小6算数「分数×分数」:数直線・面積図・関係図で攻略①【動画】
【トモ先生の算数チャンネル】第5回
小学校の算数の授業づくりをお手伝いする『トモ先生の算数チャンネル』。いよいよ具体的な授業づくりに役立つポイントの紹介が始まります! 今回は、6年生の「数と計算/分数×分数」編。トモ先生が、学習指導要領を紐解きながら解説します。
このシリーズでは、小学校高学年の算数を専門とする髙橋朋彦先生が、小ネタや道具に頼らずに、基本を大切にした質の高い授業づくりができるアイデアをお届けしていきます。
目次
分数の学習で大切なこと
学習指導要領、読んでいますか? ⋯なかなか読む時間を取るのは難しいですよね。そこで、算数チャンネルでは、私が読み込んだ学習指導要領のポイントをみなさんにお伝えしていきたいと思います。
さて、6年生の分数×分数ですが、学習指導要領解説算数編(H29年6月告示)にはこのように書かれています。
〔算数的活動〕(1)
小学校学習指導要領解説 算数編(H29年6月告示)より
ア 分数についての計算の意味や計算の仕方を、言葉、数、式、図、数直線を用いて考え、説明する活動
分数×分数の学習は、どうしても「計算が正確にできるか」に重きを置きがちです。
もちろん、正確に計算できることは大事なことですが、「なぜその計算になるのか?」ということを、図を使いながら考え、説明できるようになることが大切です。
3つの図を理解しよう!
数直線・面積図・関係図――この3つの図には、それぞれ別の角度で理解を深める特徴があります。
【問題】
1dLで[MATH]\(\frac{4}{5}\)[/MATH]㎡塗れるペンキがあります。このペンキ[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]dLでは何㎡塗れますか?
この問題を例にして、一つずつ見ていきましょう!
1. 数直線:割合で考える
数直線は、「割合」の考え方を身に付けるのに役立ちます。
数直線の真ん中が基準になり、「1dLあたり[MATH]\(\frac{4}{5}\)[/MATH]㎡塗れる」を表しています。
ペンキが2dLだったら、1dL×2で、2倍の量ですね。2dLのペンキで塗れる面積を求めるには、ペンキと同様に面積も2倍で、[MATH]\(\frac{4}{5}\)[/MATH]㎡×2=[MATH]\(\frac{8}{5}\)[/MATH]㎡塗れる、ということがこの図から考えられます。
このような整数倍は理解しやすいのですが、分数倍を理解するのが難しいのです。
なぜなら、数が減ってしまうからです!
子供にとって「数が減るのにかけ算」という概念は難しいです。
ですが、数直線を使うことによって「数は減るけれどかけ算」ということが理解しやすくなります。
先ほどの整数倍では、数直線上の1から2に行くとき、1dLに2をかけて2倍でした。では、数直線上の1から[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]へ行くには何倍でしょうか?
⋯そうです、1dLに[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]をかけるので、[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]倍です。
1から⇒2へ ⋯ 1×2 ⋯2倍
1から⇒[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]へ ⋯ 1×[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH] ⋯[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]倍
では、最初の問題に戻り、[MATH]\(\frac{4}{5}\)[/MATH]㎡を何倍にすれば[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]dLのペンキで塗れる面積が出るでしょうか?
⋯そうです、ペンキと同様に面積も[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]倍で、
[MATH]\(\frac{4}{5}\)[/MATH]㎡×[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]=[MATH]\(\frac{4}{15}\)[/MATH]㎡
となります。
このように、数直線では「割合」の考え方をもとにすることで、式がイメージしやすくなります。
2. 面積図:単位分数いくつ分?
面積図は、「単位分数」の考え方を身に付けるのに有効です。
左側の面積図が基準で、「1dLあたり[MATH]\(\frac{4}{5}\)[/MATH]㎡塗れる」を表しています。
この図からわかるのが、「[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]が4つ」ということです。
[MATH]\(\frac{4}{5}\)[/MATH]㎡ ⋯ [MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]㎡が4つ分
▼
単位分数[[MATH]\(\frac{1}{5}\)[/MATH]]4つ分
ここで最初の問題に戻り、右側の面積図で表します。ペンキ[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]dLでは、1dLで塗れる面積を3等分した1つ分が塗れることになります。
これは、3等分した線でできた最小単位(黒く塗りつぶした四角)=[MATH]\(\frac{1}{15}\)[/MATH](単位分数)が4つです。
式と言葉で表すと、
[MATH]\(\frac{4}{5}\)[/MATH]㎡×[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH] は、[MATH]\(\frac{1}{5×3}\)[/MATH] ㎡が4つ分
▼
単位分数[[MATH]\(\frac{1}{15}\)[/MATH]]4つ分
となります。
このように、面積図は「単位分数いくつ分」という考え方を身に付けるのに役立ちます。
3. 関係図:関係性から立式する
関係図は言葉どおり、「式の関係性」について理解するのに役立ちます。
図の矢印の左側が基準となり、「1dLあたり[MATH]\(\frac{4}{5}\)[/MATH]㎡塗れる」を表しています。
右側は最初の問題の、「[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]dLでは何㎡塗れるか?」を表しています。
ここで、1dLから⇒[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]dLに注目すると、[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]倍であることがわかります。
このように、この図によって、[MATH]\(\frac{4}{5}\)[/MATH]×[MATH]\(\frac{1}{3}\)[/MATH]という式の関係性が見やすくなります。
3つの図に共通するのは⋯基準の「1」のとき!
さて、この3つの図ですが、別々に考えてしまうと難しく感じますよね。
そこで、基準となる数字を見極めるのがポイントとなります。
分数×分数は、いつも「1のとき」が基準です。
どの図も「1のときの何倍か?」と考えると、「数の計算」だけではなく、「なぜその計算になるのか?=式の成り立ち」をイメージすることにつなげることができます。
「1」を基準にするときは「かけ算」!
みなさんの授業づくりのお役に立てたら嬉しいです!
数多くの練習問題を解くことで計算の「正確性」を高めることはできますが、これからも役立つ「算数的な理解力」を身に付けるためには、式の成り立ちを考える力が大切ですね。教師自身がしっかり理解して伝えられれば、計算が苦手な子も算数の面白さに目覚めることができるかもしれません。高学年の算数は難しくなってきますが、トモ先生と一緒にみなさんも基本を大切にした授業づくりをしてみませんか?
トモ先生の「ちょこっと学習指導要領」全3回で学習指導要領の軸となるテーマを押さえましょう!
●Part1『主体的な学び』編 ⇒ 学習指導要領のポイント①『主体的な学び』は5ステップ!
●Part2『対話的な学び』編 ⇒ 学習指導要領のポイント②『対話的な学び』のポイントは3つ!
●Part3『深い学び』編 ⇒ 学習指導要領のポイント③『深い学び』のキーワードはコレ!
髙橋朋彦●1983年千葉県生まれ。第55回わたしの教育記録特別賞を受賞。教育サークル「スイッチオン」「バラスーシ研究会」に所属。共著に『授業の腕をあげるちょこっとスキル』『学級づくりに自信がもてるちょこっとスキル』(共に、明治図書出版)がある。算数と学級経営を中心に研究中。
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