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子どもの自主性を育む「~からの解放作戦」後編【ぬまっち流】

2019/7/27

斬新な授業で、子どものやる気をグングン引き出すカリスマ教師「ぬまっち」こと、沼田晶弘先生が、低学年の自主性を育む実践を紹介する記事の後編です。あえて教師の登場を減らす、その先にはどのような効果が?

●「子どもの自主性を育む『~からの解放作戦』前編【ぬまっち流】」は、コチラから。

「ちゃんと」「きちんと」という声かけからの解放

学校には様々なルールがあります。

時間を守る。チャイムが鳴ったら席に座る。ドアを開けたら閉める・・・。これらのルールが守られない時、つい「『きちんと』時間を守りましょう」「『ちゃんと』ドアを閉めましょう」といった声かけや指導をしてしまいがちです。

しかし、低学年にはこうした指導は入りません。

なぜなら、「ちゃんと」「きちんと」という言葉はとても曖昧で、「こうしてほしい」という先生の気持ちを子どもが忖度して動かないといけないからです。低学年に忖度を求めることは難しいでしょう。高学年の子どもは、「時間を守るのは、世の中では大切だ」「クーラーの冷たい空気が逃げないように『ちゃんと』ドアは閉める」と理屈を説明すれば行動に移してくれます。

しかし低学年では、理屈はわかっても、メンタルの部分で負けてしまう場合が多いのです。決して時間を破ろうとしているわけではないし、ドアをちゃんと閉めようと思っていても、つい夢中になって忘れてしまうのです。

つまりそこには子どもを夢中にさせる「魔力」があり、その魔力に負けてしまうことが原因なのです。だからこそ、魔力に打ち勝ち、先生が一日中「ちゃんと!」「きちんと!」と叫ばなくてもよいシステムをつくることが最善の策なのです。

ルールを忘れる「魔力」に勝つシステムづくり

私の学校の校庭に「ふじが池」という小さな池があります。そこにはザリガニやカエルがいて、子どもたちにとっては魅力的な場所。だから休み時間にふじが池に行った子たちは、夢中になってしまって、授業時間になっても帰ってこなかったり、池に落ちたりといったことを繰り返していました。

一度は「ふじが池」に行くことを一切禁止したのですが、それでも行ってしまう子もいたのです。そこで、どうすればよいかみんなで話し合うことにしました。

まず、「あそこには魔力があるんだよ」という話をしました。「休み時間をオーバーしたら池で遊ぶことを禁止されるのをわかっているのに時間をオーバーしてしまう。わかっているのに池に落ちてしまう。池にはそういう魔力がある。じゃあどうしたらいいんだろう?」と問いかけると、子どもたちは「気をつける」と言うので、「気をつけても遅れるよね。他の解決策は?」とさらに問いかけます。「腕に書く」「外に行かない」「友達に聞く」「小まめに戻る」など、子どもたちから様々な意見が挙がります。

それらを片っ端から板書し、そこに、「見ない!」「つまらない!」などと、僕なりにツッコミを入れて、反論を書き出します。話合いの結果、「自分で気をつける」という策は効果がないけれど、「みんなで助け合う」つまり「気が付いた誰かが騒ぐ」、もしくは「キャプテンが迎えに行く」という策にたどり着きました。キャプテンとは日直のことです。

話し合い活動の板書例
「ちゃんと」「きちんと」から解放する話し合い活動の板書例

話合いでは、問題や解決策を視覚化するため、必ず話合いの経過を板書します。まず、現状を把握するために黒板の左側に問題点を書き出します。さらに、右側には、子どもたちが考えた解決策を白いチョークで書き出します。その解決策に対して、沼田先生が「つまらん!」「とおまわり!」といった反論を青いチョークで書き、話合いを深め、より子どもたちの現状にあった改善策を考えさせていきます。

このシステムを導入したところ、翌日から見事に「魔力」シャットアウト成功! 僕が「ちゃんと」と言わずとも、みんな時間に遅れることがなくなったのです。

話合いをすることで、これまでのルールの矛盾に気が付くこともあります。「どうしてドアは開けっ放しになるのか」を話し合ったときのことです。「合い言葉は『開けたら閉める』だよね。それなのに守れないよね。どうしたら解決できるか考えてみよう」と問いかけたところ、「ドアを閉める係をつくる」「ドアに閉めると書く」などの意見も出ましたが、「後ろに人がいるので閉めない」、つまり、「後から来る人への気遣いで閉めない」ということも理由としてあることに気が付いたのです。そして、後から来た子は「自分ではドアを開けてないから閉めない」のです。

「開けたら閉める」は、集団生活のなかではそもそもおかしなルールだったのです。そこでみんなで考えた新しい合言葉が「開けてなくても閉める」です。ドアを開いていることに気が付いた人が閉めるというシステムをつくることによって、僕も含め、クラスみんなが「ちゃんと閉めて」という声かけから解放されたのです。

「魔力」にメンタルで負けてしまう子どもたち。彼らの現状に合わせて、話し合い、集団の力を利用したシステムを構築することで、日々の指導もより簡略化することができるのです。

沼田晶弘先生
沼田晶弘先生 撮影/下重修

沼田晶弘先生
1975年東京生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に、『家でできる「自信が持てる子」の育て方』(あさ出版)等がある。

取材・文/出浦文絵

『教育技術 小一小二』2019年7/8月号より

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