概形を三角形や台形などの基本図形とおよそ見なしているものの、元の図形を囲むように作図して面積を求めている。
C ねらい通り解いている子
図形の概形を三角形や台形などの基本図形と見なし、過不足を考慮したちょうどよい大きさで作図して面積を求めている。
学び合いの計画
自力解決の時間は短めに設定し、多くの子供が解決のアイデアをもてた段階で、一度全体での検討に移ります。
まず、Aのような子供の「どのように図形を見たらよいか分からない」という困り方を取り上げます。この困り方に対応するために、タブレットを活用して、図形の概形をどう捉えたかという解決のアイデアを、グループもしくは学級全体で紹介させます。
概形をどのような図形と捉えたかというアイデアの共有ができたら、再び自分で考える時間を保障します。
子供から出される解決のアイデアは一通りではありません。概形として捉えた基本図形が異なるからです。
そこで、全体発表では、求積公式を用いた複数の計算式のみを提示し、式から面積の求め方を考えさせます。基本図形の求積公式を学習している子供たちに、提示された式からどのように概形を捉えたかを予想させるのです。このような展開にすることで、子供は友達のアイデアに関心をもつとともに、およその面積の求め方は多様にあることを学ぶでしょう。
また、BとCの子供の考え方を比べさせることも大切です。Bのように、元の図形を囲むようにして基本図形を作図して考える子供もいるでしょう。逆に、元の図形の内部に基本図形を作図して求積する子供もいるかもしれません。このような場合は、元の図形に対する過不足が大きいため、求めた面積は実際よりもかなり差があるものになってしまいます。概形として基本図形を捉えても、その捉え方によっては、およその面積としての適切な範囲を超えてしまうのです。
そこで、BとCのそれぞれの考えで求めたおよその面積の大きさの違いに着目させ、大きな違いが生じた理由を考えさせます。そして、過不足をだいたい同じになるように考慮し、ちょうどよい大きさの基本図形を作図しているCの子供の考えの優れた点に気付かせていきます。
1人1台端末活用アイデア1
解決のアイデアを共有する際には、授業支援アプリ「ロイロノート」を使用します。子供に事前に送っていたカードに図形の概形だけをかき込ませ、提出箱に提出させます。子供から提出されたカードを一覧提示すれば、それぞれのタブレット上やTV画面で、誰がどのように概形を捉えたのかを知ることができます。

ノート例
全体発表とそれぞれの考えの関連付け
およその面積を求める式は、どんな式になりましたか。

いろいろな求め方があるね。
①は、式を見ると三角形の面積を求めたのだと思います。底辺が85㎞、高さが50㎞だから、きっと高山市の形をこんなふうに大きな三角形と見たんだと思います。

②は、台形の面積を求める公式を使って計算しているね。図をよく見ると台形っぽいかも。この式で求めた人はどう考えたのかな……。
これは、下の図の②のように上底20㎞、下底75㎞、高さ45㎞の台形と見て考えました。

③も、式から考えると台形のようだね。どんなふうに図形を見たのかなぁ。
これは、下の図の③のように横向きの台形として考えました。すると、上底25㎞、下底55㎞、高さ80㎞になって、およその面積は3200㎢になりました。

ぐにゃぐにゃした形も「だいたい三角形」「だいたい台形」と見ればいいんだね。
ちょっと待って。③はおよその面積が大きすぎるような気がするなぁ……。
そうだね。実際の面積はどれくらいなんだろう。
高山市の実際の面積は、2177.6㎢です。
お~! ①と②の求め方は、実際の面積に結構近かったね。③は実際よりも1000㎢以上大きくなってしまったよ。
①②と③の求め方は、何が違うのでしょう。
③は、高山市を囲むような台形になっています。これでは、高山市ではない周りの部分もかなり入ってしまっています。
①や②は、三角形や台形からはみ出た部分と足りない部分が両方あるね。
はみ出た部分と足りない部分がだいたい同じくらいになっているから、実際の面積に近い数が求められるんだね。
「ちょうどよい大きさ」の形で考えることも大切だね。
ぐにゃぐにゃした形のおよその面積は、ぐにゃぐにゃした形を三角形や台形などのように面積が求められる形と見て、ちょうどよい大きさの形で計算すれば求められる。
評価問題
横浜市のおよその面積を求めましょう。

子供に期待する解答の具体例
横浜市の形を、図のように「だいたい平行四辺形」と見て考えました。そうすると、底辺が18㎞、高さが24㎞になりました。平行四辺形の面積は、底辺×高さで求められるので、式は18×24=432となって、およその面積は432㎢になります。

感想例
ぐにゃぐにゃした形も、だいたいの形を面積が求められる図形として見れば、およその面積が求められることが分かりました。この求め方なら、湖や都道府県のおよその面積も求めることができます。高山市と横浜市の面積が分かったので、自分の住む新潟市の面積も調べてみたくなりました。
1人1台端末活用アイデア2
実際の面積を確認する際には、子供に検索アプリでどんどん調べさせるのもよいでしょう。子供たちは、自分が求めたおよその面積が妥当かどうかを前のめりになって調べるはずです。
また、方眼のない状態で都市や湖の形を提示し、概形を捉えてから求積に必要な長さを測定する学習展開も考えられます。その際は、Googleマップを利用すると、地図上の任意の2点間の距離をタブレット上で測定することができます。より実生活を意識した学習をアレンジすることも可能になります。
イラスト/横井智美
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