11月危機を乗り越えるために!~崩壊フラグを見抜き、へし折る|俵原流!子供を笑顔にする学級づくり #7


子供の笑顔を育てる「笑育」という実践のもと、安全で明るい学校、学級をつくってきた俵原正仁先生。これまで培ってきた学級づくりのアイデアやメソッドを、ユーモアを交えつつ、新任の先生にも分かりやすく解説します。月1回公開。
執筆/元・兵庫県公立小学校元校長・俵原正仁
目次
はじめに
学級崩壊には起こりやすい月があると言われています。「魔の6月」「11月危機」「2月レインメーカーショック*」の3つの月です。その中でも、実際に学級崩壊が起こってしまうと、一番大きなダメージが残ってしまうのが11月です。
6月の場合、後1か月ほどで夏休みが始まります。夏休みになれば、学級も1か月強の休眠状態に入ります。教師が自己変革を行い、学級を立て直すための準備もしっかりと行うことができます。教師も子供たちもいったんリセットした上で、2学期の始業式を迎えることができるので、6月の場合、V字回復することができる確率は11月よりもかなり高くなります。
また、2月の場合は、残り1か月しかありませんのでV字回復は難しくても、「現状維持をよし」と割り切ることで、気持ちに余裕ができ、状況をそれ以上悪化させることなく、何とか乗り切ることができます。3月になれば、学校全体が、卒業式・修了式と1年の総まとめといった雰囲気になるため、子供たちの荒れが少し収まることも一因です。
11月の場合、V字回復するためのまとまったリセット期間はありません。かと言って、現状維持で乗り切るには、4か月は長すぎます。V字回復どころか、残り4か月、右肩下がりでさらに状況が悪化していくことも珍しくありません。
そして、何よりも、11月の学級崩壊のV字回復が難しい理由に、11月の学級崩壊が6月のそれよりも子供たちの教師に対する不満が大きいということが挙げられます。1学期、何とか我慢していたものが、夏休みを過ぎても状況が変わらず不満がさらに溜まっていき、そして、我慢できなくなり、ついに11月に爆発する……。それだけ、根が深いということです。
ただ、いくら学級崩壊が起こりやすい月だと言っても、11月のある日を境に突然学級が崩れることはありません。少しずつクラスの荒れが進行していき、ある時、一気に崩壊するのです。
言い換えれば、ちょっとした荒れの段階で気付き、対応することができれば、学級崩壊を未然に防ぐことができるということです。この「ちょっとした荒れ」や「荒れの前兆」を私は、「崩壊フラグ」と呼んでいます。
大切なのが10月の学級づくりです。勝負は10月にかかっています。
*「2月レインメーカーショック」…実は、2月に起こる学級崩壊の一般的な二つ名はありません。2月に起きた衝撃的なショックと言えば、「レインメーカーショック」だろうと言うことで、俵原だけが提唱しているものです(笑)。レインメーカーショックとは、2012年2月12日、弱冠24歳の“レインメーカー”ことオカダ・カズチカが戦前の予想を覆して、新日本プロレスのエース・棚橋弘至からIWGPヘビー級王座を奪取したこと。ファンの間では大事件として語り草になっています。
「崩壊フラグ」……こんなところに立っています
多くの教室を見ていると、次のような風景に出合うことがあります。日常のありふれた風景かもしれません。でも、この中に崩壊フラグが立っているのです。
朝の会。日直が号令をかける。
「朝の挨拶をします。立ってください」
ガタガタッと椅子を引きずる音が聞こえる。まだ起立していない子が数人いるが、日直は気にとめた様子もなく、続ける。
日直「おはようございます」
一同「おはようございます」
少し気だるい感じで声が続く。教師は、自分の机で宿題をチェックしている。
このケースの場合、「朝のあいさつがダラダラしている」というのが、崩壊フラグにあたります。担任もこの状態が決してベストだとは考えていません。ただ、あえて注意をすることでクラスの雰囲気を悪くすることはないと考えているのです。しかし、このようなことが続くと、じわじわと学級は崩れていきます。「起立することは全員ができるはずなのに、していない子がいた」ことを、教師がスルーしていることによって、「みんながやっていることでも、したくなかったらやらなくてもいい」ということを暗に教えていることになるからです。もちろん、教師にそのようなつもりはありませんが、一部の子供たちの意識は安易な方向に流れていき、学級の雰囲気が悪くなっていくのです。