色カードで意思表示しやすくする|樋口綾香のGIGAスクールICT活用術②
Instagramでは1万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生による人気連載! 今回は、ICT活用のしかけの一つ、どの授業でも簡単にできる「色」を使った意思表示についてお伝えします。
執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香
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目次
意図的にしかけを散りばめる
国語の読みの授業では、導入で初発の感想を書かせることがよくあります。
初発の感想をもつことや、交流することは、これからの授業の方向性を児童と共通理解しながら進めていく上で大変重要です。
しかし、すべての単元計画が児童の感想で決まるというわけではありません。指導目標や、授業者の意図も大切な要素です。
児童にどんな力をつけたいかを十分に考えた上で、児童の思考が自然に流れるように、導入の授業に意図的にしかけを散りばめていきます。
そのしかけの一つに、「色カードで意思表示」というものがあります。
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『初雪のふる日』の導入で
光村図書の4年生の教科書に『初雪のふる日』(安房直子)という作品があります。
ファンタジー作品ですが、同じ4年生で学習する温かでさわやかな作品 『白いぼうし』(あまんきみこ)とは違い、背筋がゾッと寒くなるような、登場人物が恐ろしい体験をするお話です。
単元の計画として、読者が感じる「不思議さ」や「怖さ」の根源を、児童が読み味わう授業をしたいと考えました。そして、自分が理解し、感じたことをレポートにして発表するという単元計画を立てました。
この単元計画に沿って授業をしたいと考えたとき、まずは児童がこの作品を「不思議だな」「怖いな」と感じていなければいけません。あるいは、「自分はおもしろいと感じたけれど、他の子は『不思議』や『怖い』と思っている子が多いのだな」と知ることが重要です。
そこで色カードを使いました。
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色に意味をもたせる
上のような「ひとこと感想シート」をあらかじめ作っておき、児童に配布します。
児童は『初雪のふる日』の範読後、すぐにカードを選んで提出します。
児童からは、「2枚提出してもいいですか?」と質問が出ました。「いいよ」と伝えると、多くの児童が「不思議」と「怖い」の2枚のカードを提出していました。
「ひとこと感想」という提出箱を開けると、次のようになっていました。
「不思議」と「怖い」が多いことが一目瞭然です。
すべてのカードを白いカードにしてしまうと、提出箱を開けても一目瞭然とはいきません。
ここで、児童にこの作品の特徴を印象付けることができます。直感で提出できるので、誰もが自分の考えを発することができるのもよい点です。
色カードの良さはこれだけではありません。
自分の立場を決めて対話を促す
提出箱を全員で確認したあとは、なぜ「不思議」や「怖い」と思ったのかを交流します。交流の指示を出さなくても、すでに話合いを始めている子もいるでしょう。
自分の立場を明らかにすること、それに対して友達が同じ立場や違う立場であることがはっきりと示されていることで、相手の考えを聞きたくなるのです。
軽く対話をした後は、理由をノートに書くように指示し、書き終わったところでさらに全体交流をしました。
色カードは汎用的!
色カードは他にも色々なところで活躍します。
例えば、1場面から4場面の物語があったとして、「どの場面がいちばん心に残りましたか?」と問い、色分けした場面カードを提出させます。
提出されたカードに偏りがあれば、「なぜみんなは○場面が心に残ったのだろう」と考えるきっかけになり、山場や人物の変容を捉える読みの授業へとつながります。
道徳の授業では、「あなたならどうする?」という発問がよくあります。答えを「A」「B」の2択にして色カードで意思表示させ、その理由を交流するということもできます。
テキストカードにたくさんの文字を入力して交流することは、あまり効率的ではありません。文章を読むことに時間が取られ、深い話合いが生まれにくくなるのです。
ICTを効果的に活用するアイデアの一つ「色カードで意思表示」を、ぜひ試してみてください。
樋口 綾香
ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書出版)ほか。編著・共著多数。
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