小6 国語科「春のいぶき」全時間の板書&授業アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小6国語科「春のいぶき」(光村図書)の全時間の板書、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

小六 国語科 教材名:春のいぶき(光村図書・国語 六)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/山梨大学大学院准教授・茅野政徳
執筆/千葉大学教育学部附属小学校教諭・青木大和 

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、「立春」「穀雨」などの春にまつわる二十四節気の語彙の意味を知り、それぞれの語彙が春を象徴する情景や、季節の移り変わりを知らせる語句であることを理解できるようにします。
また、春の俳句づくりを通して、春を表す語彙を活用して、自分の伝えたいことを明確にできる力を育てていきます。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

言語活動として、二つの段階を児童に取り組ませる必要があります。一つ目は、語彙を知る活動(語彙の量的な充実)、二つ目は語彙を活用する活動(語彙の質的な充実)です。

一つ目の語彙を知る活動として、「春の語彙カルタで遊ぼう」を行います。取り札の表には「立春」や「穀雨」といった春にまつわる二十四節気の語彙を書き、裏面にその言葉を象徴するような写真を貼っておくと、情景とともに理解ができるでしょう。読み札には、「立春」や「穀雨」などの意味を書いておくようにしましょう。

言葉の意味を理解することができたら、二つ目の語彙を活用する活動として「春の俳句をつくろう」を行います。授業する時期に春の様子が見られないということも考えられます。そのため、「春の思い出俳句」や卒業を意識して「来年の自分に贈る春の俳句」などとして、春を象徴する情景を想起させて俳句を創作する活動を行うのもよいかもしれません。

春の様子が学校で見られる場合は、共通の写真をもとに春にまつわる言葉を活用しながら俳句をつくるようにします。また、図書室の図鑑やインターネットで調べた春の言葉に関連した画像をもとに、春の俳句をつくるように促していきます。

この学習は、春のみで行うのではなく、年間通して季節の移り変わる時期に行うことで、児童が季節の移り変わりとそれに関連した語彙の意味を実感しながら理解したり、活用したりすることができ、本質的な理解に繋がると考えます。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 創作した俳句のデータ化

本単元で、主体的な学びを生み出すのに大切なことは、語彙の必要感を児童にもたせることだと考え、春の俳句づくりを行うことにしました。

児童が単に量的に語彙を充実させるだけではなく、獲得した語彙を自分の思いと照らし合わせながら適切に活用していき、語彙を質的に充実させていくことが必要です。

児童が時系列で整理した春の二十四節気の語彙と、その時期に合った行事、心情、情景とを関連付けて俳句を創作する活動を行うことにしました。その際、タブレット端末を活用し、学級や個人のフォルダに創作した作品を積み重ねていけるようにします。

積み重ねた作品を振り返り、自分の言語運用を自覚したり、改善点や言葉の使い方による語彙の解釈の違いに気付いたりすることができると考えました。

〈対話的な学び〉 句会を行う

対話的な学習を通して、語彙の解釈を広げることが大切です。例えば、「清明」という言葉の意味を理解した上で、情景を想像し、自分の状況を綴っている児童もいれば、最高学年となったことへの期待や希望を表す児童もいることが考えられます。

書くことでの対話的な学習では、創作する前に児童同士で話し合い、自分の思いを明確にしていく場面を目にすることがあります。この場合、なかなか創作まで至らない児童や友達から影響を受けて考えを広げられる児童がいる一方で、友達の考えに合わせてしまい、作品が友達と類似してしまったり、17文字の作品の中で最初に書こうとした思いが残らなかったりすることがあります。

俳句の創作を通して語彙の解釈を広げるためには、まずは児童が自分の考えを形にし、句会を行うことによって自分の考えと友達の考えの共通相違に目を向け、語句の使われ方に着目できるようにすることが大切なのではないでしょうか。

句会では、共通の語彙で創作した俳句をもとに発表をします。友達の発表を聞いた児童は、その児童の語彙の解釈や創作に至った経緯を確認し、感想を伝えます。友達の作品に触れることで、語彙を多面的に捉え、自分の考えを明確にすることができるのではないかと考えました。

〈深い学び〉 自分が選んだ春の語彙で俳句を創る

深い学びを実現するためには、一つの語彙の解釈を広げるだけではなく、二十四節気の他の語彙の活用方法について、児童が自分の経験や思いと重ねながら思考することが大切であると考えました。

そこで、共通の語彙で俳句を創作する段階から、児童が自分で調べた語彙の中から、自分が活用したい言葉をもとに春の俳句を創るようにします。
その際、児童が選んだ言葉の意味を確認し、そこから考えられる解釈を挙げ、自分の思いをより明確に表せるようにしていきます。

例えば、「啓蟄」を選んだ児童が、冬眠している虫が土から這い出てくるという意味や、まもなく春本番になる頃という意味から、「次の学年への飛躍」「花粉の季節の到来」など、自分の経験や思いをもとに様々な考えを広げ、最も伝えたい思いを明確にできるようにしていきます。

このように、ただ語彙を獲得するだけでなく、語彙の解釈を広げながら、自分の思いに合った語彙を選択し、適切に活用しようとする深い学びの姿が見られると考えました。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1)視覚的情報による語彙理解の充実

新しい語彙と出合った際、辞典などを使って文面で意味を調べることが多いはずです。一方で、その言葉が表す情景や状態などの解釈が想像で行われ、実際の場面との相違があり、誤った場面で活用してしまったり、活用まで至らなかったりすることもあります。

そこでICT端末を活用し、春の二十四節気の語彙に関連した動画や画像を視聴するようにします。そうすることで、授業の時期とその語彙が表す時期が合っていなくても、児童に情景を理解させることができますし、児童が語彙を理解する場合に情景をしっかり思い浮かべながら獲得することができます。

ネットから情報を獲得する際には、情報リテラシーの側面から、引用や出典の方法を指導する必要があります。

(2)匿名性を生かした句会

匿名で作品を共有させたいと考えていても、鉛筆書きの場合、筆跡によって誰が書いたのかが推測できてしまったり、字の丁寧さに目が向いてしまったりして、作品の言語運用とは別の部分の注目してしまうことがあります。

タイピングやフリック入力により作品の創作をすることで、児童は言語運用のみに着目して共有することができるのではないでしょうか。

創作した作品は、学級で保有しているネット掲示板やチャネルなどのプラットフォームがあれば、そこに作品を投稿する形で学級の全児童と共有することができます。友達の作品を読んだ児童は、コメントという形で感想を伝え、二十四節気の語彙の解釈を広げることができると考えました。

しかし、匿名での投稿については、十分指導する必要があります。匿名だからこそ責任をもって言語運用することや、コメントの言葉にも留意するように指導していくことが大切です。

6. 単元の展開(3時間扱い)

 単元名: 春の俳句をつくろう

【主な学習活動】
・第一次(1時
① 春を表す語彙を知り、春の語彙カルタをする〈 端末活用(1)

・第二次(2時3時
②「清明」の意味を確認し、「清明」で俳句を創作し、友達と共有する〈 端末活用(2)
③ 自分が選んだ春の語彙で俳句を創作し、友達と共有する〈 端末活用(1)(2)

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例

【1時間目のワークシート例 】

1時間目のワークシート例
単元の見通しと知識の獲得

児童が自然と季節に関する語彙に興味や関心をもつことができるように、身の回りの経験を想起させながら学習に入るようにしましょう。

春がいつから始まるかに着目して予想させることで、立春が二月上旬を表していることに驚く姿が見られるでしょう。そのことで、いつまでが春なのかについても興味をもち、意欲的に語彙を獲得するようになると考えます。

児童の意欲が高まったところでワークシートを渡し、言葉を調べるように促しましょう。その後タブレット端末等を活用して、情景や関連する画像を確認するように促します。獲得して終わってしまうと児童が活用したいという思いには至りません。
授業の終盤には、春の語彙カルタを各グループ(1グループ3人~4人)で行い、春の二十四節気の語彙の定着を確認したら、次回に春の二十四節気の語彙を使って俳句をつくることを知らせて学習を終えるようにします。

春の語彙カルタの実際

春の語彙カルタ

春っていつからいつまでのことをいうんだろう。

三月から五月くらいじゃない?

なんで?

あたたかくなってくる頃だし、六月は梅雨っていうから!

立春って二月なの!ってことは、二月から春ってことなんだ!

じゃあ冬の終わりっていつごろなんだろう。なんて言葉で表すのかな!


【2時間目の板書例 】

2時間目の板書例
対話的な学習のために

春の俳句を創作する際に、児童に「俳句を創作してごらん」と言っても、すぐに取り組める児童は全員ではないはずです。そこで、春の二十四節気の語彙を活用した俳句を分析させるようにします。

作品で扱っている春の二十四節気の語彙が何を表しているのか、どのような情景が読み取れるのかを共有し、俳句づくりへの見通しをもたせることが大切です。さらに、情景だけではなく、心情を読み取ることができている児童がいたら、他の児童にも共有しましょう。

この時間での俳句創作は、活用する語彙を「清明」に絞ることにします。友達の作品を共有した際に、語彙の活用方法の多様性に気付いたり、解釈の多様性に気付いたりして、語彙を豊かにすることができると考えました。

創作は、タイピングで行うこととし、つくったものは学級のネット掲示板やチャネル等に投稿させます。

Aさんの作品、「清明の 校門くぐり 背筋伸び」は、最高学年になったことを自覚して背筋が伸びている様子がよくわかるね。

Bさんは「鳥の声 清明の朝 目覚め良し」は、春の温かい様子やすがすがしさがよく伝わる俳句だね!

清明っていう言葉は、新しい気持ちで頑張るという心情を表すことができるし、春の温かさという情景を表すこともできるね!


【3時間目の板書例 】

3時間目の板書例
深い学びの実現

前時で行った「清明」を活用した俳句を振り返ります。ここでは、同じ語彙を活用しても、活用の仕方によって解釈が変わることを確認するようにします。春にまつわる語彙が心情と情景を表すことができることを共有しましょう。

その後、春の二十四節気の語彙から一つ選んで、再び俳句をつくるように促します。その際、1時間目で作成した語彙の時系列を表したワークシートと、語彙に関連した視覚的資料を参考にするよう促し、自分が使いたい言葉がいつ頃で、どのような情景なのかを確認させるようにします。

さらに、その語彙の時期にどのような行事や心情があったかを想起できるよう、カレンダーに書き込んでもよいことにし、心情面で表すのか、情景面で表すのかを明確にさせるようにしましょう。何度も創作し直してよいこととし、創作したものの中から一番お気に入りの作品を二回目の句会に出すようにします。

一回目と同様、クラスの掲示板やチャネルに投稿するように促しま今回は今回は「立春」や「雨水」などの言葉ごとにチャネルを立ち上げるようにします。そこに投稿させることで、同じ語彙の運用の仕方の違いに気が付き、考えの整理をすることができたり、自分が伝えたいことをより明確にできたりすると考えました。

イラスト/大橋明子、横井智美

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