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1年を笑顔で締めくくる「がんばった思い出ベスト10」|俵原流!子供を笑顔にする学級づくり #9

連載
俵原流!子供を笑顔にする学級づくり

兵庫県公立小学校元校長

俵原正仁
連載 俵原流!子供を笑顔にする学級づくり バナー

子供の笑顔を育てる「笑育」という実践のもと、安全で明るい学校、学級をつくってきた俵原正仁先生。これまで培ってきた学級づくりのアイデアやメソッドを、ユーモアを交えつつ、新任の先生にも分かりやすく解説します。月1回公開。

執筆/元・兵庫県公立小学校校長・俵原正仁

はじめに

今年もいよいよラスト1か月となりました。12月に入ると、子供たちも「今年もあと少し!」という空気を感じながら、学習や生活のまとめを意識して取り組みます。さらに、終業式が近付くにつれて、クリスマスやお正月といった行事を前に気持ちも高まり、教室全体がそわそわした雰囲気に包まれます。そんな高揚感に満ちた12月だからこそ、ここまでの歩みを振り返り、新しい年へのステップにつなげる時間が大切になります。

今回は、子供たちが「達成感」と「次の年への期待」を感じながら、気持ちよく新年を迎えられる「終業式」特別メニューを紹介します。ぜひ、お試しください。

終業式「がんばった思い出ベスト10」結果はっぴょ~~~う!

その特別メニューとは、ズバリ、終業式に「子供たちががんばった思い出を発表する」というものです。ポイントは2つあります。

1つ目は、「アンケートの集約」と「ランキング発表」を別の日に行うこと。時間をおくことで、発表の日に特別感が生まれます。

2つ目は、「楽しかった思い出」ではなく「がんばった思い出」をテーマにすることです。クラス全体で“がんばり”を共有することで、次の挑戦へのエネルギーが生まれます。例えば、漢字練習に粘り強く取り組んだ経験は、計算練習など他の学習場面でも「あきらめずに続ける力」として生かされるということです。もちろん「楽しかった思い出」を取り上げてはいけないわけではありません。「楽しかった思い出ベスト10」を並行して発表するのもおすすめです。

-終業式当日-

大型モニターを使って、「〇〇年 がんばった思い出ベスト10」第3位を発表する男性教師

お待たせしました。それでは、いよいよベスト3の発表です。第3位、33ポイント……47都道府県完全制覇!

場を盛り上げるため、順位のポイント数を先に読み上げ、少し間を置いてから項目名を発表します。この時、ドラムロールや効果音を使うと、さらに盛り上がります。

子供たちから歓声が上がりました。

俺も、これ3位にしていた。

私は1位にしていたんだけど。ゲーム形式にして楽しかったし。

少しざわついた教室を、教師が静かに整えます。

みんな、楽しみながら、都道府県の勉強ができていましたね。それでは、続いて第2位の発表です。

子供たちの目が、モニターに集中します。

第2位、60ポイント……創作劇「その後のごんぎつね」!

そうそう、これ。 めちゃくちゃ練習もしたし、おうちの人も感動してくれたよね。

これ、1位だと思ってた〜!

子供たちのざわめきが少しずつ落ち着きます。そしていよいよ、1位の発表です。

第1位、81ポイント。今年のがんばった思い出ベスト10、栄えある第1位は……

子供たちから「がんばったこと」をアンケートで集め、整理・集約して発表する――たったそれだけの取り組みですが、子供たちのワクワク感を高め、次への意欲につなげるためには、教師のちょっとした一手間や工夫が欠かせません。そこで、次は、当日に至るまでの取り組みを、終業式から少し過去に戻ってお話しさせていただきます。

終業式までに、これだけは……

終業式当日に行なうのは「結果発表」だけ。実際の投票はそれまでに実施しておきます。多くのクラスでは、11月末から12月初めにかけて個人懇談会や通知表作成の参考として「2学期の振り返り」を書かせることが多いと思います。そのタイミングに合わせて投票を行うのがベストです。

ただ、その前に準備しておきたい大切なステップがあります。

エントリー項目の決定です。

「がんばったことを書きましょう」という漠然とした指示だけでは、子供たちの回答が散らばってしまい、結果として第8位が10個以上並ぶといった事態になりかねません。また、何を書いていいのか分からない子が出てくることもあります。そこで、まずはエントリー項目をみんなで出し合い、確認しておくことが必要なのです。

子供たちに問いかけます。

今日は、2学期にがんばったことを振り返ります。みんなは、どんなことをがんばりましたか?

多くの手が挙がります。

運動会のリレーをがんばりました。

私も運動会だけど、リレーじゃなくてダンスかな。家でも練習していたんだよ。

紅組が勝てて嬉しかった。応援もがんばったよね。

どうしても2学期最大の行事である運動会に話題が集中してしまいます。回答がばらけすぎるのも困りますが、一点集中になるのも避けたいところです。がんばったことは他にもたくさんあるはずです。そこで教師は、運動会以外のがんばりが出てくるように声かけを行います。

そうですね。みんな、運動会は本当によくがんばりましたね。でも、他にもがんばったことがいろいろあると思いますよ。

すると、次々と意見が出てきます。

音読大会をがんばりました。

割り算の計算が速くなった。

教師はさらに話題を広げます。

漢字テストで100点を取りたくて、一生懸命練習した。

2学期は、勉強もがんばりましたよね。理科や社会ではどうですか?

地図帳の地名さがし、楽しかったし、がんばった。

初めて理科室で勉強した時の実験で、火をつけるときドキドキしたけどがんばった。

多くの子供は「がんばったこと」と聞かれると「大きな行事」や「印象的な挑戦」を答えがちです。ですが、日常にある“ちょっとしたがんばり”を子供自身に自覚させることも教師のねらいの1つです。

「教室のグッピーの餌やりを毎日しました」――このような意見です。もしこのような意見が出たら、思いっきりほめましょう。出てこない場合は、教師が例を示してもかまいません。

例えば、図工室に行くときに自分のイスを机に入れていたとか、次の時間の準備をしてから遊びに行ったとか、掃除場所に素早く行ったとか、そんなことはありませんか?

こうした例を挙げることで、当たり前のように続けている日常の努力にも価値があると気付かせることができます。さらに、教師としては3学期や次年度に意識させたいことを、教師が「そういえば、こんなこともがんばったよね?」と自然に例示することで、エントリー項目に組み込んでいきます(結果発表を「ベスト3」ではなく「ベスト10」にしているのも、このような小さながんばりをランクインさせて全体で発表したいからです)。

こうして出てきた意見と、教師が意図的に加えた項目を合わせて一覧を作り、「がんばった思い出のエントリー項目」としてクラスで決定します。

アンケート用紙に記入する男子。1位はやっぱり運動会のリレーだな。

時間に余裕がない場合は、そのまま、手元にある紙に記入して投票させてもいいですが、可能であればエントリー項目をアンケート用紙にまとめ、後日改めて記入・回収することをおすすめします。アンケート用紙を作成する際、出なかった項目もつけ加えることができるからですいずれの場合も、次のような声かけを行ないます。

「集計結果は、終業式の日に発表します!お楽しみに!」

これだけで、子供たちのワクワク度がぐっと高まります。

集めたアンケートは、「1位=3ポイント」「2位=2ポイント」「3位=1ポイント」で集計し、クラス全体の「がんばった思い出ベスト10」を作成します。

そして、いよいよ終業式当日を迎える……という流れになります。

また、投票のあとに「1位は何だと思う?」と子供たちに予想させておくと、発表への集中力がぐんと高まります「自分の予想は当たるかな?」という視点が加わることで、聞く姿勢が明らかに変わります。

お楽しみ会「全部当たるまで帰れま10!」

また、この「がんばった思い出ベスト10」は、お楽しみ会のプログラムに取り入れることもできます。比較的、時間に余裕がある場合は、ただ担任が順位を読み上げるだけでなく、子供たちが参加できるゲーム形式にしてしまうのです。

私が行った方法は、その名も――「○○年 がんばったこと 全部当てるまで帰れま10!」 。テレビ番組『帰れマンデー見っけ隊!!』(テレビ朝日系)の人気コーナー「帰れま10」をアレンジしたものです。

教師「それでは、今から『4年1組帰れま10』を始めます。いぇ~~い!」
子供「いぇ~~い!」

 教師のかけ声に子供たちも応えます。

教師「今日のテーマは、この間、みんなが投票した『2学期がんばったこと』です。今から、班ごとでベスト10に入っていると思うがんばったことを予想して発表してもらいます。まずは相談タイムです。他の班と被ってもいいように3つぐらい候補を考えてください。時間は5分です」

番組のように1人ずつではなく、班ごとに相談して回答します。班内での交流が生まれ、協力して挑戦する雰囲気が高まります。この時、子供たちの話し合いがスムーズに進むように、エントリー項目が書かれたプリントを配っておきます(拡大コピーして、黒板に貼っておくのもOK)。

時間が来たら、1班から順番に指名していきます。

教師「では、1班から発表してください」
1班「運動会のダンス!」
教師「運動会のダンス!…………第1位!」

番組同様、少しためをつくって結果を発表します。
1班「やった~!」
歓声が上がります。

教師「そうですよね。これはさすがに入りますよね。では、2班、どうぞ」
2班「フラッグフット」
教師「フラッグフット…………ブー!」
2班「あ~~~っ」
今度は、ため息です。

教師「フラッグフットは12位でした。先生も8位ぐらいに入っていると思ったんだけどね。次、3班どうぞ!」

発表していない班も自然と耳を傾け、クラス全体が1つになって盛り上がります。自分のがんばりを振り返りながら、友達の努力にも目を向けることで、教室に互いを認め合う温かな空気が生まれてきます。

おわりに

結果発表の後は、ぜひ次のような声かけをしてみてください。

「今日、ランキングに入ったもの以外にも、2学期にはたくさんのがんばりがありました。来年もきっと多くのがんばる姿を見ることができると先生は思っています。3学期は、どんなことをがんばってみたいですか?」

このように、振り返りを「未来への約束」に変えることで、子供たちの意識は自然と前向きになります。さらに、新学期の始まりに、2学期のがんばりを土台にして「新年のがんばり宣言」として個人目標を立てれば、2学期の努力が確かな基盤となり、学期のスタートが引き締まります

そのうえで、今回の結果を学級通信に載せて保護者にも共有してください。子供たちのがんばりを家庭と分かち合うことで、家庭での会話も広がり、取り組みの効果が一層高まります

次回予告

次回は、「3学期にやるべき次年度に向けての必須事項」について解説します。お楽しみに。


俵原正仁先生

俵原正仁(たわらはら・まさひと)●兵庫県公立小学校元校長。2025年3月に定年退職後、芦屋市を中心に教師の力量向上のための学校支援相談員として活動中。座右の銘は、「ゴールはハッピーエンドに決まっている」。著書に『プロ教師のクラスがうまくいく「叱らない」指導術 』(学陽書房)、『なぜかクラスがうまくいく教師のちょっとした習慣』(学陽書房)、『スペシャリスト直伝! 全員をひきつける「話し方」の極意 』(明治図書出版)など多数。

俵原正仁先生執筆!校長におすすめの講話文例集↓

俵原正仁先生執筆!校長におすすめの学校経営術↓

【俵原正仁先生の著書】
プロ教師のクラスがうまくいく「叱らない」指導術(学陽書房)
スペシャリスト直伝! 全員をひきつける「話し方」の極意(明治図書出版)
若い教師のための1年生が絶対こっちを向く指導(学陽書房)

イラスト/イラストAC

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