小5 国語科「みんなが過ごしやすい町へ」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小5国語科「みんなが過ごしやすい町へ」(光村図書)の全時間の板書、ワークシート例、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/神奈川県横浜市立東汲沢小学校校長・丹羽正昇
執筆/神奈川県横浜市立あざみ野第一小学校・鈴木裕乃
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、目的や意図に応じて調べたことを報告する文章を書くことを通して、集めた情報を目的や意図に応じて内容ごとにまとめたり、それらを互いに関連付けたりしながら、資料の引用、図表やグラフを用いて、自分の伝えたいことを明確にし、相手に伝えることができるようにします。
また、互いに読みあい、相手に伝わりやすい筋道の通った文章構成や展開になっているかを考え、報告する文章の特徴を理解することができるようにします。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
報告する文章とは、調べた事実を相手に伝える文章ですが、そこには、そのテーマを選んだ書き手の興味・関心や、どの情報を伝えるかという思考・判断が働きます。つまり、書き手である児童が自分のこととして考えられる対象を見つけることが大切です。
そこで、文章を書く目的が分かりやすくなるように、身近な題材(地域や学校、「総合的な学習の時間」など他教科で扱っている材など)を対象にすると、目的意識が高まると同時に、単に報告する相手を設定するのではなく真の意味での相手意識が生まれると考えられます。言い換えれば、「~のために、○○さんにより正確に分かりやすく伝えたい」という思いにつながると思います。
書き終わったあとには、読んだ人からの感想をもらうなどし、報告する文章の意義から充足感や児童の達成感を味わうことができることが期待できます。
正確な資料を集めるために、調べた内容を整理したり、吟味したりする必要があります。調べ方としては、インタビュー、アンケート調査、実際に見る・触れる、本、インターネットと複数の方法があることを理解し、目的や意図に応じて選択できるように資料を教師側も準備しておくとよいでしょう。
関連本を用意したり、ウェブサイト(検索方法や正しい情報か見極める指導も必要)を提示したりすると幅が広がります。
また、「情報カード」などを用意し、調べたことをカードに書き留めるようにすることで、まとめるときの情報の精選につながり、引用文を載せるときの引用元や参考文献として示すこともできます。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 個に応じた学習過程で取り組めるように学習計画を立てる
一人一人の課題が違うため、学習過程の中で、時間をかけるところが違うことが予想されます。
例えば、必要に応じて再取材に戻ったり、記述に関して他の人の意見を求めたりするなど、個に応じた学習の展開が期待されます。そのため、学習のゴールと学習計画を学級で共有し、児童一人一人に応じた学習の進め方で行えるようにするとよいと考えます。
本単元では、まず、身近な題材を取り上げて、児童が学習したことを生かして充足感や達成感を味わうことができるように学級共通のテーマ設定をします。目的と意図がはっきりするテーマ設定とするとよいでしょう。
例えば、「だれもが過ごしやすい町の工夫を見つけて『だれもが安心!地域マップ』を作ろう」とします。目的は既存の地域マップに町の工夫を入れてオリジナルマップを作ることです。マップに町の工夫を入れる意図は、町に住んでいる人や、この町に遊びに来た人たちが安心して過ごせるようにするためです。
次に、学習計画と課題、めあてについてです。児童一人一人に応じた学習の進め方で行うといっても大まかな計画は必要です。今回の報告する文章を書く学習であれば、テーマから題材設定・情報の収集・内容の検討・構成の検討・考えの形成・記述・推敲・共有という学習過程の中で、どこに焦点化して児童が学んでいくのかを教師は見通すことが必要です。
今回の学習計画の中で、進度や進め方が異なってくると予想される4時間目以降は、それぞれの課題が出てくると考えられます。一人一人、課題は異なると思うので、その課題に対して、次の時間に自分は何が必要か、何を目標にするか、全体のめあて(誰もが達成すべき指導事項と関わる目標)と重ねながら、課題をもとに個のめあてを立てます。
そのため、同じ時間の中でも、取材をしている児童、集めた情報を精査している児童、再度取材している児童など、自分の進度に合わせて学習していけるように、児童の課題に寄り添った指導の在り方を考えながら、児童自らが自分にどのような学びが必要かを考え、自己調整力を発揮させていくことが大切です。
〈対話的な学び〉 目的や意図に応じて必要な資料を用いて、自分の考えを書き、町の工夫が伝わるか読み合う
報告する文章を書くときには、自分の決めた課題設定に、調査結果の引用や図表、グラフが対応できているかどうかを判断することが大切です。
また、今回のマップのねらいである、「だれもが安心できる町の工夫」という視点で、工夫を見つけ報告されているかも読み合うポイントになります。目的や意図に応じ、引用したり、図表などを使ったりして自分の考えを分かりやすく、裏付けながら伝える文章となっているか、さらに必要な内容はないかなど、どのように書き表し方を工夫するとより伝わるのかを話し合います。
また、調査結果の項目の順序や、項目ごとの内容の構成について、目的に応じて筋道の通った文章となるように順番や構成が考えられているか、シンキングツールをもとに、児童同士で確かめ合えるようにします。
〈深い学び〉 報告する文章を読み合い、どの言葉によって、分かりやすくより伝わる文章となったのかを振り返る
出来上がった報告する文章を言葉に着目しながら読み合うようにします。
複数の調査結果から共通点を見つけ出したことにより、伝えたい内容の中心が決まり、中心となった言葉に注目しながら資料を探すことで、報告する文章に一貫性が生まれることに気付かせ、価値付けます。
また、引用することを通して、どの部分を引用すべきか、言葉に着目して引用していたことを、振り返りを通して気付かせるように意識します。具体的にどの言葉から共通点を見つけたのか、どのような文章から必要な写真や図表、グラフを活用したのかなどを振り返ります。
この学習を通して身に付けた力を話し合い、日常生活や社会科や理科、総合的な学習の時間など他教科等にも応用し、継続して意識できるように指導します。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
(1)情報データの収集・整理・表現
3時間目以降の学習では、目的や意図に応じた取材をします。アンケートを作って結果を記録したり、実際に見たときに写真を撮影したり、インタビュー時に録音したりすると、記録として活用できます。また、情報整理・表現をタブレットを用いて行います。集めた情報や調査結果から、グラフや図表を作成することができます。そうすることで思考をまとめ、考えを明確にすることをねらいます。
(2)報告する文章を何度も書き直したり、より分かりやすく改善したりする
6時間目以降の学習では、報告する文章を作成していきます。筋道の通った内容になるように、項目を立てておくとよいでしょう。4年の学習で学んだ、効果的に写真を使うことを生かして、調査結果にグラフや図表を入れたり、目的や意図に合った内容に合っているかを吟味したりします。
その際、タブレット上であれば、すぐに修正・改善ができます。読み手に伝わりやすい内容になっているかを、全体の構成や展開を考える手立てとすることで、自分の考えがより伝わるようになります。
6. 単元の展開(10時間扱い)
単元名:だれもが過ごしやすい町の工夫を見つけて調べたことを報告し合おう
【主な学習活動】
・第一次(1時、2時)
① 問題を発見するために、だれにとっての工夫かを考えながら、この町の工夫について知っていることを挙げる。だれもが過ごしやすくするため、町にはどんなところでどんな工夫がされているのか、「だれもが過ごしやすい町の工夫を見つけて調べたことを報告し合おう」というテーマを設定する。
② 町のどんな工夫を伝えるとよいのか、町の工夫を見つけ、話題設定し、学習計画を立てる。〈主体的な学び〉
○「だれもが」という視点から、話題設定する。
例・子供でも分かりやすい工夫はなにかな。
・高齢者が過ごしやすい工夫はなにかな。
・障害のある人が過ごしやすい工夫はなにかな。
・買い物をする人が便利な工夫はなにかな。
自分が興味をもっている、調べたい、報告したい工夫を見つけ、話題設定する。
〔話題設定の例:「だれもが安心できる町づくりへの工夫」〕
・第二次(3時、4時、5時、6時、7時)〈端末活用(1)〉
③ だれのための工夫か、視点を決めてウェビングを使い話題設定する。
④ 自分の見つけた町の工夫(話題)に対して、取材して情報を集め、分類・整理する。
⑤ 町の工夫を調べた内容を目的に応じて関連付けながら、分類・整理して伝えたい中心を決める。〈対話的な学び〉
〔伝えたいことの中心の例:「目の不自由な人が安心できる町の工夫は、音声案内である。」〕
⑥ 「調べて分かったこと」を分かりやすく伝えるために、引用や写真、図表、グラフを用いて書き表し方の工夫を考える。
⑦ 筋道の通った文章となるように、構成を考えながら報告する文章を書く。
・第三次(8時、9時、10時)〈 端末活用(2)〉
⑧『だれもが安心!地域マップ』を作るための報告する文章を友達と読み合い、目的に応じた筋道の通った構成になっているか、効果的に資料が活用されているか、読みやすい分かりやすい文章となっているか推敲し完成させる。
⑨ だれもが過ごしやすい町の工夫を見つけて調べたことを報告し合い、考えたことを伝え合う。
⑩ だれもが過ごしやすい町の工夫を見つけて調べたことを報告して、どんな力がついたのか学習を振り返り、身に付いた力を自覚する。〈深い学び〉
全時間の板書例、発問、ワークシート&端末活用例
● 主体的な学びのために
1時間目は、学級共通の単元の目標設定をします。既習を思い出しながら、言語活動の確認をすることで、児童が考えを引き出しやすいようにします。
また、今回のテーマである町の工夫を捉えやすくするために、身近な工夫の一つとして学校を例にするとよいでしょう。「学校の中だけでも複数あるから、町にはもっとあるはず。」と思いを強められるようにします。単元目標が決まってからは、見通しがもてるように、報告する文章の書き方を教科書のモデルを参考に確かめます。
3年生のときに学んだ報告する文章と、全体構成(1.調べたきっかけ 2.調べ方 3.調べて分かったこと 4.まとめ)は同じです。5年生で新たに学ぶことを児童と一緒に確認することで、本単元で付ける力、目標が明確になります。
3学年では、テーマが「人の仕事」でしたが、今回は「町の工夫」ということで、相手や目的が幅広くなります。そのため、高学年の指導事項である、目的や意図に応じてテーマ設定し、話題を見つけることが必要となると考えられます。複数あるものから共通点を導き出したり、自分で課題を見つけたりする場面を大切にします。
そこで今回は、例として「だれもが過ごしやすい町の工夫を見つけて調べたことを報告し合おう」というテーマで、学校が配っている地域マップに町の工夫を加え、調べてわかったことをみんなで報告し合うことを目的とします。町にはいろいろな人のための工夫がされていることを知ることで、自分たちの町の見方が変わることを意図して活動します。
今回は、調べ方として、アンケート調査やインターネットでの検索が増えます。そこで、情報カードを使って取材していくことで、情報の扱い方に注意し、情報活用できるようにします。
● 主体的な学びのために
2時間目は、ゴールモデルを提示し、報告する文章を書くために必要なことについて、既習を確かめつつ、本単元で新たに学ぶことが明確になるように考えながら学習計画を立てます。今回は、
①テーマから町の工夫を見つけるため、自分の課題設定をする。
②自分の見つけた課題について取材をする。
③集めた情報を目的や内容と関連付けながら分類・整理する。
④文章を分かりやすくし、自分の伝えたいことをより明確に表現できるよう資料を活用する。
⑤報告する文章にまとめる。
⑥視点をもって推敲する。
⑦マップを作る(学活、総合的な学習の時間等の時間で)
⑧振り返り
という、大まかな計画を立てます。一人一人の進度や内容によって、早めに進んだり、または戻ったりすること、計画を追加してもよいこととします。そうすることで、自分で次に何をすることが必要なのかを考えたり、学び方を工夫したりする力につなげていきます。
友達に読んでもらう時間は「この時間が読み合いです。それまでは一人でやります。」と言うのではなく、目的をもち、必要であればいつでも交流したり、自力解決したりできるような環境づくりと支援をします。そのためには、1時間ごとに目標を全体でしっかりと共有した上で、毎時間、児童自身が課題をもち、自分のめあてを立てるとよいです。そのめあてを教師が把握しておき、個への手立てや支援につなげていきます。