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「社会的養護」とは?【知っておきたい教育用語】

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【みんなの教育用語】教育分野の用語をわかりやすく解説!【毎週月曜更新】
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総務省(PDF)「社会的養護に関する調査-里親委託を中心として- 結果報告書」によると、日本全国で「社会的養護」下にいる子どもは、全国で約42,000人を数えるとされています(令和3年度末時点)。今回は、社会的養護の仕組みや基盤、その支援などについて解説していきます。

執筆/「みんなの教育技術」用語解説プロジェクトチーム

社会的養護とは

【社会的養護】
保護者がいない子どもや、虐待や経済的な理由などから保護者のもとで暮らせない子どもを公的責任で養育すること。養育に困難を抱える家庭への支援も含まれる。

こども家庭庁では、社会的養護の基本理念として「こどもの最善の利益のために」と「社会全体でこどもを育む」ことを掲げ、以下の原理を示しています。(一部を抜粋して紹介します。)

①家庭療育と個別化
②発達の保障と自立支援
③回復をめざした支援
④家庭との連携・協働
⑤継続的支援と連携アプローチ
⑥ライフサイクルを見通した支援

社会的養護は、全ての子どもが安全な環境で安心して自分を委ねられる養育者によって養育されるべきであるという考えを前提とし、子どもの健全な心身の発達や自立した社会生活に向けた基礎的な力の形成をめざします。また、虐待などで心身に悪影響を受けた子どもには、専門的ケアや心理的ケアによって周囲の人々との信頼関係や自尊心を取り戻せるよう支援を行います。

社会的養護の基盤と子どもたちの自立について

社会的養護下の子どもたちは、児童養護施設や乳児院などの施設のほか、里親のもとやファミリーホーム(養育里親経験者などの経験豊富な養育者が家庭に子どもを迎え入れる事業)で暮らしています。

社会的養護の基盤づくりとして、以下のことをめざしています。

〇家庭養育優先原則に基づき、家庭での養育が困難又は適当でない場合は、養育者の家庭にこどもを迎え入れて養育を行う里親やファミリーホーム(家庭養護)を優先するとともに、児童養護施設、乳児院等の施設についても、できる限り小規模かつ地域分散化された家庭的な養育環境の形態(家庭的養護)に変えていく。

〇大規模な施設での養育を中心とした形態から、一人一人のこどもをきめ細かく育み、親子を総合的に支援していけるよう、ハード・ソフトともに変革していく。

〇施設は、社会的養護の地域の拠点として、家庭に戻ったこどもへの継続的なフォロー、里親支援、自立支援やアフターケア、地域の子育て家庭への支援など、高機能化及び多機能化・機能転換を図る。

〇ソーシャルワークとケアワークを適切に組み合わせ、家庭を総合的に支援する仕組みづくりが必要。

こども家庭庁(PDF)「社会的養育の推進に向けて」こども家庭庁支援局家庭福祉課、令和7年10月

里親のもとや施設で育った子どもたちは、高校卒業後、経済的・精神的に自立して社会生活を送ることになります。なお里親のもとで養育された子どものうち、大学等への進学は39.7%、専修学校等への進学が18.2%、就職が30.3%です。児童養護施設で養育された子どもは、大学等への進学が24.2%、専修学校等への進学が17.2%、就職が48.7%となっています(令和6年5月1日現在)。全高卒者の大学等への進学率が57.9%であるため、全体的に大学等への進学率が低い状況にあります。

進学を選択しない主な要因として、進学にかかる経済的な負担、それに伴うアルバイトと学業の両立などにかかる精神的・体力的な負担などが挙げられます。2020年から開始された「高等教育の修学支援新制度」では、社会的養護下の子どもたちも場合によって、授業料等減免や給付型奨学金の支給を受けられるようになりましたが、学生生活にかかる費用は自ら賄う必要があるため、依然として大きな負担となっています。

社会的養護と自立支援

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