小2生活「冬野さいをそだてよう~ダイコン~」指導アイデア

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1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」
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小二 生活科 単元「冬野さいをそだてよう~ダイコン~」

文部科学省教科調査官の監修による、小2生活科の授業案です。1人1台端末を活用した活動のアイデアも紹介します。今回は「冬野さいを そだてよう」の単元を扱います。

執筆/ 大阪府公立小学校教諭・森田京子
編集委員/文部科学省教科調査官・齋藤博伸
 大阪府公立小学校校長・前谷さき子

年間指導計画

年間指導計画(クリックすると表示します)
4月春だ 今日から 2年生
5月大きく なあれ! わたしの 野さい!
6月どきどき わくわく まちたんけん
7月生きものと なかよし
8月大きく なあれ! わたしの 野さい2
9月うごく うごく わたしの おもちゃ
10月冬野さいを そだてよう~ダイコン~
11月もっと なかよし まちたんけん
12月つながる 広がる わたしの生活
1月みんなで つかう まちの しせつ
2月大きく なった わたしたち
3月ありがとうを とどけよう

単元目標

ダイコンを育てる活動を通して、育て方を調べたり、変化や成長の様子に関心をもって働きかけたりすることができ、それが生命をもっていることや成長していることに気付くとともに、ダイコンへの親しみをもち、継続的に育てることができるようにする。

「田辺ダイコン」を教材に
田辺ダイコンは、なにわの伝統野菜の一つです。昔、大阪市の東に位置する田辺村で栽培されていました。その後、都市化やウイルスの発生、新種のダイコンの普及により、一度は絶滅してしまい、「幻のダイコン」となりました。しかし、東住吉区のある農家が栽培していたところを農学博士の森下正博氏によって発見されます。その後、多くの地域の人々や田辺ダイコンを愛する「田辺ダイコンふやしたろう会」の人々によって田辺ダイコンは復活を遂げました。

田辺ダイコンは、色白で末端が少し膨大したしもぶくれの形です。長さ20cmほどで、加熱すると甘味が増します。「大ちゃん」の愛称で知られ、なにわの人気者です。

広く一般に出回っているダイコンのほとんどは、「青首ダイコン」と言われているものですが、全国で古くから栽培されている地ダイコンと言われるものも多数あります。

それぞれの土地で栽培されているダイコンを栽培し、地域の方をゲストティーチャーとして招き、いろいろな人と関わりながら栽培することで、自分たちの町への愛着にもつながるでしょう。

(ダイコンの種の実物を見せながら)これは何かな?

ピーナッツみたい

振ると音がするよ

皮をむくと、種みたいなものが出てきたよ

ゴマみたい

これは、ダイコンの種ですよ

こんな小さな種がどうやって、ダイコンになるのだろう。育ててみたいな

学習の流れ(全12時間)

【小単元1】はじめまして! 田辺ダイコン[1時~2時]

普段食べているダイコンと田辺ダイコンの写真を提示して比較します。子供の発言を整理しながら板書し、線で囲むことによって、共通点と相違点が一目で分かります(思考ツールを活用する)。

「冬野さいをそだてよう~ダイコン~」1~2時の板書例
青首ダイコンと田辺ダイコンとを比較する際に、ベン図を利用することで、共通点と相違点が明確になる。

評価規準

知識・技能:ダイコンの色や形、大きさなどの特徴に気付いている。[発言]

【小単元2】そだてよう! 田辺ダイコン[3時~6時]

田辺ダイコンについて、地域の方をゲストティーチャーとして招き、田辺ダイコンの特徴や種まきの仕方について話を聞く場を設定します。

子供一人一人が自分のダイコンの種をまき、継続して育てることによって、自分の野菜に親しみや愛着がもてるようにします。また、自分の育て方(水やり、雑草取り、害虫退治など)がダイコンの成長に大きく影響することに気付くようにします。

左はダイコンが発芽、右はダイコンの葉に害虫が発生。
左:ダイコンが発芽。右:害虫が発生してしまった葉。
左は間引きしたダイコンの苗。右は土寄せしたダイコン。
左:間引きしたダイコンの苗。右:土寄せしたダイコン。

ダイコンの成長の様子を記録したり、伝えたりするためにICT端末を活用します。自分のダイコンの成長を撮影し、気付いたことを書き込んで大型モニタなどに映して、友達と伝え合ったりすることで互いの気付きを共有すると気付きの質が高まります。

ダイコンとの関わりが充実するように、次のアイテムを用意します。アイテムは、見る見るメガネ(虫眼鏡)、もしもし聴診器(聴診器)、害虫キャッチャー(ピンセット)などです。このようなアイテムを用意しておくことで、自分から進んでダイコンに関わり、継続的に適切に育てるようになります。

必要な育て方を調べたり、それをやってみたりできるように、栽培に関する書籍を教室に常置します。

「冬野さいをそだてよう~ダイコン~」3~6時の板書例
田辺ダイコンの葉を観察したり、写真に撮ったり、害虫を駆除したりする子供たち。
子供たちが描いたダイコン栽培の観察記録
子供が描いた田辺ダイコン栽培の観察カード。
【資料1】「かんさつ」シート ※下記ボタンをクリックしてダウンロードできます。

【栽培活動への意欲を高める工夫】
栽培活動を継続的に行う中で、子供の意欲をさらに高めるには様々な工夫が必要です。

・子供一人一人が自分のダイコンを育てることで、田辺ダイコンに愛着をもち、進んで栽培活動を繰り返すようになります。

・教室環境の工夫として、栽培活動において、困ったことや気になることがすぐに調べられるようにするために、野菜作りに関する書籍を教室に設置します。

・観察カードや振り返りカード、ダイコンの写真を掲示することで、自分と友達のダイコンを比較したり、栽培活動に関するヒントを共有したりします。

・ダイコンとの出合わせ方の工夫として、種そのものを配付するより、さや付きの種を配付します。そうすることで「これは何かな」という疑問や、「植えてみたいな」という栽培意欲につながります。

・インターネットや書籍で調べるとともに、ゲストティーチャーに直接質問したり、話を聞いたりすると、自分のダイコンへの困りごとを解決することにつながります。

・前述のアイテムを活用することで、野菜の変化を見付けたり(見る見るメガネ)、野菜に必要なお世話を聞いてみたり(もしもし聴診器)、進んで害虫駆除をしたり(害虫キャッチャー)できるようになります。

・ダイコンの育て方や子供に気付かせたいことをダイコンからの手紙として提示することで、ダイコンへ親しみや愛着をもち、より一層安定的で持続的に育てるようになります。

教師が作成し、子供たちに提示するダイコンからの手紙。
教師が作成し、子供に提示するダイコンからの手紙(一例)。

評価規準

知識・技能:ダイコンの変化や成長、適切な育て方があることに気付いている。[行動観察・発言]

思考・判断・表現:ダイコンの変化や成長に着目して育てている。[行動観察・発言]

【小単元3】ダイコンをしゅうかくしよう[7時~11時]

田辺ダイコンを収穫したらどんなことをしたいですか?

田辺ダイコンを使った料理をつくりたいな

絵に描いたり写真を撮ったりして記念に残したい!

田辺ダイコンコンテストをしたいな。色白でしもぶくれのダイコンが「田辺ダイコンで賞」にするのはどうかな? その他にも「大きいで賞」や「小さいで賞」もつくってもいいね

田辺ダイコンのクイズ大会もしたいな

子供たちの観察カードを掲示することで、自分や友達のダイコンが成長している様子を時系列で比べられるようにします。そうすることでダイコンの育ちを楽しみにし、よりよい成長を願って、繰り返し関わっていた自分自身に気付くようになります。

ダイコンを収穫したら、どんなことをしたいか話し合います。ダイコンは一斉に収穫できることから、「田辺ダイコンコンテストを開きたい」「絵に描いたり写真を撮ったりして記念に残したい」「家で食べるのが楽しみで、どんな料理があるのか調べたい」などの思いや願いが膨らみます。

みんなで話し合い、授業内でできることを決定し、行いましょう。

「冬野さいをそだてよう~ダイコン~」7~11時の板書例
田辺ダイコンコンテストで表彰される子供と拍手でお祝いする子供。

評価規準

知識・技能:ダイコンへの親しみが増し、上手に育てられたことに気付いている。[行動観察・発言]

【小単元4】これまでのかつ動をふりかえろう[12時]

これまでの観察カードや振り返りカード、写真を手掛かりとして、ダイコンを育てたことを振り返ります。

本単元全体を振り返ることで、ダイコンの種と出合った気持ち、ダイコンが育つ喜び、ダイコンのために頑張った自分などに気付き、ダイコンを育てることに自信をもつことができるようになります。

「冬野さいをそだてよう~ダイコン~」12時の板書例

評価規準

主体的に学習に取り組む態度:ダイコンを適切に育てたことに自信をもち、これからも野菜を育てようとしている。[振り返りカード・発言]

1人1台端末を活用した指導アイデア

ダイコンの成長の過程を端末で写真に撮り、蓄積します。ここで大切なことは、写真を撮って終わりにしないことです。子供がダイコンの成長していく様子を振り返ることができるように、写真に気付いたことを書き足したり、写真を基に説明したりします。絵や言葉、図などを書き足し、時系列で並べることもできます。作成したページをスライド形式で再生することにより、「ダイコンの成長」のプレゼンテーションとして使用することもできます。

評価のポイント

つぶやきに耳を傾け、行動・制作物・学習カードを継続的に確認する

子供が自身の学びを実感できるようにするためには、教師が子供の成長をていねいに把握し、評価するとともに、次の活動に生かすことが大切です。そのためには、子供のつぶやきに耳を傾けること、行動や制作物、学習カードを継続的に確認し、その変化をタイムリーに正しく価値付けることが大切です。さらに、「子供が学びを実感できる活動」が実現できるように、評価を授業改善に生かすことが必要です。

「毎日、ダイコンのおせわをよくがんばりましたね。いっしょうけんめいそだてたダイコンは、きっとおいしいでしょうね」のような、子供の活動を価値付けるコメントをしましょう

イラスト/高橋正輝

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