国語の構造的板書⑤ ~考えを整理する~
連載|ayaya先生のすてきやん通信
Instagramでは1万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生の人気連載! 今回は、考えを整理する国語の「構造的板書」の紹介です。
執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香
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■国語の構造的板書① ~子どもの気づきを引き出す~
■国語の構造的板書② ~二段対応表で比較する~
■国語の構造的板書③ ~逆Yチャートで考えを広げる~
■国語の構造的板書④ ~イメージマップで考えを広げる~
目次
情報を整理し全体を捉える
今回は、考えを整理する構造的板書について、お話しします。
物語文や説明文の中にある情報を取り出して整理し、関連付けることで全体を捉えることができるようにする、板書の構造化です。
「ちいちゃんのかげおくり」光村図書三年
「ちいちゃんのかげおくり」は、物語の中で何十年という時が経過します。そのため、時を表す言葉を見つけながら、丁寧に場面の出来事を読むことが、ちいちゃんの心情を考える上で大変重要になります。
しかし、時を表す言葉のすべてが分かりやすく書かれているわけではありません。児童が言葉に着目し、整理することを支援できるワークシートを準備します。さらに、全体を俯瞰して見ることで、気づきが生まれる板書を構成します。
ワークシートと対応させる
ワークシートがあるなら、板書はいらないと思われる方もいるかもしれません。しかし、子どもが手元で作成したワークシートを板書に取り入れると、考えはさらに整理され、思考は活性化します。自然と場面の移り変わりを捉えながら場面同士を比較する視点をもつため、深く考えようとする児童に出会えます。
学習の流れは次の通りです。
①「お話の3要素は何かな」と伝える。
ワークシートに情報を整理するための観点をもたせます。
②「お話を時・場所・人物の3観点で整理しましょう」と投げかけ、1場面のみをいっしょに整理し、板書する。
まず、音読し、時・場所・人物を見つけたらサイドラインを引くように指示します。2場面からは自分たちでできるように、手順を伝えていきます。
「時を表す言葉」は、一日の中での時間、季節だけでなく、何かをする前の日、次の日という表現や、情景描写からも読み取ることができます。小さな気づきも児童との交流の中で価値づけて、児童が詳細な読みをできるように声かけをしていきます。
③2~5場面の整理は、児童がグループで取り組む。
一人で取り組むよりも、グループで取り組んだほうが安心して取り組めます。この表を作成するために、議論が生まれているグループもたくさんありました。
例えば、場所が「家→暗い橋の下→家」となっているところでは、「戻ってきている!」と気づいたり、「4場面のお父さん、お母さん、お兄ちゃんはそのまま書いていいのか。ちいちゃんは会えたと思っているけど、お父さんは出征していて、ここにいるはずはないし…」と話していたり。
私は、グループの活動の様子を見守りながら、「よく気づいているね!」と詳細に読もうとする姿をほめたり、「本当だ。1場面に出てきた登場人物とは区別したいね。★マークをつけて、分かるようにしたら?」と伝えたりしました。この助言が、あとの交流でも生きてきます。
①~③までで1時間の授業です。
④ワークシートに整理した内容を発表し、全体の構成を把握する。
グループでワークシートを作成していたので、授業のスタートは、3分ほどの時間をとって、他の班と交流しました。少人数で自分の班の気づきを伝え合うことを通して、自信をつけ、全体交流の際、活発に意見がでるようにします。
⑤整理した板書を見ながら、気づいたことをノートに書く。
この活動が重要です。全体を俯瞰して気づきを促す発問(「場面を比べて、つながっているところはどんなところかな?」など)をすることで、思考がさらに深まります。
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ワークシートと対応した板書のよさ
⑤の深める発問のあとは、ワークシートに書き込んだ内容を根拠にして、気づいたことを発表します。根拠がすぐ横の表に整理されていることから、発表内容を板書しつつ、その根拠も色チョークで示していくことができます。
どの意見とどの場面がつながっているのかを視覚化できるので、児童は場面を整理しながら作品の全体を理解していきます。本単元の目標である「場面の移り変わりを読む」につながる視点を自然と養うことができるでしょう。
このように、情報を整理するワークシートを板書と対応させることで、教材の構造を把握する手立てとなったり、児童と読みの方向性を共有することができます。
ワークシートと対応した構造的板書例
次回は、初発の感想を整理する構造的板書について、お話しします。
「板書」の基本もチェック!
■「板書」の基本① ~見やすい文字の書き方~
■「板書」の基本② ~低学年の板書のポイント~
■「板書」の基本③ ~児童の意見を広げるポイント 前編~
■「板書」の基本④ ~児童の意見を広げるポイント 後編~
樋口 綾香
ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書出版)ほか。編著・共著多数。