#46 相手の目を見て明るい笑顔で【連続小説 ロベルト先生!】

連載
ある六年生学級の1年を描く連続小説「ロベルト先生 すべてはつながっています!」

前文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官/十文字学園女子大学教育人文学部児童教育学科 教授

浅見哲也

「中学でどうやってお友達つくったらいいの?」今回はいよいよ卒業式が迫り、お別れの日が近くなってきた先生と子どもたちの会話です。

第46話 友達づくり

国語辞典をひらくロベルト先生

ついに、卒業証書授与式の練習が始まった。

卒業証書のもらい方、お辞儀や返事の仕方、卒業生の呼びかけの言葉や歌など、六年生はすっかり卒業ムードとなった。

「先生、もうすぐ卒業だね。先生、私たちがいなくなって寂しくない?」

ふいにそんな質問をされると、何て返してよいか迷ってしまう。

「寂しくなんかないよ…、いや、本当は…寂しい」

強がろうかと思ったが素直に答えると、子どもたちも何て返したらよいか困っていたようだ。

「ところで、みんなは中学生になってクラスも別れるけど、どんなふうに新しい友達をつくるのかな?」

「えーっ、別れたくないよ。どうしよう…?」

「よし、それでは先生が、友達をつくる方法を伝授してあげよう!『タラリララン!』(またドラえもんの効果音)、名付けてロベルト先生の…『友達づくり秘伝書!』」

そう言って国語辞典を取り出す。

「先生、それはただの国語辞典じゃないですか?」

「いいの、いいの」

そんな言葉は無視して、国語辞典を広げながら…

「秘伝その一!

はじめは名前の順で席に着いたり、背の順で並んだりすることが多いので、自分と名前の順が近い人や背が同じくらいの人と接することが多くなるはずじゃ。そこがチャンスの到来!

何か話しかけるべし! 例えば…『ねえ、部活は何に入るか決めた?』とか『中学校のバスケットゴールって高いよねえ』はどうだ!」

「何だそれ? 変だよ!」

「秘伝その二!

先生から、配付物が座席の前から配られることがあるはずじゃ。そのときがチャンスの到来!

配付物を後ろの人に渡すときに、相手の目を見て明るい笑顔で『はい、どうぞ! 』と渡すべし! 相手が異性なら、なおさら効果あり!」(ウィンク)

「おいおい、ウィンクはやりすぎだー!」

「秘伝その三!

一緒にトイレ行こう! これだー!」

「先生はよく、連れションに行くなって言ってたくせに…」

「まあ、最初は許す!」

中学校の新しいクラスのみんなの会話が「中学校のバスケットゴールって高いよねえ」だったとしたら…と想像しただけで思わず顔がニタニタしてしまう。

次回へ続く


執筆/浅見哲也(文部科学省教科調査官) 画/小野理奈


浅見哲也先生

浅見哲也●あさみ・てつや 文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官。1967年埼玉県生まれ。1990年より教諭、指導主事、教頭、校長、園長を務め、2017年より現職。どの立場でも道徳の授業をやり続け、今なお子供との対話を楽しむ道徳授業を追究中。

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