間違えたくない先生、必読! 教科横断的な外国語の授業づくり

英語のイメージ

新学習指導要領の作成協力者・佐藤美智子先生が「間違えない外国語」を解説! テーマは、「教科横断的な授業づくり」です。カリキュラム・マネジメントに基づいた単元例、授業例、単元計画における評価の観点の位置付け例等について提案します。

文/鳴門教育大学大学院学校教育研究科准教授 佐藤美智子

教科横断的な視点に立つ授業づくりとは

新学習指導要領への移行期間である今、小学校高学年では、外国語活動の内容に加えて、地域や学校、子供の実態に合わせ、新学習指導要領の外国語科の内容を扱いながら、日々の実践が進められていることでしょう。

ご存知の通り、「社会に開かれた教育課程」の考え方のもと、改訂された今回の学習指導要領ですが、その中でも「主体的・対話的で深い学び」と「カリキュラム・マネジメント」が重要なキーワードとなっています。ここでは、「カリキュラム・マネジメント」の中から、特に「教科横断的な視点に立った外国語科の授業づくり」に焦点を当てて考えてみたいと思います。

カリキュラムとは、学習指導要領や年間の標準時数等を踏まえ、地域や学校の実態に応じて編成している教育課程のことです!

「教科横断的な視点」の必要性

まず、新学習指導要領を見てみましょう。

総則第1の「小学校教育の基本と教育課程の役割」には、上述した「カリキュラム・マネジメント」に関する記述があり、示された第1の側面の中に、「教科等横断的な視点」という文言が見られます。

各学校においては、児童や学校、地域の実態を適切に把握し、教育の目的や目標の実現に必要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てていくこと、教育課程の実施状況を評価してその改善を図っていくこと教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制を確保するとともにその改善を図っていくことなどを通して、教育課程に基づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上を図っていくこと(以下「カリキュラム・マネジメント」という。)に努めるものとする。

(※強調は筆者)

また、総則第2「教育課程の編成」の2には、次のような資質・能力を教科横断的な視点に立った教育課程の編成により育成していくことの必要性が述べられています。

育成すべき資質・能力

さらに、「外国語活動」と「外国語」の「3指導計画の作成と内容の取り扱い」の配慮事項には、次のような具体的な記述があります。

言語活動で扱う題材は、児童の興味・関心に合ったものとし国語科や音楽科、図画工作科など、他教科等で児童が学習したことを活用したり、学校行事で扱う内容と関連付けたりするなどの工夫をすること。

(※強調は筆者)

これまでにも、小学校では、各教科の学習を横断的・総合的に生かすことのできる生活科や総合的な学習の時間の他に、複数の教科を関連させた多様な実践が行われてきています。

ただ、教育課程全体を通して見てみると、まだまだ、「何を教えるか」という観点が中心となって各教科等が組み立てられており、学びが縦割りの枠にとどまりがちであることが、中央教育審議会答申(平成28 年12 月21 日)の中で指摘されています。

学習者は子供です。指導者は、国語科や算数科、体育科など、各教科等の指導計画に従って授業を行いますが、その授業を受けるのは同じ子供です。つまり、それぞれの時間に得た学びは教科等の枠で切り離されるものではなく、当然ながら子供の中で相互に関連し合い、つながっているものと思われます。それを指導者が意識し、教科等の枠を超えた「何ができるようになるか」という視点で教育課程全体を見渡し、教科等相互の連携を図り、関係性を深めながら、教育課程を編成していくことが求められているのです。

教科等相互の連携を図り関係性を深めるイメージカット

教科横断的な視点に立つ単元例

では、教科横断的な視点で外国語科の授業をつくる際、具体的にはどのような方法が考えられるでしょうか。

例えば、学校行事等(地域や学校によって異なります)と『We Can! 2』の各ユニットを並べてみましょう。

学校行事等と『We Can! 2』の各ユニット
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小学校の英語教材のイメージ
『We Can! 2』Unit 7 My Best Memory

こうして見てみると、新教材『We Can! 2』の単元構成が、子供たちの興味・関心、日常生活や学校生活に合わせた内容と配列になっていることが確認できます。特に小学校生活のまとめとなる時期には、卒業アルバムの撮影や文集作り等の学校行事等と平行して、“My Best Memory”や“What do you want to be?”“Junior High School Life”のユニットが続いています。

そこで、学校行事等と外国語の授業を関連させて単元を組むことが考えられます。行事等での体験が外国語の表現活動に活かされたり、逆に、外国語の時間の学びを行事等の中で発展させたりすることが期待できるでしょう。

縦割りとなる各教科等での学びが、子供の中でどのように関連付けられていくのかを指導者が意識する上で、まず全ての学校行事や教科等の単元及び活動を次のように並べてみることが有効です。そうすることにより、改めて教科等間の関連性が見えてきます。

〈単元配列表のイメージ図〉

単元配列表のイメージ図
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それでは、教科横断的な視点で構成した単元例をいくつか挙げてみましょう。

●どうぞよろしく!(例)

外国語
「This is ME!」(『We Can! 2』Unit 1)
「Welcome to Japan.」(『We Can! 2』Unit 2)

行事等
「一年生を迎える会」
「異学年班活動」
「修学旅行」
「国際交流会」

学活
「どうぞよろしく」
自己紹介を通して互いを知る。

外国人と触れ合う子供

クラス替えがある学級では、自己紹介を通してお互いを知るところからスタートすると思われます。『We Can! 2』のUnit 1 も「自己紹介」がテーマです。これらの学習や活動を関連させることで、活動もより豊かになるでしょう。また、修学旅行先で外国の方と触れ合うチャンスがあれば、ぜひ外国語の時間の学びを活かす場としたいものです。

●共に生きる町(例)

外国語
「I like my town.」(『We Can! 2』Unit 4)
大好き!私たちの町

道徳
「世界人権宣言から学ぼう」(光村図書)
大切な権利

国語
「ようこそ、私たちの町へ」(光村図書)
町のよさを伝えるパンフレットを作ろう

総合
「共に生きる町」~ふるさとを見つめる~
(地域を知る)

道徳の時間には「だれもが幸せに生きる権利」について考え、総合的な学習の時間の「共に生きる町」では、実際に地域に出て、インタビュー活動や調べ学習を行い、自分たちの住む町を見直します。その中で、住んでいる町のよさや課題に気付くことでしょう。その体験や学びを、国語の学習や外国語の時間の表現活動、ポスター作り等に活かします。

※この単元の詳細は、下の「授業実践例」で紹介します。

町探検をする子供たち

●明日に向かって(例)

外国語
「My Best Memory」(『We Can! 2』Unit 7)
「What do you want to be?」(『We Can! 2』Unit 8)

国語
「今、私は、ぼくは」(光村図書)
「宇宙飛行士」ーーぼくがいだいた夢(光村図書)

道徳
「一さいから百さいの夢」(光村図書)
夢が私たちに与えてくれるもの

総合
「共に生きる町」~ふるさとを見つめる~
(地域で働く人)※職業体験

行事等
「学習発表会」
「卒業式」
「六年生を送る会」
「卒業文集作成」

卒業を控えた時期、各小学校では「六年生を送る会」など様々な行事等が計画されていると思われます。国語科や道徳科の学習でも、自分を支えてくれた人やもの、将来の夢などについて考えたり思いを伝えたりする単元が組まれています。さらに、総合的な学習の時間には、キャリア教育の一環として職業体験を行う学校があるかもしれません。外国語科の単元にも、6 年間を振り返り「自分にとって一番心に残る行事」「将来の夢」についての活動が設定されています。こうした一連の学習や活動を有機的に関連付けることで、子供の意識は高まり、主体的な学びが促されるでしょう。

卒業式

授業実践例

ここでは、上に挙げた単元構想例の中から「共に生きる町」を取り上げ、実践例を紹介します。

外国語科指導案〈例〉

1 単元名「大好き!私たちの町」

2 単元目標

  • 地域の施設やよさなどについて聞いたり言ったりすることができる。〈知識・技能〉
  • 地域のよさや願いなどについて自分の考えや気持ちを伝え合ったり、例を参考に語順を意識しながら書いたりする。〈思考・判断・表現〉
  • 他者に配慮しながら、地域のよさなどについて伝え合おうとする。〈主体的に学習に取り組む態度〉

3 単元計画(全7時間)

単元計画(全7時間)
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★印の活動は下に紹介しています。

【関連を図る教科等】

■国語科「ようこそ、私たちの町へ」(光村図書)
■道徳科「世界人権宣言から学ぼう」(光村図書)
■総合的な学習の時間「共に生きる町」

単元を通した子供の学びのプロセス

単元を通した子供の学びのプロセス
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道徳科の時間に考え合った「みんなが幸せに暮らせる優しい町に」という視点が、この単元を貫いています。総合的な学習の時間には、実際に町に出てインタビューなどを通して調査をします。そこから生まれた地域に対する思いや願いは、外国語科の表現活動や国語科のパンフレット作りにつながるでしょう。教科等が双方向に関連し合って、子供の学びを高め、深めていきます。また、本単元を通して、「自分たちが住む町への誇り」が、子供たちの心に生まれることを願います。

活動例

本単元には「Small Talk」や「Let’s Talk」など、実際に英語を用いて、互いの気持ちや考えを伝え合う「言語活動」が多く設定されています。ここでは、その言語活動に向かうための「練習的な要素をもつ活動」と、国語科との関連を図った活動例を紹介しましょう。

●すごろくゲーム(第2時)

「ある施設や建物が地域にあるかないか」を表す表現に慣れることがねらいの活動です。ゲーム的な要素を入れつつ、活動の中では、実際に自分たちの住む町について考え、発話させることを大切にします。

【方法】

①黒板には施設や建物の絵カードを並べて貼る。学級を3チーム程度に分け、代表者が一人ずつ立つ。

②3人の代表者と指導者は、“I like my town. I like my town. 1, 2, 3!”と言ってジャンケンをする。

③勝ったチームはコマを1つ進めることができる。コマが止まった建物や施設が自分たちの町にあるかどうかを考えて、“We have ~ .”“We don’t have ~ .”などと言う。

●夢の町をつくろう(第4時)

本活動は、「町にないものや欲しいもの」を表す表現に慣れさせることがねらいとなります。使用する地図には、子供たちの個々の自由な発想が活かせるようにスペースを設けました。この活動が、次の【Let’s Talk】(実際に自分たちが住む町について気持ちや考えを伝え合う活動)につながります。

「夢の町をつくろう」地図

【方法】

①一人に1枚ずつ町の地図(学級で2~3種類)と、建物などの小絵カード(5種類程度)を配る。

②相手を見付けて、地図を見せながら“Hello! This is my town. We don’t have ~ . I want~ .”と言う(相手がその絵カードを持っていたら受け取り、地図に貼る)。

③町に名前を付けたり、町にあったらいいなと思うものを自由に描き込んだりする。

●パンフレット作製(第6時)

国語科では情報の精選や構成、ページの割り振り等について学び、自分たちの町のよさを伝えるパンフレットを作ります。外国語の時間には、紹介したい建物や施設の名前、そのよさを表す表現を選んで書き写します。国語科と外国語科の学びを融合させたパンフレット作りには、ALT や地域を訪れる外国の方にも、町のよさを伝えたいという子供たちの願いが込められています。

自分たちの町のよさを伝えるパンフレット
鳴門市林崎小学校六年生の作品(H.28)

評価について

中央教育審議会答申(平成28 年12 月)には、評価の観点を「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に整理することが示されました。併せて、小学校高学年で外国語を教科として位置付けるにあたり、「数値による評価」にも言及されています。本単元の評価については、前ページの単元計画において例として示していますが、評価規準や評価方法等に関する詳細は、文部科学省から出される指針を待ちたいと思います。

ただ、教科となることで、これまでの行動観察や振り返りカード活用などの方法に加え、ペーパーテストやパフォーマンステスト等多面的・多角的な評価方法が必要となるでしょう。全面実施に向けて、評価については、さらに研究を進めていく必要があります。

本稿では、教科横断的な視点に立った外国語科の授業づくりについて考えました。教科等を双方向に関連付けることにより、子供の主体的な学びを促し、学習で得た「知識・技能」を実際の多様な場面で活用する力が育成されるなど、単独の教科等の学習では生み出し得ない相乗効果が生まれることが分かります。教科横断的な視点に立った単元構成により、教育課程全体が一層充実し、深い学びの実現が期待できるでしょう。

イラスト/コダシマアコ

『小六教育技術』2018年9月号より

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