学ぶ意欲を刺激する!小1「授業開きアイデア」
学級開きが終わったら、次にやってくるのが「授業開き」。好奇心旺盛な低学年の子供たち、最初の授業で心をつかみ、学びに向かう姿勢をつくりたいものです。学ぶ意欲を刺激する授業開きのアイデアを教科別に紹介します。
執筆/東京都公立小学校教諭・松村英治
まつむら・えいじ。1988年愛知県生まれ。生活科やスタートカリキュラムの充実に向け た実践提言や研修講師を多数務める。著書に『学びに向かって突き進む! 1年生を育てる』 (東洋館出版社)など。
目次
子供のわくわく感が膨らむ授業開きに!
年度の始まりは、どの学年でもわくわくドキドキするものですが、入学という節目を迎える一年生、初めてのクラス替えをする二年生は、なおさら期待感と緊張感でいっぱいです。ドキドキが安心感に変わる授業開き、わくわく感がもっと膨らむ授業開きにしたいものです。
一年生は、幼児期の教育との接続を意識することが大切です。声を出したり歌を歌ったり、体を動かしたりしながら、遊びを通した 総合的な学びから小学校での自覚的な学びへとつなぎます。
二年生は、一年生で経験したことを引き出して、それを土台としながら新しいクラスでの学びを子供と一緒につくることを意識するとよいでしょう。これまでの経験を生かすことができると、安心して学習や生活に臨むことができます。
【小1国語】楽しく夢中になれる平仮名の学習を!
入学したばかりの子供は、平仮名を学習することに憧れや期待感を抱いています。だから、どんな学習のしかたであっても、平仮名の1文字目はきっと大盛り上がり。
しかし、50文字も学習していると、だんだんマンネリ化して飽きてきてしまうものです。そこで、次の3つの工夫を取り入れて、最後まで楽しく夢中になれる平仮名の学習にしていきましょう。
①学習する順序や提示のしかたの吟味
平仮名の教材を購入すると、画数が少なく取り組みやすい順序で並んでいることが多いものです。しかし、子供にとっては、その順序に必然性があまりありません。
また、今日学習する平仮名が提示され、「どこに気を付けたらいいかな?」と尋ねられたとき、比べる対象があるとポイントに気付きやすいものです。そこで、子供がその平仮名のポイントを考えたくなる2文字を意図的に選び、それらを同時に提示してみましょう。
例えば、「し」と「つ」。2文字を比べることで、はらうのは同じだけど向きが違う、どちらも使わない部屋がある、などの気付きが生まれるはずです。他にも、「め」と「ぬ」、「い」と「に」などもおもしろそうですね。毎回ではなくても、時々こういった学習を入れると変化が生まれます。
②体のさまざまな部分を使っての練習
多くの教室では、「空書き」の方法がよく活用されているはずです。利き手の人差し指を出して、目の前の何もない空間に文字を大きく書く。一年生にとって、とても楽しい活動です。
この空書きをもうひと工夫して、体のいろいろなところを使って書いてみましょう。顔で書く、おへそで書く、お尻で書くなどすれば、子供たちは大喜びで何度もその文字を練習することができます。ちょっとした変化を加えながら繰り返し行うことで定着を図ります。
③ノリノリで「ひらがなやのおみせ」
その日に学習する平仮名から始まる言葉を集める「言葉集め」。これは、リズムに乗ってノリノリで行いましょう。園の遊びで恒例の「やおやのおみせ」。これを「ひらがなやのおみせ」と替え歌にします。ここでは、「し」から始まる言葉を例に説明します。
【全員】
「ひらがなやの おみせに並んだ しなもの見てごらん よく見てごらん 考えてごらん♪」
→歌いながら言葉を思い付いた人は挙手をします。教師は教室を回り、挙手をしている子供におもちゃのマイクを渡します
【マイクを渡された子供】
「しまうま♪」
【全員】
「しまうま♪」
【マイクを渡された子供】
「しまうま♪」
【全員】
「馬」「しま模様」「走るのが速い」「白と黒」
→「しまうま」という言葉から連想されることを、全員で同時に言います
【全員】
「あーあーあーあー♪」
声を揃えて4拍伸ばしたあとは、はじめに戻って時間のある限り繰り返していきます。裏打ちの手拍子もあると、よりリズム感が出て楽しい雰囲気が倍増するはずです。
【小1算数】自由な発想を伝え合い算数に近付けていく
一年生の算数の最初の単元は、いろいろな観点や条件に応じて集合を作ったり、数の読み方や書き方を学んだりするものです。多くの教科書では、この単元のはじめの見開きにはいろいろな動物がいろいろな行動をとっている場面が掲載されています。このページを授業化する際のポイントを、授業の流れに沿って紹介します。
①「あそびタイム」の写真を見て話し合う
入学して1か月程度はスタートカリキュラムの一環として、朝の支度を終えてから朝の会開始までの時間を少し長めにとります。これを「あそびタイム」と名付け、自由遊びを楽しむ時間にします。その様子を写真に撮っておき、算数の最初の授業で提示します。
はじめは「僕が写っているよ」「○○ちゃんがいる」などの声が飛び交うかもしれませんが、そのうちに「お絵描きをしている子は6人」「教室の前のほうに4人が集まっているよ」のような、算数の考え方に基づく発言も出てくるはずです。それを意図的に取り上げていくと、写真を算数の目で見るようになっていきます。
②教科書の絵を見て気付いたことを出し合う
写真を算数の目で見ることへの興味・関心が高まったところで、教科書を開いて最初の見開きの絵を見てみます。このときも「ウサギがいるよ」「こっちはクマだよ」と、はじめは算数とは関係のない声が上がると思いますが、無理に算数に引っ張ろうとせず、子供の気付きを楽しみながら待つようにします。
そうすれば、「キツネが5匹いるよ」「待って!こっちにも2匹いるから、合わせて7匹だと思う」と、必ず算数のほうへ寄っていきます。なぜなら、教科書の絵はそれを意図して作成されているからです。
自由な発想を伝え合いながら、ねらいに即した発言を上手に取り上げ、算数の授業での学びを少しずつ自覚できるようにしていきます。
③教科書の絵からペアでクイズを出し合う
何の動物が何匹いる、何をしている動物が何匹いるなどのことに意識が向いてきたら、教師から「ランドセルを背負っているヒツジは何匹いるでしょうか?」などとクイズを出します。
これを数回繰り返したところで、「今のクイズ大会をお隣さんと交替しながら行ってみよう。じゃんけんで勝った人からクイズをつくって出してみよう」と投げかけます。
クイズという遊びに限りなく近い楽しい活動を何度も行いながら、いろいろな観点や条件に応じて集合を作ることに慣れ親しめるようにします。
④身の回りの具体物で集合づくりをする
教室の中を見渡せば、机、筆箱、ランドセルなど、集合づくりができるものがたくさんあります。「お隣さんと一緒に、教室の中のもので仲間づくりをしてみよう」と投げかけます。「いくつの仲間ができたか数えておいてね」と付け加えると、さらにやる気が出るかもしれません。
ひとしきり盛り上がったところで、クラス全体で発表し合う活動に移します「黒板消しは、前に2個と後ろに1個です」などの発言に対して、「今、話してくれたことを自分でも確かめてみて」と全体に返し、一人ひとりが数える機会を繰り返しつくることを大切にします。
紹介する実践は、文部科学省国立教育政策研究所教育課程研究センター『発達や学びをつなぐスタートカリキュラム:スタートカリキュラム導入・実践の手引き』(学事出版)、松村英治・寳來生志子『育ちと学びを豊かにつなぐ小学1年スタートカリキュラム&活動アイデア』(明治図書出版)等を参考にしています。
「発達や学びをつなぐスタートカリキュラム:スタートカリキュラム導入・実践の手引き」は、一部写真が掲載されていないWEB版(PDF)を、文部科学省のHPからダウンロードできます。
イラスト/山本郁子
『教育技術 小一小二』2020年4/5月号より