小6国語 「町の未来をえがこう」で生まれた児童のアイデアを、地域連携で実現!──実践レポート from 仙台
目次
実際の子供たちの姿
地域の課題を意識したアイデアが生まれる(2021年 10月・11月)
小6国語科の単元『町の未来をえがこう』をきっかけとして、総合的な学習の時間において、「宮城野小学校の地域をどのような地域にしていきたいか」「自分たちにできる取組はなにか」について考えていきました。
子供たちは地域に住んでいながら、地域のことをあまり知りません。地域に住んでいる人たちの年齢構成や困り感などを考えたことがないからです。例えば、公園について言えば、どこにどのような公園があるかは知っていても、その公園をどのような人たちがどれくらいの頻度で使っているのかは分からないものです。
この総合的な学習の時間の単元は、市民センター職員から地域の課題や取組を教わることから学習をスタートさせました。地域の現状を知った上で、子供たちが町の未来を思い描くことで、机上の空論ではない地域に根差した取組を考える姿へとつながっていきました。
子供たちから出されたアイデアの例
【地域の課題】
●ごみのポイ捨てなどが多い
●近所付き合いの希薄化
【思いえがく未来の地域】
●ごみが少なく、地域の人たちがリサイクルについて考える町
●人が集まり、関わり合える場所がある町
【考えた取組のアイデア】
●捨て傘や置忘れ傘を集めて模様を描き、地域の人たちが見られる場所に展示する。
●捨てられたごみを材料にして、リサイクル作品をつくり、地域の人に見てもらう。
【地域の課題】
●公園の利用率が低い
●近所付き合いの希薄化
●防災の意識を高めたい
【思いえがく未来の地域】
●公園に人が集まり、住民の関わりが生まれる町
●防災についてみんなで備える町
【考えた取組のアイデア】
●公園を会場にして地域の住民や親子が参加するイベントやスポーツ大会を企画する。
●防災についてポスターなどにまとめて、地域の公園やお店に掲示してもらう。
活動の目的がはっきりすることで、活動意欲が高まる(2021年 12月)
市民センターと連携することで、子供たちには明確な活動の目標ができました。
●自分たちのアイデアを市民センターの方に伝える。
●自分たちのアイデアを市民センターと協力して実現させる。
この二つの活動が子供たちにとっての意欲につながりました。そして、活動が校内だけに留まらず、外へと広がっていくことで、子供たちは「地域をよりよくする」という目的を意識するようになっていきました。
アイデアの発表会では、聞き手に市民センター職員がいることで、程よい緊張感をもってプレゼンテーションを行うことができました。ノートPCで作成したスライドを見せながら、
「ぼくが思い描く町は『人と人が交流し、つながる町』です。その実現のために、公園を利用して定期的にイベントを開催することで近所付き合いを増やしたいと考えています」
「私の思い描く未来の町は『ごみゼロできれいな宮城野』です。地域の人や学校のみんなでごみ拾いを行い、集めたペットボトルなどのごみは再利用して、使える作品をつくればいいと思います」
……など、アイデアを伝え合いました。聞き手となった子供や市民センターの方々からは、
「子供たちだけでイベントを行うのは難しいのでは?」
「ごみ拾いだけでなく、拾ったごみを使ってさらにものづくりをするのはいいアイデアだね」
などといった質問や感想も積極的に出され、それぞれのアイデアのよさや課題について深める機会になりました。
プロジェクトの決定 ―子供主体の難しさ―
子供主体の活動として進めていくときに、子供が出したアイデアと実現可能な取組とのすり合わせが難しいところでした。子供たちは多様なアイデアを出しますが、もちろん全てを実現することはできません。市民センターとの打合せを重ねながら、内容や時期、場所、協力機関など様々なことを考慮して取組を決めていくことになります。
市民センター内の場所を借り、実践時期が冬なので室内の活動にするなど、総合的に考え、取組を「リサイクルアート展」「課題スライド展示」(思いをカタチにプロジェクト)に決定しました。
今回、きっかけとなったのは子供が考えたアイデアではありますが、最終的に取組を決定したのは大人。そこに、子供主体の活動を創り上げていくことの難しさを感じました。
いよいよプロジェクト開始!(2022年 1月)
子供たちと市民センターで実現させるアイデアが、置き傘やごみを再利用してつくる「リサイクルアート展」と「課題スライド展示」に決まり、冬休み明けに市民センター職員にご来校いただいて、いよいよ「思いをカタチにプロジェクト」をスタートさせることを伝えました。
子供たちは学校内のビニール傘を集めたり、家庭ごみの中からペットボトルを集めたりしながら、図画工作の授業で作品制作に取り組みました。作品をつくる際に、「地域の方が見たときに明るい気持ちになってほしい」という思いを子供たちで共有し、ビニール傘をリサイクルしたアート作品「アンブレラスカイ」や、ペットボトルを使った天井から吊り下げるアート作品「ペットボトルモビール」のデザインを考えていきました。
「ステンドグラスみたいな傘が浮かんでいたらきれいだと思う」
「色を塗ったところに光が当たると、光の色が変わってきれい! しっかりと色を塗った方がいいね」
「きれいって思ってもらえたらSNSにも上げてもらえるかもしれない」
……など、作品づくりに夢中になりながらも、見てくれる人のことを考えながら活動に取り組む様子が見られました。アンブレラスカイは3~4人で一本、ペットボトルモビールは1人一つずつ制作しました。
自分たちの取組をより広く発信するために ~有志による広報活動~(2022年 1月・2月)
1月末から、いよいよ市民センターの場所をお借りしての展示が始まると、子供たちは「どうすれば展示を多くの人たちに知ってもらえるか」を考えるようになりました。そこで、プロジェクトを広めるために有志の子供たちが集まり、授業の合間の休み時間や放課後に話合いが行われました。
「チラシを作って、校内の児童に配付して知らせれば、他の学年の子や親も知ってくれる」
「ポスターを作って、校内や地域に貼ってもらうようにお願いする」
「SNSで有名人に取り上げてもらえばたくさんの人に見てもらえると思う」
……など、様々な意見が交わされましたが、実際に子供たちが実行したのが次の取組です。
●チラシを作って置いてもらう(電話で交渉する)。
●ポスターを作って校内や地域の施設に掲示する。
●SNS(学校のブログ、ホームページ)で発信する。
●校内放送で全校児童に伝える。
有志の子供たちは、休み時間や家庭学習の時間を利用してポスターやチラシを制作したり、昼の校内放送を活用して全校児童にプロジェクトの説明を行ったりしました。
https://www.sendai-c.ed.jp/~oh-ichou/miyablog/log/eid193.html
https://www.sendai-c.ed.jp/~oh-ichou/miyablog/log/eid217.html