信頼をつかみ連携につなげる!保護者対応術
保護者の信頼をつかみ、連携につなげる対応術を、連絡帳、電話連絡、授業参観、保護者会、個人面談、家庭訪問、クレーム対応別に解説します。
執筆/千葉県公立小学校教頭・藤木美智代
目次
「連絡帳」には子供のよい行いを積極的に書こう
毎日連絡帳を書いていますか? 明日の用意だけを書くのではもったいないと思いませんか? 毎日の出来事を保護者に知らせるという目的で、「ひとこと日記」を書かせるのはどうでしょう。授業や行事のこと、ときにはテーマを出すこともできます。時間に余裕のあるときや、励ましや返答が必要な子には、花丸だけでなく先生からのコメントも入れます。
また、保護者からも励ましのコメントを書いていただくようにお願いします。すると、連絡帳が子供、先生、保護者、3者の会話になります。「学校での出来事が、連絡帳のひとこと日記のおかげでよく分かります」「夕食のときに、学校の話題がしょっちゅう出てきます」という保護者からの声も聞くことができるでしょう。
得てして連絡帳には、困ったこと、よくないお知らせを書いて伝えがちですが、よい行いをした、がんばったなど、うれしいお知らせも欠かさずに書きたいものです。緊急なことや重大なことは早いほうがよいので、電話をおすすめしますが、うれしいお知らせは連絡帳がよいと思います。子供自身も見て喜びます。遅くに帰ってきた保護者が見て癒やされることもあるでしょう。
クラス全員にまんべんなく書いてあげるようにしたいものです。特に課題を抱えている子には、他の子には当たり前であっても、ほんの少しの成長を知らせてあげるだけで保護者はうれしいものなのです。
文字はいつでもていねいに書くようにします。日ごろから子供たちにていねいに書くように指導している先生が、雑な文字では示しがつきません。文字は心を表します。ていねいな文字ならば誠意が伝わります。忙しくても心を込めて書きましょう。
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緊急や重大なことはすぐに「電話連絡」を!
「緊急なこと重大なことは早いほうがよいので、電話をおすすめします」と前述しました。もしも電話するかしないか迷うことがあったら、「電話する」ほうを選びましょう。
電話は苦手なので、連絡帳に逃げてしまうということはありませんか。管理職にも相談できるし、こちらの言いたいことも自由に書けるのが連絡帳の利点ではあります。
しかし、私は今までに電話をしなくて後悔したことは何度もありますが、電話をして後悔したことは一度もありません。ちょっと面倒でも、もめ事や苦情になる前に、こちらからたった一本電話を入れるだけで、円満解決する事例が多いのです。
私が電話をする基準は次の通りです。
- 泣きながら帰った
- 怪我をした、怪我をさせた
- 物を壊した、壊された
- 物がなくなった、物を隠した
子供が泣きながら家に帰るようなときは、家に着く前に、学校でどんなことが起き、どんなことを指導したのか、一報を入れるようにします。子供は自分の都合のいいように話し、それを聞き捨てならないと思う保護者から電話がかかってきます。そうして放課後の多くの時間を取られることになるのです。迷わずに一報を入れましょう。日中は仕事をしているから出ないだろうと思っても、電話をして、着信記録を残すことが大事なのです。返信も期待できますし、何より早期対応したいという事実を残すことができるからです。
けんかや怪我、いじめに発展しそうなことなど、相手がいる場合は、双方に連絡が必要です。被害者の保護者にはいたらなかったことを詫び、今後同じようなことがないよう気を付けることを宣言します。加害者の保護者は、たいてい相手に謝りたいと言ってくれるので、電話番号を教えてよいかを被害者の保護者に聞いてから、電話番号を伝えます。これで、保護者同士が話をする機会を設定することができます。
また、保護者からの問い合わせや苦情には、言葉を吟味して、誠意を込めて話さなければなりません。話す前に、学年主任や管理職に簡単なシナリオを見てもらうなど、慎重に返答しましょう。メモを取りながら聞き、何かあったときには、指導の軌跡として提示できるようにしておきます。
「授業参観」では見どころやほめポイントを示そう
授業参観では、どのようなことをねらい、どのように授業が展開されているかを保護者に分かっていただければ、とても実りのあるものになります。
私は、授業参観の流れと見どころが分かるように、簡単な保護者向け指導案を作成します。これを教室の入り口に置いておき、1部ずつ取っていただきます。きょうだいがいる場合は、複数の教室を行き来することになりますが、そんなときにも、授業のどのあたりを参観すればよいかが分かります。
また、どんなねらいで授業が進められているのかが分かれば、家に帰ってからほめてあげる観点が保護者にも伝わります。挙手して発表することだけでなく、他にもほめポイントを明記しておけば、子供のがんばりを見てもらえるのです。例えば、先生の話をきちんと聞いているか、友達と仲よく進んで話し合っているか、そんな場面も保護者に見ていただきたいところです。
指導案に感想用紙を付けて、保護者の声に耳を傾けよう
前出の保護者向け指導案の最後に、授業を参観しての感想用紙を一緒に綴じておきます。「できればお名前を」と記し、無記名でもよいことにします。最後に、「ありがとうございました。励みになります」と記しておきます。
大体の方は、よかったことを書いてくれますが、ときには批判もあります。それは反省材料としてありがたくいただきます。感想をいただくことで、今後の授業参観の参考になることは間違いありません。辛いことを書いていただいたときこそ、授業力アップのために改善を図るチャンスです。
「保護者会」ではなごやかな話合いができる場をつくろう
保護者会に出席する方は、たいてい緊張気味で硬い表情をしています。そこで、最初に心ほぐしのミニゲームを行うことをおすすめします。子供たちと楽しんでいるゲームを少し大人向けにアレンジして行うのです。子供たちとこんなふうに楽しんでいるのだということも分かっていただけますし、保護者の表情が柔らかくなります。みんなを笑顔にしてから始めると、保護者会もなごやかになります。
保護者会が近くなったら、事前にどんなことを話し合いたいかアンケートを取り、テーマを周知しておくとよいでしょう。きっと自分事として話合いに参加してくれることでしょう。
保護者会は、保護者が仲よく懇談し、連携することがめあてですから、たくさん話ができる場をつくることが大切です。子供たちのアクティブ・ラーニングのように、保護者にも、4〜5人のグループになって、同じテーマについて話をしてもらいます。和気あいあいと懇談でき、たくさん話すことで満足感も味わえます。あらかじめ、司会者、発表者を決め、司会者を中心に話し合い、最後に発表してもらうようにするとよいでしょう。
「個人面談」ではささやかな心づかいを大切に!
ほんのささやかなことですが、同じ高さの机を4つ並べ、テーブルクロスをかけます。机と机の隙間が隠され、保護者との隔たりがなくなります。他にも、花を飾ったり、冷暖房で室温調節をしたりすることも大切。教室の掃除、整理整頓も必須です。
「辛口でいきます? 甘口でいきます?」
本題に入る前に、冗談半分でこんな質問をしてみましょう。保護者が、どのような心構えで来校しているかが分かります。なんでもびしびし言ってほしいと思っているか、お手柔らかにしてほしいと思っているかによって、多少言い方を変えることができます。
「家庭訪問」は歩いて回ろう!
訪問の前に教室に大きな学区地図を貼り、子供たちに自分の家の場所に、名前を書いたシールを貼ってもらいます。それを基にルートを考えます。不安があるなら、放課後や休日にルートの下見をして、訪問予定時刻に遅れないようにします。
必ず歩いて回ること。危険箇所や地域を知るには歩くのが一番です。路上駐車で違反切符を切られでもしたら大変です。
家庭訪問を希望されない家庭でも、家の確認は必要です。確認したことを手紙にしてポストインしておきましょう。
「クレーム対応」は毅然とブレずに冷静に
担任時代に「うちの子は、『きみ』とか『あなた』と呼ばれるのが嫌いです。名前で呼んでください」というクレームがありました。
それに対して、私は、「なるべく名前で呼ぶようにします。しかし、これから社会に出ていけば、『きみ』とか『あなた』と呼ばれることは多々あることでしょう。その都度、『そう呼ばないでほしい』と言うより、今のうちに『きみ』とか『あなた』と呼ばれることを受け入れていけるように、おうちでお子さんと話し合ってみてください」と返答しました。
保護者も我々教師も「すべては子供たちのために」という思いは同じです。そこを間違えなければ、保護者と分かり合えるはずです。
教育法規を知っておこう
特別の支援を要する子に対して「隣の子が勉強のじゃまをするので、席を替えてくれ」というものがありました。
そこで、今は可能な限り障害のある者と障害のない者がともに教育を受けられる仕組みが整えられ、「障害者差別解消法」が施行されました。差別的な取り扱いは禁止となったということを、きちんと保護者に伝えましょう。
子供たちを守るためにも、自らを守るためにも教育法規を知っておくことが大切です。法に守られていることが多々あります。感情ではなく、法規に則った返答が有効です。
イラスト/浅羽ピピ
『教育技術小一小二』2021年4/5月号より