ここまで育てておきたい小三の二学期【算数】
二学期に小三算数の授業において子供をどのように伸ばしておけば、以降の指導がスムーズに進むのでしょうか。算数を専門とするベテランの先生方からアドバイスをいただきます。

目次
小数のたし算の学習場面で、「〜を1とみる」というもとにする見方を働かせたい
(東京学芸大学附属小金井小学校教諭・尾形祐樹)
例えば「小数のたし算(ひき算)や分数のたし算(ひき算)の計算」の学習ならば、「計算ができる」という知識・技能を一生懸命児童に身に付けさせようとするでしょう。
そのこと自体は正しいのですが、それだけではこの単元の「数学的な見方・考え方の育成」が図られているとは言えません。
学習指導要領が内容重視から資質・能力重視へと転換された今は、この「計算ができる」で留まらず、なぜそのような計算ができるのか、意味を問わないと次の学習へとつながる「資質・能力の育成」にはならないのです。
既習の中にある見方を生かした学習が大切
具体的な小数のたし算の学習場面で考えていきましょう。ここでは単元を超えて、「〜を1とみる」というもとにする見方を働かせたいものです。
そこで例えば、「0.3+0.1は?」という問題を子供たちに問うとします。するとすぐに「簡単! 0.4!」と答える子がいます。そこで「なんで?」と問い返すと、「……」と困る子や「簡単! 0を隠す!」と答える子がいます。
この「0を隠す」というのは、その子なりの計算するための手続きとしては有効ですが、算数的には価値の高い見方とは言えません。
そこで「0って隠していいの?」とさらに問い返します。すると「0を隠す」と答えている子は、単に計算するための方法を言っているにすぎないので、困ってしまいます。
次に「0を隠すとどうなるの?」とさらに問い返すと、「0を隠すと『3+1』になる」と言います。この「3+1」が重要なのです。
0.1を1とみると、0.3+0.1は3+1の計算(整数の計算)で考えることができます。このようにていねいに問い返しながら、「〜を1とみる」というもとにする見方を、この場面でしっかり押さえておくことが大事です。
そうすると、同じ三年で学習する「分数のたし算」の学習で、 [MATH]\(\frac{3}{10}\)[/MATH] + [MATH]\(\frac{1}{10}\)[/MATH] も小数のときに考えたのと同様に、「 [MATH]\(\frac{1}{10}\)[/MATH] を1とみると、 [MATH]\(\frac{3}{10}\)[/MATH] + [MATH]\(\frac{1}{10}\)[/MATH] は3+1の計算(整数の計算)で考えられるよ」という見方を、子供たちから引き出すことができるのです(下図1参照)。

このように、既習の中にある見方を生かして学習することが大切で、先の小数の事例でも子供たちから求める見方が出てこなかったときに、「一年生のときの30+10はどう考えたかな?」と、同じ見方を使った既習に戻ればよいのです。