小3理科「地面のようすと太陽」指導アイデア
執筆/福岡県公立小学校教諭・一ノ谷 舞
監修/文部科学省教科調査官・有本 淳
福岡県公立小学校校長・古澤 律子
福岡県公立小学校教頭・企救岳 智宏
目次
単元の目標
太陽と地面の様子との関係について、日なたと日陰の地面の様子に着目して、比較しながら調べる活動を通して、それらについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主に差異点や共通点を基に、問題を見いだす力や主体的に問題を解決しようとする態度を育成することがねらいとなります。
学習指導要領では、次のことを理解するようにすることが示されています。
(ア)日陰は太陽の光を遮るとでき、日陰の位置は太陽の位置の変化によって変わること。
(イ)地面は太陽によって暖められ、日なたと日陰では地面の暖かさや湿り気に違いがあること。
子供が問題解決の活動を通して、上の(ア)(イ)を理解するように指導しましょう。また、その過程において、思考力、判断力、表現力等や学びに向かう力、人間性等を育成しましょう。
単元展開
総時数 9時間
「地球」を柱とする領域である本単元は、主として「時間的・空間的」な見方を働かせて考えることができるように促しましょう。「時間的」とは各時間における日なたと日陰の地面の温度変化等、「空間的」とは、太陽と影の位置関係等です。また、影ふみ遊びをしたり、日なたと日陰の地面をさわったりする等、体感による観察から、方位磁針や温度計等の機器を使った定量的な観察へと高め、子供の思考の流れに沿った単元展開をしていくことが大切です。
第1次 影のでき方と太陽の位置を調べる。
1 影ふみ遊びを行って、気付いたことを話し合う。 授業の詳細①
2 影の向きと太陽の見える位置を調べる。
3 影の向きが、時間が経つとどうなるのかを調べる。 授業の詳細②
4 太陽の位置は、一日の中でどのように変わるのかを調べる。
5 かげの動き方の学習を生かして日時計を作り、時刻を調べる。
第2次 日なたと日陰の地面の様子について調べる
6 日なたと日陰の地面の様子で気付いたことを話し合う。
7、8 時刻を変えて、日なたと日陰の地面の様子で気付いたことを話し合う。
9 学習のまとめと振り返りを行う
授業の詳細
第1次 影のでき方と太陽の位置を調べる
1 影ふみ遊びを行って、気付いたことを話し合う。
影ふみ遊びを通して、影のでき方に興味をもたせます。
影ふみ遊びは、体育館や校舎、木などの大きな影ができる場所に、コートを作ります。子供達は遊んでいる間、自分や友達の影についての気付きをもつことができます。さらに影の向きの共通点に気付くことができるよう、意図的に影ふみ遊びをしている写真を準備しておきましょう。また、遊びの途中で日陰の中に逃げる子供にわけを尋ね、そこから「影はどんなところにできるのかな?」と問うことで、太陽があるところに影ができることを意識させましょう。「日陰では10秒休憩してよい」などのルールをつけたしていくことで、日なたと日陰の暖かさの違いに気付き、第2次「日なたと日陰」の気付きへとつなげることもできます。
影や太陽について、気付いたことを教えてください。
影は動いたらついてきて、いつもぼくの下にありました。
影ふみ遊びで、鬼に捕まりにくくするコツを見つけた人はいますか?
影が前にできるように走ったら捕まりませんでした。
影ふみ遊びの時に撮っておいた、影の向きが同じことが分かる写真を提示します。ここでは、「影は同じ向きにできる」ことを全体で確認しましょう。そうすることで、3時の「いつも同じ向きにできるのか」という発問で、子供の思考に揺さぶりをかけることができます。
確かに、同じ方向に走っていますね。みんなの影はどうなっていますか?
みんなの影は、同じ向きになっています。
どうして影は、みんな同じ向きになっているのでしょうか?
太陽が上にあるからだと思います。
では、写真のどこに太陽があるのでしょうか?
太陽の位置を予想する際、写真の中に太陽マーク(掲示物)を貼りながら話し合うことで、影と太陽の位置関係について問題を見い出すようにしましょう。また、発表する際はそのわけも聞き、根拠のある予想を立てられるように配慮します。根拠のある予想を立てるためには、影ふみ遊びはもちろん、影送りなど様々な影遊びを体験させておくことが大切です。
確か背中の方に太陽があったような…
影送りをした時、影の反対にあったので右にあると思います。
まだはっきりとはわかりませんね。次回は、どんなことを調べたいですか?
できた影のどこに太陽があるのかを調べたいです。
2 影の向きと太陽の見える位置を調べる。
ここでは、グループで観察を行います。一人一人が自分で影を作り、太陽の位置をグループの友達に確認してもらうようにしましょう。影と太陽の位置が反対になっていることを実感させるために、必ずそれぞれがある場所を指さすようにします。最後に今日分かったことを使ってもう一度影ふみ遊びをします。1回目とは違う時間に行うことで、前回と影の向きが変わっていることに気付く子供もいるはずです。次時の導入に使うために、1枚目の写真と同じ場所で影ふみ遊びの写真を撮っておきましょう。
・太陽は絶対に直接見ないように指導し、遮光板(JIS規格)を使用して観察します。
・色付き下敷きなどでは、太陽からの有害光線を遮る働きがないため、目を痛める可能性があります。
・遮光版を落とさない、汚さないなどの決まりをきちんと守って使わせましょう。
授業の詳細②
3 影の向きが、時間が経つとどうなるのかを調べる。
①問題を見いだす【自然事象との出会い】
前の時間に、どんなことがわかりましたか。
影は同じ向きにできることと、必ず影の反対に太陽があることがわかりました。
影は、いつでも同じ向きにできるということですね。
それは違うのでは…
なぜそう思ったのですか?
2回目の影ふみ遊びのとき、影の向きが1回目とは違ったからです。
同じ場所で撮った影ふみ遊びの写真を、黒板に並べて掲示することで2つを比較し、影の向きや建物、木の影の大きさや形の変化等に気付くことができるようにしましょう。
2枚の写真をくらべて、どんなところが違いますか。
やっぱり影の向きが違います。
影は同じ向きにできるはずなのにどうしてでしょう。
時間が違うからかな。影は動いたのかな。
時間がたつと、かげのいちは、どうなるのだろうか。
②予想する
イラスト/したらみ 横井智美