できるだけ早く子供たち全員と対話しよう!低学年の二学期リスタート指導術【生活&人間関係編】
1か月以上の長い休みを過ごしたことで、低学年の子供たちは、夏休み明け、学習面・生活面ともに一学期に身に付いていたことがリセットされてしまうことがあります。そこで、低学年の子供たちが安心してニ学期をスタートできるようにするためには、さまざまな支援や配慮、仕掛けが大切です。
ユニバーサルデザインや特別支援の視点から、山田洋一先生が「低学年の二学期リスタート指導術」を、「生活&人間関係編」「学習編」の全2回でレクチャーします。今回は「生活&人間関係編」です。
山田洋一(やまだ・よういち)●北海道公立小学校教諭。1969年北海道札幌市生まれ。教育研修サークル「北の教育文化フェスティバル」代表。日本学級経営学会理事。著書は『個別最適を実現する!ユニバーサルデザインで変える学級経営ステップアップ術60』『子どもの笑顔を取り戻す!「 むずかしい学級」リカバリーガイド』(共に明治図書出版)ほか多数。
目次
【生活編】視覚支援のイラストは、熟達度をスケーリングして掲示
いろいろな子供がいることを前提として、夏休み明けの生活習慣を見直していきましょう。例えば、耳からの情報だけでは、なかなか指示が通らない子供たちのために、イラストや写真で指示をする方法はとても有効です。下駄箱や教室の棚の前には、「あるべき姿(靴や道具がきれいに収められている)」を撮った写真を貼りましょう。
もちろん、一学期にもそうしていたことでしょう。しかし、時間がたつとそれらが風景となって見落とされるということがあります。そこで、熟達度をスケーリングして示すようにしてみます。
例えば、下駄箱であれば…
というような掲示物を貼るとよいでしょう。目標となる姿を示されると、自分の行いのゴールがはっきりとするので、子供たちはぐっと取り組みやすくなります。
しかし、取り組みが習慣になるには、やはり教師のさらに細かなフィードバックが必要です。靴がきれいに入っている下駄箱には、放課後にきれいなシールを貼ってあげるようにします。
最初は、シールの意味を説明しないようにします。すぐに子供たちは「あのシールは、なに?」と聞きに来ます。しかし、「なんだろうねえ。きっと、明日も貼ってあるから、意味がわかったら教えてね」とだけ答えます。シールが毎日のように貼られ、枚数が増えていく子が出てきます。子供たちは「ひょっとして、きれいに靴をしまっている人に貼るのかな」と考えるようになります。そして、それを実践してシールが貼られると、「やっぱり」と言って喜びます。
このように、生活習慣の指導は、「明確なゴール像の提示」「子供たちが良い生活習慣を模索するための仕掛け」「細かなフィードバックの提供」という3つのフレームを基に方法を工夫するとよいでしょう。
【人間関係編】できるだけ早いうちに子供たち全員と対話する
生活習慣について指導をする前に、大切なことは子供に声をかけることです。久しぶりに学校に行ったら、教師に話しかけられて、その言葉が何かの注意だったら、子供たちはその注意を素直に聞けるでしょうか。
生活習慣が「ゼロに戻っている」とはよく指摘されることですが、子供との関係性も4月に戻っていると考える方がよいでしょう。もちろん、それはゼロになっているわけではなく、少しずつ関わりをもつうちに元に戻っていくものです。
では、その関わりを元に戻す具体的な手立てはなんでしょうか。それは、第一に、できるだけ早いうちに子供たち全員と対話するということです。対話には、話のきっかけが必要です。それも、子供たちがもっと話したくなるようなきっかけを提供することが大切です。
服装を話題にする
子供たちの着ている服にはドラマがあります。子供の大好きなキャラクターがプリントされていたり、夏休みの間に祖父母から買ってもらったりということもあるかもしれません。さりげなく、「わあ、先生も○○大好き!」と声をかけてみましょう。また、夏休み明けは髪型も大きく変化することがあります。低学年だと、保護者が切ってくれるという場合も多く、そこにもまたドラマが隠れている場合が多いものです。
玄関で待ち構えよう
夏休み明けは靴が新しいものに変わっていることも少なくありません。それに気づくには、玄関で子供たちを待ち受けるのが一番です。「おはよう」の後、さっと靴を見て外靴や上靴が真新しければ、チャンスです。「ピカピカだね!」と声をかけてみましょう。
学習状況について確認してみる
夏休みの課題を誇らしげに提出している子もいれば、伏し目がちに提出する子もいます。そんな子にも必ず声をかけましょう。かける言葉は、「いやあ、難しい問題だったでしょう?」です。子供が怒ったように「全然!」といったらひと安心。「そうなの? 難しくしたつもりだったのになあ」と応じればよいでしょう。
一方で、「難しかった」という子がいたら、「特にどこが難しかったの?」と尋ね、実際にものを見せてもらいます。確認した後、「そっかあ、難しすぎたよねえ。ごめん、ごめん。じゃあ、先生とやる?」と、さらに関わりが深まるように話してみましょう。
ちょっとずらした対応をしてみる
どんな時に人の話したいという欲求は高まるでしょうか。その一つは、相手の間違いを正す時ではないでしょうか。例えば、こんなふうに話してみます。
おはようございます
おはよう! いやあ暑い夏だったねえ。スキーに言った?
行きませんよ! 冬じゃないんだから
そうかなあ、涼しいと思うけど。じゃあ、どこに行ったの?
おじいちゃんと、おばあちゃんのところ
え? アメリカ? それとも……
青森です。新幹線で行きました。新幹線、すごく速くて……
こんなふうにちょっとずらした対応をすると、子供が教師の言葉を正そうとして、自分からいろいろなことを語りだしてくれます。
続きを促す相槌をする
話をしたくなる人は、たいてい相槌が上手です。続きを話したくなる次のような相槌を多用するとよいでしょう。
「それで、それで?」
「それからどうなったの?」
「(子供の言葉をそのまま使って)○○○だったんだねえ?」
こうして、子供たちとの関係を対話によって紡ぎ直すことによって、はじめて生活指導が効果的になるのだということを心に留めておきましょう。
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「音読」と「計算」を活用した、低学年の二学期リスタート指導術【学習編】
イラスト/佐藤雅枝