前田康裕先生のまんがで学ぶ授業改善プロジェクト#02~小中連携協議会を活性化させるには~
「研究授業は果たして授業改善に役立っているのか」「授業改善になぜICT活用が必要なのか」という疑問を持つ方は多いことでしょう。熊本大学特任教授の前田康裕先生は、その問題意識で『まんがで知るデジタルの学び3:授業改善プロジェクト』(さくら社刊、以下本書)を執筆しました。このたび著者の前田先生に、本書の特徴的な場面を引用しながら、授業改善のポイントを語っていただきました。第2回のテーマは「小中学校の連携協議会」です。(構成/文:村岡明)
前田康裕(まえだ・やすひろ)
1962年、熊本県生まれ。熊本大学教育学部美術科を卒業後、教師となり、小中学校に25年間勤務。その間に、岐阜大学教育学部大学院教育学研究科を終了。熊本大学教育学部附属小学校教諭、熊本市教育センター指導主事、熊本市立小学校教頭、熊本大学教職大学院准教授、熊本市教育センター主任指導主事等を経て、2022年4月より熊本大学特任教授。『まんがで知る教師の学び』、『まんがで知る未来への学び』、『まんがで知るデジタルの学び』シリーズ(さくら社)など、著書多数。
前田康裕先生のまんがで学ぶ授業改善プロジェクト#01~研究授業後の検討会を考える~
目次
小中学校の連携は重要なのに
今回の場面は、研究主任の前向(まえむき)先生が、指導教員である吉良(きら)先生に、中学校との連携を相談するところから始まります。
前田先生:ここでは「小中学校連携協議会」という名称にしましたが、どこの地域でも小学校と中学校が連携する場はあるでしょう。けれどもその場は、有効に機能しているでしょうか?
ここで描いたように面と向かって批判するならまだしも、会が終わってから陰口を言うようではいけません。ここでの批判は、一見正論ですが、相手(中学校側)の状況をきちんと把握しているのかが問題です。小学校と中学校では文化が違うのですから。
正論めいた批判の応酬では
前田先生:学習用の端末は「小学校ではタブレット型、中学校ではパソコン型」のように、形状が違うことがあります。そのために、ここで描いたような不満が出がちです。しかし、だからといって正論めいた批判の応酬をするのは、まるで建設的ではありません。
本来小学校で学んだことを土台にして、中学校での学びをさらに積み上げていく必要があります。その道筋を描いていくため、あえてこのような対立場面を描きました。
連携を成功させる「戦略」
前向先生の言葉には「小学校ではICTを活用した協働的な学習が行われているのに、中学校では」というニュアンスが含まれています。これは、協働的な学習を阻む「抵抗勢力」がいることが前提の考え方です。これでは「抵抗勢力」を説得するしかありません。それを吉良先生は「戦略的に間違っている」と指摘しました。
前田先生:教師自身が協働的に学べなければ、そうした授業はできません。教師同士が協働して学ぶ機会を設け、相互理解と信頼関係を構築することが大切です。
以前私が見学した研修会は、「中学校教師がICT活用のスキルを身につけ、小中合同のICT研修会で講師役になる」という形式を採っていました。中学校の先生はICTを使った授業がイメージできますし、小学校の先生の事情も分かります。見ていて、お互いの理解が深まったと感じました。
本書では、これ以降の章で、「教師自身が主体的・対話的な学び手になる」姿を描いています。
まずは互いをよく知る
以上、『まんがで知るデジタルの学び3:授業改善プロジェクト』から小中学校連携協議会のシーンをピックアップし、そこで提起されている課題について前田先生のメッセージをお伝えしました。
前田先生は「教師自身がICTを活用した授業を経験することが重要」「互いの学校文化をよく知ることができるような場を設けるべき」と語ります。先ほど紹介した「中学校の先生が講師となるICT研修会」では、講師の先生から「小学校の先生が機能を学んで喜んでくれた」「貢献できてうれしい」といった感想が寄せられたそうです。こういう小さな喜びが、互いを知ることにつながっていくのだと思いました。
次回は引き続き本書『まんがで知るデジタルの学び3』から、「教師の成長とデジタルの学び」について取り上げます。お楽しみに。