小6 国語科「私と本」全時間の板書&指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小6国語科「私と本」(光村図書)の全時間の板書例、教師の発問例、予想される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

小六 国語科 教材名:私と本(光村図書・国語 六)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/山梨大学大学院教授・茅野政徳
執筆/千葉大学教育学部附属小学校・青木大和

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、今まで自分が読んだ経験が少ないジャンルの本を読み、より豊かな読書生活を送ることができるようにしていきます。
自分の好みのジャンルやこれまで印象に残っている本を振り返り、自分の本との関わりを自覚しながら幅広いジャンルの本に関心をもち、自分の考えを広げられるようにしていきます。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本単元では、本を読んでまとめた感想をキャッチフレーズという形で表し、それを共有することで自分の考えを広げる力を育むために「キャッチコピーで「本の紹介」をしよう」という言語活動を位置付けました。
自分の紹介したい本の特徴やテーマをキャッチコピーで表し、そのキャッチコピーに込めた思いや経緯をもとに、本を紹介する活動を行います。自分が紹介する本を選んだり、本の特徴をキャッチコピーで表したりする活動を通して、自分の好みの本のジャンルやテーマなどを自覚していきます。
また、友達の紹介を聞くことで、他ジャンルの良さや読書の役割に気付くことができ、幅広い読書への関心が高まったり、自分の好みの本や本との関わりを自覚できたりする第一歩になると考えました。

また、教材文の「森へ」は、《自然・生命》をテーマにしたノンフィクションで語られている紀行文です。文学作品や説明文を読んできた児童にとって、馴染み深いジャンルの文章ではないでしょう。
児童は「森へ」を読み、馴染みのないジャンルの文章の魅力に迫りながら、内容や表現、視覚的資料をもとにキャッチコピーにまとめ、自分がこの作品で魅力的だと感じた部分について紹介していきます。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉「森へ」の魅力を伝えるキャッチコピーを書く

キャッチコピーとは、読者の関心を呼び、注目度を高めるための言葉です。本の紹介の場合、結末までは伝えず、物語の要旨や魅力を伝えるといった言語運用が必要となります。そのため、児童は紹介する本の魅力を探っていきつつ、内容をどの程度伝えるかを意識しなくてはいけません。直感で自分が好きだと思っていた本も、「どこを伝えるべきか」という意識が働くことで、その本への捉え方が広がると考えました。
単に本の紹介にとどまると、本の内容を要約して伝えるだけで成立してしまいます。本単元では、2時間目に読書経験の少ない紀行文「森へ」についてのキャッチコピー作りをすることで、見通しをもちながらこの文章のテーマや魅力、筆者の伝えたい思いや体験に迫り、新たな知識の獲得、想像力や表現力の充実、物事の捉えの拡張など、読書の役割を自覚できると考えました。
また、この学習を生かして、幅広いジャンルの本を読もうする意識を高めることができると考えました。

〈対話的な学び〉 キャッチコピーを使って「本の紹介」をする

この単元における対話的な学びには、大きく分けて二つの視点があります。
一つ目は「本との対話」です。
本単元では、2・3時間目と「森へ」についてのキャッチコピー作りや「本の紹介」をし、本の魅力やテーマに迫りつつ、「森へ」が伝えようとしていることを捉えていきます。
今回の単元の主たる目的は、「本の紹介」をすることではなく、「本の紹介」をしたことで自分の考えがどのように広がったかを児童が自覚することです。3時間目に「本の紹介」をした後の4時間目前半には、「森へ」を改めて読み返す時間を設け、自分が気付かなかった筆者の思いや表現の工夫を確認し、「森へ」の捉え方を更新できる時間を設けることが重要であると考えます。

二つ目は、「人との対話」です。
多様な考えをもった人同士が集まり、それぞれの考えを共有することで、自分の考えを広げることができると考えます。その際に重要なのは、明確な目的意識です。「森へ」の「本の紹介」をすることだけが児童の中で目的とされていると、自分の紹介の出番が来るまで緊張し、終わったら一安心、といったことが起こり、児童が考えを広げることができません。
そこで、3時間目の「本の紹介」では、【自分が気付かなかった「森へ」の魅力を探ろう】という目的を児童と共有してから「本の紹介」をするように促します。
また、「本の紹介」は3、4名で行うものとし、キャッチコピーの説明をしてから、そのキャッチコピーにした理由や、綴った経緯を伝えるようにします。時間の許す限り、メンバーを変えながら、様々な児童と「本の紹介」ができるようにします。このことで、「森へ」に対する多様な考えに触れることができ、考えを広げることにつながっていくでしょう。

〈深い学び〉 自分が選んだ本で「本の紹介」をする

5時間目には、相互に自分が紹介したい本での「本の紹介」をするように促します。
その際、「本の紹介」で紹介する本の視点を、【印象に残っている本】【読んでいて面白いと感じた本】などと多様にもたせておきましょう。このことで、読書が苦手な児童にとっても選書のハードルが下がることが予想されます。
また、本のジャンルも、図鑑、伝記、小説、絵本など、制限することなく選べるようにすることが重要です。「それでは交流時に児童の視点が広がりすぎてしまうのでは…」と心配される声も挙がるかもしれませんが、本単元での目標は、児童が幅広いジャンルの本に興味をもち、考えを広げることです。児童の視点が広がるのは歓迎すべきことなのです。むしろ制限をかけてしまっては、児童の選書の視点は広がりません。

また、ここで重要なことは、先述の通り「本の紹介」だけで終えないことです。
知識を相互に関連付けるために「本の紹介」で幅広いジャンルに興味をもった状態で図書室に向かいましょう。これまで小説しか読んでいなかった児童が図鑑に手を伸ばしたり、「森へ」の学習を通してノンフィクション作品を読んでいたりする児童が現れるかもしれません。
興味や関心が、実際に読んでみるという行為につながり、児童の理解がより深くなることが予想されます。その児童の動機や感想を聞き、学級全体で共有したうえで振り返りの場面を設定することで、児童の読書への意識はより高まるのではないかと考えました。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1)インターネット上の書評や読書感想文などを参考に語彙を拡充する

キャッチコピーに効果的な文言として、【読後感を表す言葉】【登場人物・筆者の心情や特徴を表す言葉】【続きが読みたくなるような言葉】という三つの視点をもてるように、教師モデルを全体で分析していきます。
「森へ」や自分が紹介する本のキャッチコピーを考える際、作中の表現やあらすじを引用することはあるでしょう。一方で読者の関心を引きつける言葉や、自分の読後感を表す言葉を使ってキャッチコピーを考える際には、自らが保有している語彙も活用する必要があります。

そこで、インターネット上の書評や読書感想文などから、読者の関心を引き出す語句や、読後感に関する語句を充実させることにしました。
本単元では、必要な児童には読書メーター(https://bookmeter.com/)というサイトを活用し、新たな語彙を獲得するように促していきます。その際、自分の感覚と近い文言や共感できる文言を見つけるとよいことを児童に伝え、「森へ」のテーマや魅力を伝える文言を児童が自ら獲得するための手立てとしました。

しかし、このようにインターネット上のサイトを活用する場合には留意点が二つあります。
一つ目は、教師があらかじめ参考にするサイトを十分に確認し、活用されている言葉や内容が児童と共有するのに相応しいものかを検討することです。
二つ目は、メディアリテラシーの観点からも、書かれている感想は個人のものであり、自分のものではないこと、あくまで自分の読んだ感覚を大切にして文章に接するよう児童に伝えることです。自分の読んだ感覚を文字化している文章を探すという視点を明確にする必要があります。

(2)キャッチコピーをタイピングさせる

本単元におけるキャッチコピー作りとそれをもとにした「本の紹介」においては、言語運用以外の視点をなるべく無くすことが望ましいと考えます。
例えば、「○○さんのキャッチコピーは字がきれいだからいいね」や「色使いが素敵だから□□さんのキャッチコピーはいいね」などと、キャッチコピーで使われている文言以外が視点として含まれてしまうと、幅広いジャンルの本への関心に向かうのは難しいでしょう。

そこで、キャッチコピーはWordなどのタイピングソフトに入力し、字形や台紙などは統一できるようにします。このことで、児童は紹介されたキャッチコピーの言語運用にだけ目を向けることができ、その本の魅力について考えを広げることができるのではないでしょうか。
また、掲示板アプリ(Microsoft TeamsやGoogle Classroomなど)を活用できる場合は、その掲示板にキャッチコピーを投稿できるようにし、多様なキャッチコピーを児童が読める環境を作ると、本への捉えが広がります。

6. 単元の展開(5時間扱い)

 単元名:キャッチコピーで「本の紹介」をして考えを広げよう

【主な学習活動】
・第一次(1時
① 単元の見通しもち、「森へ」を読む

・第二次(2時3時
②「森へ」のキャッチコピーを作成する〈 端末活用(1)(2)〉
③「森へ」についての「本の紹介」をする

・第三次(4時5時
④ 自分の紹介したい本のキャッチコピーを作成する〈 端末活用(1)(2)〉
⑤ 自分の紹介したい本で「本の紹介」をする

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例

イラスト/横井智美

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

授業改善の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました