働きながら教師を目指す!【民間企業から教師転職のリアル】

民間企業で社会人経験を積んだ後、教師として新たな道を切り開いた谷口大樹先生。教師になるべく、仕事と両立しながら必死に勉強した日々を振り返り、社会人だからこそ試験で活きたスキルなどがあると話します。

執筆/東京都公立小学校教諭・谷口大樹

photo by green-chameleon

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働きながらの勉強法「教員資格認定試験」編

私は教員免許をもっていなかったので、まさにゼロから教師を目指しました。家族をもつ自分は現実路線で考え、仕事を継続しながら教師を目指す方法を考えました。通信制の大学では教育実習などで長期間休む必要があるため、教育実習の必要のない教員資格認定試験で免許を取ることを目標に勉強を始めました。

これから述べることは、私の当時の状況で、現在は変わっている可能性があります。しかし、他業種で働きながら教職を目指そうと思っている人にとって、参考になる部分があるかもしれないので、当時考えた私の戦略をシェアしたいと思います。

限られた時間の中で効率よく学習するには戦略が必要

勉強の戦略を練るにも、当時はインターネットの情報は少なく、関連する書籍は1冊しか見つけられませんでした。「小学校教員資格認定試験対策本」(オクムラ書店)という本と、文部科学省のホームページの過去問を研究しました。

第1次試験

教員資格認定試験の第1次試験は教職教養と各科目(6科目)でした。限られた時間の中で効率よく学習する戦略を考えました。教科に関しては「学習指導要領のページ数が少ない科目が有利」と考え、6科目は音楽、図工、体育、家庭科、生活、理科を選びました。

第2次試験

教科の記述式の問題でした。最もページ数の少ない家庭科を選択しました。そして、過去に一度も出ていない箇所に狙いを定め、ひたすら勉強しました。通勤電車、休憩時間、土日などは当たり前。ポケットには常に学習指導要領の覚えたい部分のコピーを入れ、エレベータを待つ時間、出張先の移動時間にも勉強しました。

実技試験

音楽、図画工作、体育から2教科選択をする実技試験は、音楽と体育を選びました。音楽はピアノの弾き語りでしたので、格安のキーボードを買って練習しました。楽譜は自由だったので一番簡単そうなものを選びました。「新・音楽の授業づくり」という本です。本番はピアノですので、2回ほど近くの公民館でピアノの部屋を借りて練習しました。

体育はインターネットの掲示板でどんなことがでるかを調べました。 マット、バスケットのシュート、サッカーのリフティングと知り、近所の公園などで必死に練習しました。マットは家の布団で練習しました。

口述試験

これは一般的な内容でした。インターネットに情報が多かったので、考えられそうな質問に対して、全て答えを考えました。そして、自分で質問し、答える練習を繰り返しました。

指導の実践に関する事項に係る試験

第2次試験に合格すると、受けられる試験です。
私の時には、東京学芸大学附属小学校に行き、

  • 現役の先生の授業を見る
  • 見た授業がどのような指導案だったかを考えてまとめる
  • 今日学んだことのレポート
  • グループでの話し合い

という内容でした。情報がほとんどなく、何を対策すればいいのか全くわからない状態で望みましたが、今振り返ると教育実習の「簡易版」のような位置づけだったのではないかと思います。

働きながらの勉強法「教員採用試験(東京)」編

「社会人経験者」の枠で受けました。 試験の中で、対策しておいてよかったこと、特に印象に残っていることを書きたいと思います。

論文


論文対策は一人で練習するのは難しかったので、東京アカデミーの論文対策講座で学習しました。これは非常に有効でした。過去出題されたテーマ、テーマが出される背景、論文の用紙のマス目、字の大きさなど、情報は武器になります。 

そこで講師の先生が教えてくださった言葉で今でも影響受けているのは、「悩んで考えているときに力がつく」という言葉です。

当初、論文を1つ書くのに1週間以上かかりました。こんな調子で試験に臨めるのだろうかと焦りがありました。 しかし、4ヶ月間毎日書き続け、最終的には試験時間内に1つ書く力が付きました。

論文は型を決めることが大切です。例えば「社会背景、自分の問題認識、具体的な策(2つ)、まとめ」という流れです。 過去に出された問題に対してとにかく書き、予備校の講師の先生に添削していただくトレーニングを繰り返しました。

それだけ練習を繰り返したのにも関わらず、当日の試験は「命の尊重」がテーマで、一度も練習したことのないテーマでした。実は過去に出ていたので、「二度と出ないだろう」と予想していたのです。

かなり慌てましたが、練習を繰り返した成果もあって、何とか書き切り、合格することができました。二次の面接も対策講座で学習しました。これも非常にためになりました。

試験はどんな流れなのか、過去にどんなことが問われたのか、何秒で説明するように指示されるのか。という情報がわかりました。

個人面接

聞かれた質問はネットや書籍にのっていた一般的な内容でした。面接官は合計3人でした。印象に残っている質問は

面接官「あなたは小さいお子さんもいるから、休みの日は子供の面倒を見てほしいと奥さんから言われるでしょう。でも学校からは地域のイベントに参加してほしいと言われるかもしれません。そしたらどうしますか?」

「家族と一緒に行きます」

面接官「あはは、それは最高だね!」

というやりとりでした。今振り返るとこの質問には正答がありません。 家庭を優先するか、学校を優先するかなど、そもそも比較できない問題です。どちらも大切に決まっています。

だからこそ回答に受験者の教育観や人柄が出ます。きっとそれを見られていたのだなと感じました。

集団面接

最初に自分の作成した指導案について説明をしました。「学び合いの観点で説明」「自主的な学習という観点で説明」 など、観点に応じて説明することが求められました。

私は面接対策講座で過去問われた内容については全て答えを考え、時間内にぴったり収まるように練習しました。当日も練習した中から聞かれたのでほとんど慌てることがありませんでした。

自分以外の方はこれが全くできていませんでした。 聞いていて「何も事前に準備しなかったんだな」と感じました。

集団面接の討論では、与えられた観点で「どんな指導をしていくのか、チームとしての結論を出す」というものでした。

私は自分から話を切り出し、場の仕切り役を務めました。そして、「ではグループの結論は~~ということでよいですか?」と結論をまとめようとしたところ、メンバーから「いや、もう少し考えたほうがよいのではないですか?」と反対されました。

そこで柔軟に「そうですか。どのことについてもう少し考えたほうがよさそうですか?」と相手を尊重する態度を示しました。このようなコミュニケーションスキルが評価されたのではないかと感じています。

社会人を経験して得たスキル

相手の意見を聞き、自分の考えをしっかり伝え、親和的に話合いを進行し、時間内に結論を出す。実はこれは民間企業では誰もがやっている「根回し、調整」でかなり鍛えられています。

異なるミッションの組織や価値観をもつ人と協力し、期限内に仕事が進むように調整してきた社会人だからこそ鍛えられるコミュニケーションスキルです。例えば新しいことを始めたいとき、決裁権者(例えば組織長)から承認されただけでは絶対に進みません。

現場のキーマンの理解を得るために、粘り強く交渉し、やっと施策が進みます。学校は校長先生の力が大きく、真面目な人が多いので、民間企業よりは組織長が承認するとことが進みやすいです。

しかし、現場の不満は溜まります。何か施策を始めるとき、特に先生方に負担のかかる可能性があるときは、気を使って「根回し、調整」をしなくてはいけないのです。

これは新卒から学校で働いてきた教師は意外に身につけていないスキルだと、私は現場で感じています。だからあまり新しい施策を打ち出したり、実現したりすることができないのです。

民間企業で働いて身につけたコミュニケーションスキルをもって、学校の新しいチャレンジをリードし、新しい協力先を開拓したりすることを「社会人経験者」には期待されていると思います。

もちろん、最初は指導技術や教科に関する知識は同年代の教師に劣ります。しかし、最初だけです。公的な研修でも「4年目までは経験とともに教師の力量は上がる。しかしそれ以降は本人の努力次第。」と言われたことがあります。

「社会人」を経験した私たちは、新卒で教師になった方が経験したくてもできない貴重な経験とスキルを既に得ています。自信をもって教師の道に挑んでほしいと思います。

谷口大樹(たにぐち・だいき)●N T Tコミュニケーションズに9年勤務後、転職し、現在教職6年目。前職で学んだ思考術や仕事術を生かした教師の働き方、「わかる、できる」ということにこだわった授業づくりなどを、ツイッター@Tamagoyaki_1324などで発信している。

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