交流・共同学習で深める特別支援教育
障害のある子供たちと、障害のない子供たちとの交流および共同学習は、子供たちの経験を深め、社会性を養い、豊かな人間性を育むとともに、お互いを尊重し合う大切さを学ぶ大きな意義のある機会です。『小学校学習指導要領 総則編』の中にも、障害のある子供と障害のない子供が交流する機会を積極的に設けるよう示されています。
執筆/福岡県公立小学校教諭・伊澤直美
目次
交流および共同学習とは
どのようなよさにつながるの?
障害のある子供にとって
様々な人々と助け合って生きていく力となり、積極的な社会参加につながる。
障害のない子供にとって
障害のある人に自然に言葉をかけて手助けをしたり、積極的に支援を行ったりする行動や、人々の多様なあり方を理解し、障害のある人とともに支え合う意識の醸成につながる。
参考サイト:『交流及び共同学習ガイド』(文部科学省)
交流
相互の触れ合いを通じて豊かな人間性を育むことを目的とする。
共同学習
教科等のねらいの達成を目的とする。
交流および共同学習を行う場面
特別支援学級の一人ひとりの子供の実態や目標に応じて、どのような交流および共同学習を行うことができるか検討します。
それぞれの子供にとって、どのようなよさにつながるのかを明確にすることが大切です。
学校行事や全校集会での交流
- 運動会、学習発表会、遠足、社会科見学、宿泊体験学習、修学旅行等
※並び順や組み合わせに配慮。
※学年の仲間の1人であることを意識できるようにする。
委員会活動やクラブ活動での交流
各教科や道徳科、総合的な学習の時間での交流
- 音楽、体育、図画工作、家庭科等
給食での交流
- 交流学級における給食(毎日/週に○日)
- 特別支援学級における給食を交流学級から数名ずつ交代で行う。
清掃活動での交流
- 交流学級の清掃を一緒に行う。
- 特別支援学級の清掃を交代で一緒に行う。
休み時間での交流
- 集団遊び(おにごっこ、ドッジボール等)を一緒に行う。
朝の会や帰りの会での交流
- 1日の予定や連絡を聞く。
- 係からのお知らせやイベントを行う。
- スピーチを行う
交流および共同学習の展開
- 事前に活動のねらいや内容等について、子供たちの理解を深める。
- 障害について形式的に理解させる程度にとどまるものにならないよう、子供たちが主体的に取り組める活動にする。
- 事後学習で振り返りを行うとともに、その後の日常の学校生活において、障害者理解につながる丁寧な指導を継続する。
事前準備、事前学習
特別支援学級担任との打ち合わせと必要な情報共有
- 子供の特性や個性についての理解
- 交流のねらいの確認
- 活動の役割分担
学級の子供たちが、障害のある子供たちのことを理解できるような工夫
- 好きなこと
- 苦手なこと
- コミュニケーションの方法
- 必要な支援や協力の仕方等
学級に迎える準備
- 机や椅子の準備
- 名簿や掲示物等
子供の積極的参加のために
- 障害のある子供と学級の子供が、互いに協力しながら取り組めるようにする(ペア活動やグループ学習等)。
- 障害のある子供の実態に適した補助的な教材や教具等を準備する。
- 障害のある子供も、学級の子供も理解しやすいように様々な方法で提示する。
- 活動の中で自分に合った方法を選択したり、考えたりすることができるようにする。
- 自分の思いを自分なりの方法で表現できるように発表や表現の仕方を準備する。
- 教室内の座席を意図的に配置する。
学級の子供たちが多様性を尊重する心を育むことができるよう、教師自身がお手本となることを意識して、子供たちとかかわることが大切です。
活動当日
- 子供たちが主体的に活動に取り組むことができるように役割に沿ってかかわる。
- 障害のある子供たちの活動の状況や周囲の支援の様子を常に把握して、円滑に活動できるようにする。
- 事故防止に努める。
- 障害のある子供に対し、活動が負担過重にならないように留意する。
身体的、あるいは精神的に疲れやすい子供もいます。子供の表情や動きをよく見ておくことが大切です。
事後学習と評価
- 交流および共同学習の後に、学級の子供たちが活動を振り返る。
・活動してみて、どのように感じたか。
・これからどのような活動をしていきたいか。
作文や絵に表現したり、周りの人に伝えたりすることで、活動のねらいに基づいて子供たちの理解を深める。そして、交流および共同学習に対する関心をさらに高めるようにする。
活動の様子や子供たちの振り返りを、学級通信として情報発信することもできます。
イラスト/北澤良枝
『教育技術 小五小六』2021年1月号より