動き出した「35人学級」への期待と課題

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小学校全学年での「35人学級」化がついに動き出しました。中学校への拡大化や、さらなる少人数化へつなげるためにも、「35人学級」での確かな成果を上げることが教育現場には求められます。今後への期待と課題を考えます。

動き出した「35人学級」
撮影/浅原孝子

財務省との攻防の末に文部科学省の悲願がようやく実る

2021年3月31日、小学校の1学級の児童数の上限を40人(1年生は35人)から35人へ引き下げる改正義務教育標準法(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律)が参議院本会議にて全会一致で可決され、成立しました。小学校全学年の1学級の定員が引き下げられるのは、1980年以来40年ぶりのこと。今年度の2年生から段階的に適用され、2025年度には小学校全学年での「35人学級」化が実現することになります。

学級編制基準の引き下げは、文部科学省をはじめとする教育関係者にとっての悲願でもありました。児童生徒一人ひとりのニーズに応じたきめ細かな指導体制を確立するには少人数学級化が必要だとする文部科学省に対し、予算の編成権を握る財務省が「効果の検証が十分でない」などと否定的な立場をとり、長年にわたり激しい攻防が繰り広げられてきました。

その潮目が変わるきっかけとなったのが、昨年からのコロナ禍です。感染予防の観点から、教室内の「密」を避けるために少人数での授業が求められるようになったのに加え、休校措置などの影響で前倒しスタートとなった「GIGAスクール構想」の効果を高める上でも少人数学級が望ましいとの声が高まりました。さらに、小学校のみの35人学級化であれば予算に与える影響も限定的であることから、財務省も認めざるを得なかったようです。とはいえ、文部科学省としては本来、小中学校全学年での「30人学級」化を求めていただけに、今回の「35人学級」化は、文部科学省と財務省の「痛み分け」と見る向きもあります。

教員の質の確保など効果を上げるには課題も多い

ようやく動き出した「35人学級」化ですが、課題も多くあります。まずは、学級数増に伴って必要となる教員数をどう確保するかという問題です。「35人学級」化には約13,500人の教員増が必要とされています。文部科学省ではこれをいじめや少人数指導などの名目で配分されている加配定数の一部を振り替えることや、児童数の自然減に伴う教員の減員分を組み合わせることなどで確保するとしていますが、それ以上の増員は新規の採用で賄うほかありません。現在、すでに小学校教員の採用倍率は全国平均で3倍を切る水準にまで下がっていますが、さらなる採用数の増加は、教員の質の低下という事態を招くことにもなりかねません。そうなれば、少人数学級による本来の教育効果を期待することも難しくなってくるでしょう。

さらに、学級数増に伴う教室不足の懸念もあります。2年生が35人学級となった今年度については、不足分は余裕教室の転用などで対応できましたが、3年生が35人学級となる2022年度以降は、教室の確保が困難な学校が出てくる可能性もあります。

「35人学級」化で一歩進んだ日本の少人数教育ですが、国際的な比較においては、1クラスあたりの児童数は依然としてOECDの平均値を大きく上回る高い水準にあります(グラフ参照)。

小学校の学校規模国際比較

今後、さらなる少人数化をめざす上では、教員の質確保などの課題を解消すること、そして誰もが納得できる、「少人数教育の効果」を示していくことが必要となるでしょう。

取材・文/葛原武史(カラビナ)

『総合教育技術』2021年8/9月号より

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