“実験の計画”どうやって子どもに立てさせたらいいの?【理科の壺】

連載
理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~

寺本貴啓
【理科の壺】
“実験の計画”どうやって子どもに立てさせたらいいの?

実験の計画、みなさんはどうやって立てさせていますか? 問題を見いだし、根拠のある予想を立て、予想や根拠を基に観察・実験の計画をし、観察・実験を行って、記録を基に考察して結論を導き出す。大切なことが山ほどあって、どのように指導したらよいのかと悩まれている先生もいるのではないでしょうか。今回は子どもたちに実験の計画をどのように立てさせたらよいのか、そんな悩みのヒントになります。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような“ツボ”が見られるでしょうか?

執筆/武蔵野市立井之頭小学校主任教諭・木月里美
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

“実験の計画”どうやって子どもに立てさせたらいいの?

先生方にとって、「子どもたちが実験の計画を立てる」とは、どのようなイメージですか?
調べるために必要な条件を子どもたちが決め、それにふさわしい実験道具を選択し、子どもたちが考えた実験方法で実験する。
そんな理想的な指導ができるのは、理科の専門性と指導力のある一部の先生だけです。
1~10まで全ての計画を子どもが立てるのは無理だと割り切ってみましょう。では教師が実験の方法を伝えてしまっていいのでしょうか。それだけはやめてほしいなと思います。
実験の計画のポイントは「子どもたちと一緒に考える」「子ども自身が『自分たちで実験計画を立てられた』と思えるようにすること」です。

「みんなの考えた予想、どんな方法で確かめられそうかな」の一言を!

子どもたちが問題に対して、予想をした後、
「じゃあ実験の方法は教科書○ページを見てみましょう」
そんな授業を見かけることがあります。
それはとても残念です。理科が苦手な先生や経験の浅い先生にとって教科書を見せながら実験の方法を伝えることは、正しく実験することや安全面を考えた場合、悪いことではないと思います。
ただ、教科書をめくる前に、一言
「みんなの考えた予想、どんな方法で確かめられそうかな」
と子どもたちに投げかけてみてください。
子どもたちなりにどうしたら確かめられるか考え、ときには、その方法でもやってみようかと思うようなアイデアまで飛び出します。このとき、大事なことはどんな実験道具を使うかという細かい実験方法ではなく、
「何と何を比べるか」
「どこに注目して観察したらよいか」
「どんな状況をつくればよいか」
ということを子どもたちが見つけられるかどうかです。

【実験の計画で大切にしたいこと】
「何と何を比べるか」
(例)花粉をめしべに付けたものと付けなかったもの
「どこに注目して観察したらよいか」
(例)生物の足の数が何本か
「どんな状況をつくればよいか」
(例)びんの中に酸素だけ、二酸化炭素だけ、窒素だけにして火のついたろうそくが燃えるかを調べる

例えば、4年生の水の三態変化の授業で、沸騰したときに出てきた「泡」が空気なのか、水なのかを調べるために、ろうとを逆さまに使って、ストローやビニル管をつないで出てきた気体をふくろに集める。このような実験計画を子どもたちが最初から立てられるわけがありません。でも、
「沸騰したときに出てきた泡を袋に集めたい」
「空気なら袋がふくらむのではないか」
というところまでは子どもたちでも考えることができます。

あわだけをあつめられないかな?
矢印
ろうとを逆さまに使って、ビニル管をつないでふくろに出てきた気体を集める実験

「実験の計画を立てる力」が育って、自分の力で「実験条件をそろえること」を理解して調べる条件を考えているかを見取りたい場面では別ですが、そうでないときは子どもたちと一緒に
「それだと条件がそろっているかな」
「もっと安全で簡単な方法はないかな」
「これまで学んだ方法で使えそうなものはないかな」
と声を掛けながら計画を立ててみましょう。

【実験条件を意識させる声掛けの例】
【5年】
発芽の実験で「温度の低い冷蔵庫の中」と「常温の机の上」を比べるとき、(冷蔵庫は扉を閉めたら暗くなるので)明るい常温の机の上の方に箱を被せていない。
→「それだと条件がそろっているかな」
(明るい常温の机の上の方では箱などを被せて冷蔵庫と同じように暗くしないといけないことに気付かせる)
【5年】
食塩が溶けているか調べるときに「なめる方法」を選択する。
→「もっと安全で簡単な方法はないかな」
(「なめる」以外の「蒸発させる方法」などに気付かせる)
【6年】
吸う空気と吐く息の違いを調べる際、調べる方法が思いつかない。
→「これまで学んだ方法で使えそうなものはないかな」
(「ものの燃え方」の学習で使った気体検知管や石灰水で調べる方法を思い出させる)

実験方法を考える子ども

このように、すぐに教科書の実験のページを見せて真似をさせたり、先生が方法を教えたりするのではなく、子どもたちの気付きをもとに、先生も一緒に考えるような進め方で、時折演示するなどして、学級全体に気付きを広げていくようにしたいです。

教科書の実験方法をあらかじめ教師が把握して、教科書を見ずに演示で見せながら
「こんなふうに実験するとみんなの考えていた方法で調べられそうだね」
とつなげられたら、子どもたちは
「自分たちで実験計画を立てられた!」
と思えるでしょう。

「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。

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木月里美先生

〈執筆者プロフィール〉
木月里美●きづき・さとみ 東京都公立小学校主任教諭。大学では理科専攻にて学び、卒業後は学級担任、理科専科を経験。教科書の編集委員として教科書作りに携わる。共著に「これからはじめるGIGA全学年×1人1台端末×活用事例小学校理科5・6年」(日本標準)「小学校理科フローチャート型授業ガイド」(東洋館出版)など。

寺本貴啓先生

<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員等を経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。

イラスト/難波孝

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