あなたはあなたのままで—自分への思いやりを育む授業―(総論)【ストレスフリーの教室をめざして #43】

昨日まで楽しそうに学校生活を送っていた子が、ある日突然学校に来なくなってしまった……。背景は一人ひとり異なりますが、なかには自分に厳しすぎてしまい、心が消耗してしまう子もいます。きっかけや原因は本人でさえ分からず、気持ちは学校にいきたいけれどからだが動かない。こんな子たちは、もしかすると「失敗しないように」「ちゃんとしなきゃ」と、自分に対して必要以上に厳しくしてしまっているかもしれません。こうしたときに必要なのは、自分自身へ思いやりを向ける力です。
そこで今回からは、自分への思いやりを向ける力を育む授業について、「総論」「低学年編」「中学年編」「高学年編」の4回にわたってお届けします。
執筆/埼玉県公立小学校教諭・春日智稀
目次
自分への思いやりとは?
学校ではよく、「思いやりの心をもちましょう」という声かけがされるかと思います。ここでの思いやりとは、ほとんどが自分ではない他者に向けられているのではないでしょうか。もちろん他者への思いやりも大切ですが、それと同じくらい自分自身へ向ける思いやりも大切です。
定義は様々ありますが、心理学の研究において自分への思いやりは「セルフ・コンパッション」と呼ばれています。アメリカの心理学者であるクリスティーン・ネフは自身の研究において、セルフ・コンパッションの要素を次の3つにまとめています。
①自分へのやさしさ:自分をいたわる言葉を自分自身にかけること
②共通の人間性:苦しい思いをしているのは自分だけではないととらえること
③マインドフルネス:今の自分の気持ちに気づき、そのまま受け止めること
関連する研究では、セルフ・コンパッションの高まりは学習への内的動機づけを高めたり、現実をあるがままに受け入れやすくなったりする傾向があることが分かっています。つまり、自分への思いやりを向ける力を育むことは、子どもの学校生活への適応を促進する可能性があると言えるでしょう。
どうして自分への思いやりが必要?―がんばりすぎる子どもとがんばりを求める教師―
その場の雰囲気や求められる内容に対して、自分の持てる力を超えて順応しようとしてしまうことを過剰適応と呼びます。私たち大人も、あまりにも自分の力量に見合わない仕事を要求されたり、雰囲気的にアウェイな状況にさらされ続けたりするとしんどいですよね。子どももこれと同じで、あまりにも高すぎる課題やなじめない環境に何とか順応しようとした結果過剰適応状態になってしまい、バーンアウト(燃え尽き症候群)を起こしてしまうことがあります。いわゆるがんばりすぎた状態です。
一方で私たち教師は、よかれと思ってつい子どもに「がんばること」を求めてしまいがちです。もちろん子どもの成長を願うことは教師にとって何よりも大切な姿勢の一つですが、それが過剰になっていないか? という視点をもつことはとても重要です。たとえば、結果のみで評価してその過程が目に入らなかったり、よくできる子ばかりに肯定的な声掛けをしてしまったりしていないでしょうか。こうした環境のもとで過ごす子どもたちのあいだには、「がんばれない自分には価値がない」という雰囲気が漂ってしまい、「もっとやらなきゃ!」「まだ足りない!」という焦りや切迫感につながってしまいます。少しずつ少しずつ、心が疲れていってしまうのです。
