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小5道徳科 仕事におけるやりがい「父の仕事」

特集
文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」
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文部科学省教科調査官監修による、小5道徳科の指導アイデアです。今回は、C【勤労、公共の精神】「父の仕事」の実践を紹介します。
本実践は「仕事のやりがい」を主題に、子供たちの将来や生き方にダイレクトにつながるリアリティのある問いを生かすために、ICTや専用のノートを使用した授業です。子供たちが多様な価値観を知ったり、自分の価値観に気付いたりすることで、自らの将来やこれからの生き方を考える授業を目指します。

子供たちが、集団生活の充実のために、集団の一員として自分の役割を果たすこととはどういうことなのかを、教材の登場人物の生き方を通して考えを深めていくことを目指した授業です。また、ICTを活用して、子供が自己調整しながら学びを進めたり、他者と協働しながら学びを深めたりしています。

執筆/鹿児島県公立小学校教諭・深美陽市
監修/文部科学省教科調査官・堀田竜次
 鹿児島県公立小学校校長
 鹿児島県小学校道徳教育研究会会長・永里智広

1 はじめに

果たして道徳科は子供たちのためになっているのか? 国語や算数、体育や音楽などの他教科と同等の「ためになる」や「意味のある」学びを提供できているだろうか? 少し乱暴な問いかもしれませんが、立ち止まって考える価値のある問いだと思います。

かつてのイメージも影響して、多くの保護者を含む世間からは、「道徳ってどんなことをしているのか分からない」「分かりきったことを言うだけですよね」といった声が聞かれます。昨年度、実際に保護者から直接言われた言葉がこれでした。

今回は、成果や変容が見えにくく、理解の広まりにくい道徳科のねらいをしっかりと押さえつつ、それでもなお、子供たちの将来や生き方にダイレクトにつながる「ためになる」や「意味のある」授業実践を紹介します。

小5道徳科 仕事におけるやりがい「父の仕事」 父の仕事

2 展開の概略

タブレットを使って選択・共有・議論

仕事には、収入を得るだけではなく、社会を支えるという役割があり、仕事によって得られる充実感について考えることが、この授業のねらいです。そこで私は、「仕事におけるやりがい」をこの授業の主題名にしました。だからと言って、「仕事はお金を得るためだけにするんじゃないよ。やりがいが大切なんだよ!」なんて教師が力説しても、説得力に欠け、子供たちの心に響くはずもありません。リアルに将来の仕事について考える中で、「やりがい」の大切さへの理解を深められるように、以下のようにタブレットを活用し、ロイロノートを使用しました。 

小5道徳科 仕事におけるやりがい「父の仕事」 図1 仕事を選ぶときの6つの条件
図1 仕事を選ぶときの6つの条件

ただ、「やりがい」は将来の仕事を選ぶうえでの1つの条件に過ぎません。導入では、「やりがい」を含む6つの条件を提示し、子供が大切だと思うものを2つ選ぶことができるようにしました。また、友達の考えや全体の傾向を全員が知ることができるようにするために、選んだ条件を提出箱に提出し、みんなで共有できるようにしました。

小5道徳科 仕事におけるやりがい「父の仕事」 図2 提出箱
図2 提出箱(これは終末時の画面です)

導入で条件を選んだ後、教材を通した学びを行い、終末にもう一度条件を選び直すという流れにしました。導入時に選んだものか、終末時に選んだものかが一目で分かるように、導入で出すカードは白色、終末で出すカードはピンク色と色分けをして、子供たちに送りました。図2は終末時の提出箱です。

小5道徳科 仕事におけるやりがい「父の仕事」 図3 子供たちに送るスライド
図3 子供たちに送るスライド

導入では個人の考えで条件を選びます。その後、教材「父の仕事」という話で、仕事に対する多様な考え方や「やりがい」について共通の学びを行います。その学びを踏まえて、もう一度個人で条件を選び直します。教材による学びの後なので、選ぶ条件が変わることもありますし、変わらなくても新たな考え方を獲得しているため、そこでの議論の内容は深まることが期待されます。

全員共通で「やりがい」について学ぶとともに、個人としては今の自分の仕事を選ぶ条件を明確にするというねらいがあります。このようにして、多様な考え方に触れたうえで、自分自身の考えを明確にもつことが、道徳科の学びであり、子供たちの将来や生き方にダイレクトにつながっていきます。

変容の見えるノート

道徳科において「書く活動」は重要です。私の授業では、図4のような専用のノートを使っています。日本文教出版の教科書には付属のノートがありますが、そのノートのデータをもとに作り変えて使用しています。毎時間、印刷して配付し、授業後に付属のノートに貼るようにしています。

このノートの特徴は大きく3つあります。①子供たちの考えの変容が見取りやすい、②みんなが書きやすい、③準備に時間がかからないということです。

小5道徳科 仕事におけるやりがい「父の仕事」 図4 変容の見えるノート
図4 変容の見えるノート

私の授業では必ず「めあて」を立てます。この授業で解決したいこと、考えたいことを「めあて」とし、それを立てたらすぐに、自分なりの考えを記入します。これを、教材を通した共通の学びの前に書くため、「学習前の考え」と呼んでいます。教材を通した学びの後、終末でもう一度「めあて」について考え、自分の考えを書きます。これを「学習後の考え」と呼びます。この「学習前」と「学習後」の考えを書く欄を隣同士に並べることで、子供たちの考えの変容が見取りやすくなっています。 
  
5mm方眼のノートに自分なりの考えや図、絵がびっしり……。そんなノートを見たことがあります。子供たちが思うままに、自分の考えが書けるのが理想です。ただ、すべての子供たちがそのように書けるわけではありませんし、最初から書ける子供はさらに少ないと思います。図4のノートであれば、書く欄が決まっていて、数回使用すれば見通しが立ちます。みんなが安心して、抵抗感少なく書くことができるため、誰にとっても書きやすいノートと言えます。

このノートで授業ごとに変わるのは教材名と日付、そして、上段にある発問だけです。この形式であれば、どの授業にも使うことができますし、書く量を調節することで、中学年でも使用可能です。印刷・配付の手間はありますが、それでも準備に時間や労力はそれほどかからないと言えます。

3 実際の授業の展開

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