小3社会「市のようす」指導アイデア

特集
文部科学省教科調査官監修《1人1台端末時代の》教科指導ヒントとアイデア
タイトル 小3社会「市のようす」

執筆/香川大学教育学部附属高松小学校教諭・藤澤大地
編集委員/文部科学省教科調査官・小倉勝登、香川大学教育学部附属高松小学校副校長・大嶋和彦

小3社会年間指導計画

目標

市の様子について、都道府県内における市の位置、市の地形や土地利用、交通の広がり、市役所など主な公共施設の場所と働き、古くから残る建造物の分布などに着目して観察・調査したり、地図などの資料で調べたりして、白地図などにまとめ、市の様子を捉え、場所による違いを考え、表現することを通して、自分たちの市の様子をおおまかに理解するとともに、主体的に学習問題を追究・解決しようとする態度を養う。

評価規準

知識・技能

①都道府県内における市の位置、市の地形や土地利用、交通の広がり、市役所など主な公共施設の場所と働き、古くから残る建造物の分布などについて、観察・調査したり地図などの資料で調べたりして、必要な情報を集め、読み取り、市のそれぞれの様子を理解している。
②調べたことを白地図や文などにまとめ、自分たちの市の様子をおおまかに理解している。


思考・判断・表現

①都道府県内における市の位置、市の地形や土地利用、交通の広がり、市役所など主な公共施設の場所と働き、古くから残る建造物の分布などに着目して、問いを見い出し、市の様子について考え、表現している。
②場所ごとの様子を比較したり、土地利用の様子と交通などを関連付けたりして、場所による違いを考え、適切に表現している。


主体的に学習に取り組む態度
①市の様子について、予想や学習計画を立てたり、学習を振り返ったり見直したりして、学習問題を追究し、解決しようとしている。

学習の流れ(13時間扱い)

問題をつくる 2時間

  • 市の地図や写真を基に、行ったことがある場所について話し合い、カードにまとめる。
  • カードを市の白地図に位置付け、気付いたことを話し合う。

(学習問題)
私たちの高松市は、どのような様子なのだろう?


追究する 9時間

  • 地形や土地利用、交通の広がり、主な公共施設の場所と働き、古くから残る建造物の分布などに着目して、高松市の様子を調べる。
  • 調べてわかったことを市の白地図に書き込む。
  • 調べたことを基に、場所による様子の違いを話し合う。

まとめる 2時間

  • わかったことを基に、高松市の特色を話し合う。
  • 高松市の特色を表した紹介マップを作成し、隣の市の小学3年生に伝える。

問題をつくる

高松市の行ったことがある場所について話し合い、学習問題をつくる。(1、2/13時間)

導入のくふう

隣の市の先生から送られてきたメッセージ動画を見せるようにすることで、他の市の小学生に高松市の様子を伝えるという見通しをもち、高松市の様子を調べようという意欲を高めるようにする。

1時間目 隣の市の先生からのメッセージ動画を見て、高松市の様子を話し合う。

メッセージ動画を見る

隣の市の先生からメッセージが届いています!

隣の市の小学3年生が、高松市の様子について知りたいみたいだよ!

私たちが高松市の様子を伝えてあげたらいいと思う!

矢印(下)

高松市の行ったことがある場所を話し合う

みなさんは、高松市のどんなところに行ったことがありますか? 写真を見て、思い出してみましょう。

シンボルタワー

これはシンボルタワーだ! 行ったことがあるよ! そこのお店で買い物をしたよ。

塩江温泉の近く

ここは塩江温泉の近くだね。車で行ったことがあるよ。近くの川でホタルを見たよ。

《導入のポイント》
単元の導入では、子供が市の様子について調べたくなるような工夫が必要です。本単元では、隣の市の先生からのメッセージ動画を紹介することで、隣の市の小学生に高松市の様子を伝えるという単元のゴールを共有できるようにしました。ゴールの見通しをもつことで、市の様子を調べる目的をもつことができ、主体的な学びにつながります。
また、行ったことがある場所を思い出す際に写真などを提示して考えやすくする工夫も大切です。

2時間目 行ったことがある場所をカードに書き、白地図に位置付ける。

高松市の行ったことがある場所の様子をカードに書いて、高松市の地図に貼ってみましょう。

みんなが出してくれたカードのほとんどの場所に行ったことがあるよ! でも、行ったことがない場所もあるな。

場所によって、建物が多いところや自然が多いところなどの違いがありそうだよ。高松市の様子をもっと詳しく調べてみたいな。

高松市の白地図とそこに位置付けたカード
高松市の白地図とそこに位置付けたカード

《活動意欲を高めるポイント》
ここでは、「高松市の様子を伝えるためにもっと詳しく調べたい」という思いをもつことができるようにすることが大切です。行ったことのある場所をカードに書いて白地図に位置付けることで、子供一人一人の経験を共有できるようにし、「自分が住んでいる市だけれど、まだ知らないことがある」ということに気付けるようにしました。

学習問題と学習計画を立てる

高松市の様子を伝えるための学習問題と学習計画を立てましょう。どうすれば伝わりやすいかな?

マップにおすすめの場所などをまとめて紹介すると、わかりやすいと思います。

《単元の見通しをもたせるポイント》
本単元は、子供たちにとって社会科の最初の単元となります。そこで、学習問題や学習計画を立てる過程を丁寧に行うことが大切です。何をどのように調べるか、調べたことを何にまとめるかなどを子供たちと共有し、単元のゴールまでの見通しをもてるようにしましょう。



私たちの高松市は、どのような様子なのだろう?

矢印(下)



①高松市の様子を調べ、ポスターや地図にまとめる。
②わかったことを基に紹介マップをつくる。
③高松市の様子を隣の市の小学3年生に伝える。

追究する

地形、土地利用、交通、公共施設、古くから残る建造物などに着目して高松市の様子を調べ、わかったことを白地図にまとめ、場所による様子の違いを話し合う。(3~11/13時間)

話し合い活動のくふう

地域ごとの特色をポスターにまとめて比較することで、場所による様子の違いについて対話を通して理解することができるようにする。

3~7時間目 地形、土地利用、交通、公共施設、古くから残る建造物などの視点で、高松市のいくつかの地域の様子を調べ、ポスターにまとめる。

資料を見たり見学に行ったりして調べる(個人)

みんなで話し合って決めた地域の様子について調べてみましょう。

見学で調べてわかったこと
見学で調べてわかったこと

副読本で調べてみると、高松駅のまわりは電車やバスなどの交通や、県庁や市役所などの公共施設が多く集まることがわかりました。

見学に行ってみると、駅のまわりにたくさんの人が集まっていてびっくりしました。他の市や県から来ている人もいたと思います。

矢印(下)

調べてわかったことを共有し、ポスターにまとめる(グループ)

調べたことを基に、その地域の様子をポスターに表しましょう。

地域の特色を話し合う(左) グループでまとめたポスター(右)
地域の特色を話し合う(左) グループでまとめたポスター(右)

ぼくはインターネットの資料で調べました。見学に行った友達の話を聞くと、様子がさらによくわかりました。駅のまわりはどんな様子だとまとめればいいかな。

私は、「交通がたくさん集まるところ」だと思います。他の地域と比べて、交通に関係することが多かったからです。でも、他のポスターを見ると様子が違うね。

8~11時間目 土地利用、交通、公共施設の様子を地図にまとめ、高松市の特色を話し合う。

高松市の様子を白地図にまとめる

高松市の土地利用、交通、主な公共施設の位置を地図に書き込んでみましょう。

調べたことを地図にまとめる
調べたことを地図にまとめる

土地利用の様子を見ると、高松市は中央部に住宅や田畑が多いことがわかります。

主な交通機関や公共施設は、市の北のほうに集まっているみたいだね。

矢印(下)

地図を基に場所による様子の違いを話し合う

土地利用、交通、公共施設を表した地図
土地利用、交通、公共施設を表した地図

高松市の様子は、場所によってどんな違いがありますか?

高松駅の東のほうには工場が多く集まるところがあるよ。海に近くて、材料が運びやすいからだよ。

市の南のほうは他の地域にはないキャンプ場や温泉などがあるよ。森林が多く、自然がいっぱいだからだね!

《地図活用のポイント》
本単元では、地図を基に考え、表現することが大切です。わかったことを地図にまとめることで、空間的な見方を働かせ、場所による様子の違いを比較できるようにしましょう。また、地図帳や1人1台端末を活用して調べたり、説明したりする活動も有効です。

まとめる

ポスターや地図にまとめたことを基に、他の市の人に伝えたい高松市の特色を話し合う。(12、13/13時間)

まとめ方のくふう

調べたことの中から、他の市に住む人に伝えたいと思う内容を選ぶ活動を設定することで、高松市の特色に気付くことができるようにする。

12時間目 他の市の人に伝えたい高松市の特色をグループで話し合い、短冊に書く。

高松市のことを伝えることで、高松市のよいところが伝わるようにしたいな。

そうだね。これまで調べてきた様子の中から、高松市の特色が伝わるものを選んで伝えたいな。

どんな言葉を紹介マップの表紙に載せれば、特色が伝わりやすくなるかな?



高松市の特色が伝わるようなキャッチコピーを考えよう。

矢印(下)

高松市の特色が伝わるキーワードを選び、カードに書く。(個人)

カードにキーワードを書く
カードにキーワードを書く

ぼくは「古い歴史がある」というキーワードを入れるといいと思うよ! だって……。

私は「公共施設が多い」ことを伝えたい。だって、香川県の県庁所在地で……。

矢印(下)

キーワードを吟味し、高松市のキャッチコピーを考える。(グループ)

キャッチコピーを考える
キャッチコピーを考える

一人一人のキーワードを整理してみると、「公共施設」や「歴史」などが多いよ。

高松市はみんなにとって過ごしやすく、歴史のある市だといえそうだね。

矢印(下)

グループで考えたキャッチコピーを短冊に書き、交流する。(全体)

グループで考えたキャッチコピー
グループで考えたキャッチコピー

《考えを書かせるポイント》
高松市の特色を考えさせる際には、これまで学習した内容を根拠にして書くように促すことが大切です。そこで、「どうしてそれが大事だと思ったの?」「どうしてそう考えたの?」といった教師の問いかけが重要になってきます。その子なりの根拠をもって書けていたらしっかりと称賛することで、子供たち一人一人が自信をもって市の特色を考え、紹介マップづくりに取り組めるようにしましょう。

13時間目 高松市の特色がわかる紹介マップを完成させる。

高松市の特色が伝わる場所をマップに表して、紹介マップを完成させましょう。

ぼくは高松市の歴史が残る場所を知ってほしいから、古くから残るものを中心にマップで紹介しよう。

私は、自然が多いところを知ってほしいから、市の南のほうを詳しくしたマップにしよう。

グループごとにつくった紹介マップ
グループごとにつくった紹介マップ

次の単元へつなげるポイント
単元終末では、子供たちが表現したことに対して、他者からのフィードバックがあることが有効です。学校外の人からも認められることで、達成感や自己有用感を味わうことができ、次の単元にも主体的に取り組めるようになります。

イラスト/横井智美

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