子供同士を結び付ける中学年への「言葉かけ」3つのポイント

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東京都公立小学校主幹教諭

丹野裕基

中学年の子供同士を結び付けるには、教師が見本を見せたり、言って聞かせるのではなく、子供自身が考えたり、体験をベースにして学んだりする実感が伴う機会をつくることが不可欠です。そのためには、教師はどんな声かけや価値付けをすればよいのか、 子供の自尊感情や学級の集団力を高める実践に定評のある丹野裕基先生が解説します。

丹野裕基

丹野裕基(たんの・ゆうき)●1986年、東京都生まれ。東京都公立小学校主幹教諭。菊池道場東京支部支部長。総合質問紙『i-check』商品開発協力委員(東京書籍)。学級経営機関誌『元気の根っこ』(東京書籍)、『温かい人間関係を築き上げる「コミュニケーション科」の授業』 『「白熱する教室」を創る8つの視点』(中村堂)などに分担執筆者として参加。

子供同士が結び付いているってどのような状態?

学級の「子供同士が結び付いている(子供の関係性がよい)」とは、どのような状態のことでしょうか? 願いや思いを込めて、教室での子供の姿を具体的に思い浮かべてみてください。

初任者のとき、当時の校長先生から「1本では立たない細い鉛筆も、紐で結いて束にすれば立つようになるね。でも、学級経営は違うよ。先生が紐のようになって子供をまとめることでなく、支えがなくても1本1本が自立する太い鉛筆のように、子供一人一人をしっかりと育てるのが指導だよ」という言葉をいただきました。今でも、繰り返し思い出す言葉です。

学級経営をイメージ化したイラスト。細い鉛筆を束ねて立てるのではなく、1本1本が自立するよう太い鉛筆のように子供を育てること。

この言葉にあるように、子供を結び付ける言葉かけは、鉛筆を束ねる紐のようにそれがなくなったらいっぺんに倒れてしまう、そのような子供を縛る約束やルールではなく、あくまで一人一人を育てるためのものだと意識しています。

子供同士が結び付いているかを確認する2つの視点

子供が結び付いていることを私は、次の2つで見ています。

①「互いを理解している、理解しようとしていること」

互いのことに関心を向け合えることが、子供同士のつながりだと考えています。関心を向け合い、理解し合う関係ができてくると、結果として誰とでも活動ができたり、問題が起きてもみんなで解決しようとしたりする姿が見られるようになっていきます。自分のことを分かってくれる安心感は、子供の生き生きとした表情や姿になって表れます。

②「一人一人違っていいということが共有されていること」

一人一人違っていいということが共有されていないと、自分で考えたり主張したりせず、誰かと同じであることに安心を求めて、友達と「群れる」様子が見られるようになります。中学年以降、そうした姿が顕著になるように感じますが、それは子供同士が結び付いた状態とは違います。子供一人一人がもつ自分らしさが見える教室でありたいと思っています。違いを否定したり、優劣のような差と見たりせず、その人らしさとして理解し合える関係が、結び付きだと思うのです。

子供同士を結び付ける中学年への言葉かけのポイント

中学年の子供たちは、それまでの経験から「みんなと比べて早い・遅い」「考えを主張するほう・主張しないほう」などと様々に、自分にラベルを貼っています。そうしたラベルは、なかなか外すことができません。「自分はそういうキャラだから」と、今までの自分をガラリと変えられない気持ちは、私もよく理解できます。

特に人間関係に関わるものは、けんかをして仲直りできずに一人ぼっちになったような、ネガティブな経験が心の重しになっていることが多くあります。友達の目も気になってくる時期です。だからこそ、教師は、年度当初から、静観したり、「なぜペアでの話し合いができないの?」と叱責したりするのではなく、積極的に子供の人間関係を動かすような言葉かけをすることが大切です。

【子供同士を結び付ける中学年への言葉かけのポイント】
①姿が想像できる具体的な言葉で伝えよう
②学級を単位にしてほめよう
③子供に問いかけよう

ポイント① 姿が想像できる具体的な言葉で伝えよう

△「聞いている友達のことを考えて話そうね」
○「相手に聞こえるように話すのが、思いやりです」

聞いてくれた、話しかけてくれた、手伝ってくれたといった日常的な関わりの積み重ねが、子供の人間関係を築いていきます。しかし、気持ちはあっても、どうやったらいいのかが分からない子供はたくさんいます。

特に年度当初は、「相手の考えを聞いたら、『どうしてそう思ったの?』と聞き返そうね」と言ったように、何をすればいいのか具体的な言葉で伝えます。その上で、「今、さんの聞き返しているときの、ニコッとした表情がとってもよかったなぁ。確かに、むすっとした顔で聞かれたら、嫌だね。みんなもニコッと笑顔でいこうね」と、子供の姿をほめて価値付けながら、関わり方の質を全員で高めていけるようにしています。

こうしていい関わり方の経験を繰り返すと、それらが子供のもの、学級の当たり前になっていきます。

ポイント② 学級を単位にしてほめよう

△「Bさんの発表の仕方、上手だなぁ」
〇「Bさんの発表の仕方、上手だなぁ。Bさん、発表しているときみんなの聞いている姿が見えた? うなずいたり、『なるほど』って声も聞こえたりしたね。ああして聞いてくれる友達のこと、どう思った?」

一人の子供が発表し、周囲の子供は発表者の話に耳を傾け、うなづいたり、「なるほど」とつぶやいたりしている。

一人のよさを見つけてほめるだけでなく、そのよさのそばにある頑張りにも目を向けるようにしています。発表が上手にできた子供のそばには、それを最後まで聞き遂げた友達がいます。一人になっても音読をやり遂げた子供のそばには、それを温かく待っていた友達がいます。そうした頑張りを「クラスのよさ」としてほめ、価値付けます。

自分のクラスのよさが認められることを子供はとても喜びます。学級に誇りをもてることは、学級の友達を大切に思う心にもつながります。

ポイント③ 子供に問いかけよう

△「みんながお互いを大切にし合えるクラスを目指していこうね!」
○「このクラスでよかったと思える、クラスの友達との関係ってどんな感じだと思う?」

友達との関係を築いていくのは、子供たちです。子供自身の中に友達との関係を豊かにしたい、このような関係をつくりたいという思いが生まれない限り、教師がいくら「一人一人を大切にする学級にしよう」と語ったところでほとんど効果はありません。中学年の発達段階を考えても、言って聞かせるのではなく、子供が考えたり、体験をベースにして学んだりする実感が伴う機会をつくることが不可欠です。

中学年以降、友達との関係によって、教室での姿がプラスにもマイナスにもガラッと変わる子供が少なくありません。ですから、私は、目の前の姿に一喜一憂せず、子供と一緒に、考え、悩み、喜びながら、1本1本がしっかり立つ太い鉛筆のように、子供一人一人を確かに育てることを目指しています。

中学年の学習意欲を引き出す「言葉かけ」4つのポイント

イラスト/バーヴ岩下

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