星峯西小学校の教科別実践例をチェック! Part1【先進的な自治体&小学校のICT活用実例】②

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「先進的な自治体&小学校」の「ICT活用」実例
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前回、鹿児島市学校ICT推進センターが、同市のICT環境をどのように整備し、ICT活用を推進しきたか紹介をしました。その環境をベースに各学校ではどのように実践が進められてきたのでしょうか。特別な研究指定校ではないなか、学校長を中心に1年間でICT活用実践を推進してきた、鹿児島市立星峯西小学校で取材をしました。

先生方の他、保護者に対してもICT活用の必要性を説明

同校の谷口源太郎校長は、異動してきた1年前をふり返りながら、ICT活用の実践を進めてきた経緯を次のように説明します。

「前任は志布志市の教育委員会にいたのですが、その頃から、GIGAスクール構想によって教育の情報化が一気に進んでいくだろうと考えていました。そこにコロナ禍もあり、タブレットの持ち帰りは確実に必要になるだろうと想定できました。

そこで、異動してくるとすぐに、先生方にICT活用の必要性を話すだけでなく、保護者に対してもこの数年のうちにICT活用によって学校がどのように変わるかを、学校だよりや多様なお話しをする場で説明をしてきました。それがないまま、私だけで進めようとしても協力は得られません。ですから、『必要ですから少しずつ、準備をしていきましょう』と、機会があるたびに伝えていきました。

GIGAスクール構想の意義や、ICT活用の必要性をていねいに保護者に知らせていった谷口校長。

そうして一学期から少しずつ授業で活用し始め、二学期には学校と家庭をつないだオンライン授業を行い、三学期にはコロナ禍で式典などへの参加人数が限定されるなか、四年生の半成人式もオンデマンドで配信しましたし、卒業式や終業式も配信を行い、保護者からも好評を得ました」

このように短期間で実践の幅を広げてこられたのは、「スタッフに恵まれたため」だと谷口校長は笑顔で話します。

「本校がここまで実践してこられたのは、ICT担当の教員が2名いたことが大きいと思います。その一人、持橋知行教諭(現伊佐市立田中小学校)は、自らYouTube投稿もしているような先生で、その動画編集技術を使って、オンデマンドの授業配信を行ってくれました。もう一人の七夕弘和教諭は理科専科で、彼が4月のタブレット導入時に設定作業をしてくれましたし、5月からは4年以上の全クラスで理科を担任していたので、『実際にこう使うんだよ』と子供たちに実践し、説明してくれました。そのおかげで、9月からのタブレット持ち帰りもスムーズにできました」

ICT担当の先生が2人で実践をリード

厳密に言えば、2名が交代でICT担当を任されてきており、協力しながら実践をリードしてきたのだと言います。では、実際にどのように進めてきたのでしょうか。2020年度までICT担当であった持橋教諭は、次のように話します。

「2021年度のICT担当は七夕教諭ですが、その前何年かは私が担当しており、その前は七夕教諭でした。ただし2021年度以前は、タブレット端末が各教室に何台かで(全員にはないため)、しっかりとした実践を進めることは難しかったのです。

いよいよ必要になってきたのがコロナ禍の2年前でしたが、そのときでも端末の数が限られるなか、『こんな実践があります』『こんな活用方法もあります』と紹介はしましたが、まだ実践は限られていました。やはり本格的に取り組めるようになったのは、タブレット端末が1人1台配付された2021年度で、ロイロノートとTeams(会議用ソフト)が入ってからです」

七夕教諭らの尽力で、5月中にはテレビ会議ができる環境が整った。

続けて、七夕教諭が環境の整ってきたなかでの2021年度の実践について、次のように説明します。

「私は理科で、2021年度の4月からロイロノートを使って多様な実践を始めました。例えば、導入の場面で実験の予想をカード(メモ)で提出(送信)するとか、結果予想のアンケートを行ったりもしました。あるいは、外で水の流れる様子について観察を行ったとき、写真や動画で撮影して記録し、後で結果を見直してまとめるのに活用するようなことも始めました。

その過程で、上手な撮影の仕方をしている子の映像を取り上げて、『ここが写っているほうがやっぱり分かりやすいね』などと評価していくと、子供たちの着眼点や撮影スキルを上げていくことにもつながっていきました。例えば、土に水が染み込む様子を撮影するとき、側にタイマーを置いて、両方が同時に見えるようにしている子もいて、それは私自身も気付いていなかった、よい方法だなと思いましたし、それを評価することで子供たちのスキルも上がっていったのです。

あるいは振り子の学習の導入で、端末で一つの曲を共有し、その曲のテンポに合わせて振り子を振るように取り組ませました。そこで、錘の重さや振り幅を変えたりしながら曲に合わせて調整していく過程で、振り子の長さと周期の関係に気付くようにさせるといったこともしました。

それから、実験方法の説明が口頭だけでは説明が難しいところを、動画に撮っておいて見せることで分かりやすくするとか、休んだ子に、その日の板書と一緒に資料を画像送信するということも行いました」

このように七夕教諭が理科で多様に活用するなか、持橋教諭は他教科での実践を推進したと言います。

「例えば、国語ではアンケート機能を活用しました。これは、以前なら子供たちがアンケート用紙を作って、先生に印刷を依頼し、それを配って調査し、紙を集めて集計し、手書きのグラフで整理をして…となっていたわけです。それが、タブレット内の機能を使うとアンケートの作成から配付、集計、グラフ化まで行えるわけです。そこで、子供たちは『自分たちの班ではこれについて調査し、こういう結果が得られ…』と、タブレットを使って、調査からプレゼンテーションまでしていくのです。そのように、年間を通してプレゼンの場面で使うことが多かったので、私のクラスではプレゼンを嫌がる子はいなくなりました。

あるいは、社会科で鹿児島市が配付した、多様なコンテンツが紹介された冊子を活用して、地元について調べていくわけですが、歴史的事実を知らない子供たちにとっては、その意味が分からないことがあったりします。そこで、タブレットを使った調べ学習の時間を5分でも10分でもとると、既有知識や興味関心に応じて、冊子以上の情報を得てくるので、その後の学習も深まっていきました」

ICT活用を支援し、広める広報のような役割を担う谷口校長

このように、二人の担当が実践をリードするなか、谷口校長は経験者研修などの機会を使って、タブレットの活用を広めていったと言います。

「5年次研修や10年次研修などの研究授業を行う際に、『使ってみて』と声をかけていきました。

すると、例えば6年生の社会では、まずは授業の導入部分で使い、以前は先生が配付していた資料を配信にし、自分のめあてに合った調べ学習を進めていくという実践をしてくれました。

あるいは、6年生の別の担任は国語で、自分がもった考えをワークシートに書いたものをタブレットで撮影し、先生に送信して全員の考えを共有。そこからグループで対話するときには、グループの考えをタブレットに集め、対話して考えを深めたものを書いてまとめ、それを先生に送信。そこから、複数のグループの考えを共有し、さらに全体で対話して深めていくような実践をしていました。

こういった実践については、導入、見通し…共有…まとめ、といった授業の流れのどこで、どのように活用したのかを私が整理して先生方に紹介し、他学年や他教科ならどうなるか、他の先生方が実践していくためのヒントにしてもらうようにしました。

また、そのような先生方の活用の様子を写真に撮り、保護者の方々に『この先生はこんなふうに活用されていますよ』とお知らせすることで、保護者にも評価をしていただくようにしたのです。

校内研修も進めながら、少しずつ実践を広げていった。

そうやって取り組んでみると、先生方も『こんなことができるのではないか』『あの方法はこれにも活用できないか』と、いろいろアイディアを出してくださるので、とても楽しいのです。先生方も新しいことに取り組むのは大変だと思いますが、前向きに取り組んでみると得るものもあるので、先生方にはそういう姿勢を大事にして取り組んでほしいと思っていますし、私はそれを支援し、広める広報のような役割を担ってきています」

次回は、2021年度の後半の実践、特にオンライン授業等を中心に紹介をしていきます。

写真左から、星峯西小学校の七夕弘和教諭、谷口源太郎校長、持橋知行教諭。

次回記事は6月13日(月)公開予定です。
「先進的な自治体&小学校」の「ICT活用」実例は、毎週月曜日に更新いたします。

執筆/矢ノ浦勝之

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