「泣く」「怒る」「騒ぐ」ネガティブな感情表現をする子どもへの対応とは
感情は人間が生きていくうえで普段の生活と切り離せないものです。特に低学年の子供の場合、感情を大切にしつつ、人間らしい感情表現をできるよう成長させていくことが大切になります。
目次
感情に焦点を当てて、共感的な態度で
7月になると、通知表の時期でもあり、評価が気になります。特に、生活や言動に関係する評価が難しいと感じます。どのようなことに気を付けて評価をするとよいでしょうか
私たち教師は、〝指導〞という観点で評価をしなければならない場面に出合うことがあります。例えば掃除のときに、「取り残したごみがあるよ」「ほうきなどがしっかりかけられていません」のように、指導したつもりでも、子供からするとマイナスに評価されたと感じることもあります。原因を追求することも大切ですが、感情に焦点を当てて、受容的、共感的な態度で話を聴く姿勢も大切にしたいものです。
感情に焦点を当てるとは、具体的にどのような点に気を付けて、どのように対応すればよいのでしょうか?
応答的環境で、豊かな感情表現を育む
感情表現は、「応答的環境」で育つと言われています。応答的な環境とは、感情を受け止めて反応をしてくれる環境のことです。例えば、泣いている時に「どうしたの?」と声を掛けてくれること。
嬉しい時に、一緒にニコニコ微笑んでくれること。「~だから、悲しいんだよね」のように気持ちに寄り添ってもらえること。このような環境で過ごすことで、子供は感情を豊かにし、様々な場面や状況に応じた表現方法も心得ていくという捉え方です。
感情は否定しても、すぐに消えてなくなることはありません。ですので、子供が「泣く」「怒る」「騒ぐ」など、一見ネガティブに思える感情を出したとしても、頭ごなしに否定しないようにしましょう。
二年生で大切にしたいポイント
①感情を論理的に裏付けてみる
「怒る」という感情表現に対して、「どうして怒っているの?」「何が悔しいことがあったの?」「どうしてそのように感じたの?」「これからどうしたらいいかな?」 などのように、状態や気持ちの整理だけではなく、自分の感情の出し方の理由が考えられるように、具体的に、本人が感情を説明できるようにしていくという手法です。感情的にならず、問題解決の力を養うことができます。
②感情をありのままに受け入れる
「泣く」などのネガティブな感情に対しては、「そういうこともあるね」「そういう気持ちになったんだね」と受け止めていく方法です。そのような感情を持った自分自身を否定しないようにすることで、穏やかな心境を理解できるようになります。
③子供同士がかかわる環境をつくる
感情を論理的に裏付けたり(①)、感情をありのままに受け入れたり(②)するのは大切ですが、毎日接する子供全員にそのように接するのは難しいことです。
そこで、教師がモデルとして全体の前で意図的に紹介したり、実際にやり取りをやって見せたりすると同時に、子供同士がかかわることができる「ピアカウンセリング的なイメージ」環境をつくることが大切です。
レジリエンスを意識して
レジリエンス(Resilience)とい う言葉が最近使われます。精神的な回復力・防御力という意味の言葉です。二年生では、精神的な発達の観点から、ストレスを受けた時に、落ち込みやすい(防御力が低い)、なかなか立ち直れない(回復力が低い) という子供がいるのは当たり前のことです。
泣いている時に「つらいね」「悲しいね」な どと共感することで、適度な感情表現の仕方を学び、コミュニケーションのきっかけとしましょう。
カウンセリング的教師の声掛けの例
①子供を認める・ほめるとき
- ○○さんは誰にでも親切(優しい)だね。
- 〜をしてくれて、すごくうれしいなぁ。
- 話をしっかり聞いて、すごいなぁ。
- いつもルールを守って感心だなぁ。
- ○○さんの一言で、みんながニコニコになるね。
- 自分にも、友達にもまじめにするよね。
②子供を励ますとき
- 嫌なことを言われてつらいねぇ。
- そうかぁ、ドッジボールで勝てると思っていたのに負けてくやしかったんだね。
- 勉強で分からないことがあって、悲しい気持ちになったんだね。
- 仲良しの友達が転校してしまって、さみしい気持ちになったんだね。
- 自分一人で最後までやりたかったんだね。
③子供に指導をするとき
- 嫌な気持ちがあったのだろうけど、たたいてほしくなかったなぁ。
- うそをつかれて悲しい気持ちだなぁ。
- また忘れ物をして残念だなぁ。
- そんな言い方をしたなんて、信じられないなぁ。
- 気持ちは分かるけど、蹴らないでほしかったなぁ。
教えてくれたのは・・・
八巻 寛治 先生
ガイダンスを学級づくりに活用する会代表。上級教育カウンセラー・ガイダンスカウンセラー・小学校教員ほか。エンカウンターミニエクササイズ、心ほぐしミニゲーム、課題解決のカウンセリングなどを活用した実践を紹介している。
『小二教育技術』2018年7/8月号より