「合理的配慮」とは?【知っておきたい教育用語】
「合理的配慮」とは、障害のある人がない人と同じように自らの権利を行使できるようにするための必要かつ適当な配慮を指します。教育においては、特別支援学校から通常の学級までのすべての場で提供されることが必要です。
執筆/上越教育大学教授・河合康

目次
教育における新しい重要な概念
「合理的配慮」は、2006年12月13日に国連で採択された「障害者権利条約」(日本は2007年に署名、2014年に批准)の中で用いられている新しい重要な概念です。条約の第2条で「合理的配慮」とは、「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享受し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合に必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されています。
第24条において教育に関する規定がなされていますが、「合理的配慮」についても、同条第2項で、「個人に必要とされる合理的配慮が提供されること」と明示されています。ここからも、条約全体の原則である「合理的配慮」が教育においても重要な概念であることがわかります。
日本では2009年の閣議決定により、「障がい者制度改革推進本部」が設置され、この本部が、「障害者の権利条約」の締結に必要な国内法の整備をはじめとする日本の障害者に関する制度の改革について検討しました。この本部の下に設けられた「障がい者制度改革推進会議」(以下、「会議」)は、2010年に「障害者制度改革の推進のための基本的な方向」と題する意見を公表しています。
また、2018年度から実施されている「第4次障害者基本計画」(内閣府)においても、すべての学校における特別支援教育の充実が提起されています。
インクルーシブ教育のキーワード
「会議」の意見を踏まえて、2011年に「障害者基本法」が改正されました。その中の第4条において、障害を理由とした差別の禁止と「合理的配慮」に関する規定がみられます。教育に関しては第16条に規定されていますが、その第1項で、障害のある子どもとない子どもが共に教育を受けられるようにすることを明示しています。
文部科学省は「会議」の意見を受けて、2010年に中央教育審議会の初等中央教育分科会に「特別支援教育に関する特別委員会」を設置しました。そして同委員会は、2012年7月に「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」(以下「報告」)をまとめました。
「報告」において「合理的配慮」はキーワードとなっており、「合理的配慮」とは、障害のある子どもが「教育を受ける権利」を確保するために、「学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要とされるもの」で、「学校の設置者及び学校に対して、体制面、財政面において、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されています。
そして、「合理的配慮」の基礎となるものを「基礎的環境整備」と呼び、その推進を図ることが重要であるとし、国や自治体はその推進のために財源を確保し、必要な施策を講じることを求めています。