子供たちが「やってみたい」、「またやりたい」と思える体育学習にするための個別最適な跳び箱運動
器械運動は、体育の領域の中でも「技」という言葉を唯一使用する領域です。そのため、「できる」「できない」がはっきりするという特徴があります。そのため、「技ができないから嫌だ」と子どもたちの意欲を削いでしまう可能性があります。そこで、マイゴール(1人1人に合った学習課題)を設定し、目指す学習内容を行いました。
子供たちが「やってみたい」、「またやりたい」と思える体育学習にするために【器械運動「みんなでBINGO! 〜鉄棒運動〜」】はこちら>>
執筆/東京都公立小学校教諭・河田侃也
児童の実態
私は、単元の前後に必ず実態アンケートをとります。児童に、学級に、学年の実態に沿った授業をつくるためです。以下が、事前アンケートの結果です。
①体育の授業は好きですか。
学級の全ての児童が、体育の授業を肯定的に捉えていました。体育の授業の楽しさや喜びを感じることができる授業をつくっていきます。
②跳び箱運動は好きですか。
「跳び箱運動が好きですか」という設問では、否定的に捉えている児童が、約25%いることが分かりました。
③跳び箱運動でどんなことが楽しみですか。
この設問から、児童は「たくさん運動すること」「自分の課題を見付けること」「できなかった技ができるようになること」「友達と協力して行うこと」などを楽しみにしていることが分かりました。そのため、「オリエンテーションの工夫(運動量の確保、安全面の確認)」「技のポイントの分かる化」「支え合う学び合い」を手だてとして講じていきます。
④跳び箱運動でどんなことが不安ですか。
この設問から、「怪我をすること」に関して多くの児童が不安感を感じていることが分かりました。跳び箱運動は、怪我が多い単元でもあります。怪我をしないためにも、「安全な場の提供」「確かな知識」を手だてと講じていきます。
手だてについて
①オリエンテーションの工夫
器械運動は、上述のように技の「できた」「できない」がはっきりする運動です。「技ができない」ということで意欲が落ちないように、「できたとは何か」を子供たちと確認しました。
上のスライドのように、「ポイントを知ることができた」「課題を知ることができた」なども、「できた」の1つです。学習指導要領でも記載されているように、子供たちの「技能」を高めることだけではなく、「知識」も与えていかなければなりません。
また、児童から、授業が始まる前に「跳び箱って運動する時間少ないんだよなー」という声がありました。十分な運動量の確保のために、第1時でのオリエンテーションで、場の準備の行い方を以下のようなスライドで確認しました。
タブレット端末を活用しながら、場を示すことで、1時間1時間、児童に合った場に変えていくことができます。準備や片付けの仕方を明確にすることで、子供たちは安全に準備や片付けをすることができました。
②技のポイントの分かる化(確かな知識)
技のポイントを押さえるために、2つの手だてを考えました。
1 スプレッドシートを活用した系統表
以下のようなスプレッドシートを用意し、いつでも閲覧できるようにしました。
技名を押すことで、リンク先にいき、動画を見ることができます。お手本動画を見ることで、技の行い方を知ることができることに加え、「この技ができるようになりたい!」という児童の「やってみたい」を引き出すことができました。
③支え合う学び合い
支え合う学び合いにするために、「見る視点」と「タイムシフトカメラ」を活用しました。
跳び箱の横で友達の試技を見守る子供たちを称賛し、「見る視点」を共有しました。
また、タイムシフトカメラを活用することで、自分の試技を見ることができると同時に、技のポイントを基にしたアドバイスにつなげ、「支え合う学び合い」を実現しましtた。
④安全な場の提供
子供たちが、安心して取り組むことができるように、「エバーマット」や「マット」を活用した場を用意しました。
台上前転をする際に、「横に落ちてしまう」という恐怖心がある子供たちがいました。跳び箱の横にエバーマットを置いたり、マットを横にして支えたりすることで、恐怖心なく、積極的に取り組む子供たちの姿が見えました。
また、柔らかい跳び箱を使用することも、効果的でした。
終わりに
以上のような実践は、子供たちの実態を十分に把握することで考えることができました。子供たちが跳び箱運動の楽しさや喜びを十分に感じることができるように、指導者である私も自己調整しながら、授業研究に努めていきたいと思います。
イラスト/イラストAC
執筆
河田侃也(かわた なおや)
東京都公立小学校教諭
令和四年度東京教師道場部員
令和六年度第14期NPO健康・体育活性化センター小学校体育研究員