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小4国語科「一つの花」板書例&全時間の指導アイデア

特集
文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」
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文部科学省教科調査官の監修のもと、小4国語科「一つの花」(東京書籍)の板書例、発問例、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した全時間の授業実践例を紹介します。

小四 国語科 教材名:一つの花(東京書籍・新しい国語 四上)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/熊本大学大学院教育学研究科准教授・北川雅浩
執筆/熊本大学教育学部附属小学校・溝上剛道

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、物語の題名や繰り返し使われる言葉などに着目し、登場人物の気持ちの変化や性格、情景について、場面の移り変わりと結び付けて具体的に想像する力を育てます。
また、題名の意味を考える過程で、これまでの読書経験と関連付けながら、言葉には考えたことや思ったことを表す働きがあることに気付けるようにします。さらに、対話を通して、他者の感じ方、考え方と比較しながら、自分の考えをまとめ直していけるようにしていきます。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

三人称客観視点の文章からどう気持ちを想像し、「題名の意味」へとつなげる

言語活動を設定する上で、「一つの花」の特色と身に付けたい資質・能力の関係にふれておきます。
本教材の特徴の一つに、どの人物にも寄り添わず、客観的な立場から語られていることが挙げられます(=三人称客観視点)。そのため読者も、ゆみ子一家を外から「見る」体験をすることになります。いわゆる「異化体験」です。

しかし、客観視点で語られているということは、登場人物の気持ちが直接的には描かれません。

既習教材「走れ」では、「体がどんどん重くなる。」「次のしゅん間、体にからみついていたいろんな思いが、するするとほどけていった。」など、中心人物のぶよに寄り添って描かれた地の文や、(がんばって走らなきゃ。)(わたしだって本当は……。)等の心内語など、気持ちの変化を捉える手がかりがたくさんありました(=三人称限定視点)。

それに対して、「一つの花」の話者は一貫してどの人物にも寄り添わず、客観的な立場から語っています。(例:お母さんは、戦争に行くお父さんに、ゆみ子の泣き顔を見せたくなかったのでしょうか。)
そのため、「走れ」よりも、登場人物に「なる」体験(=同化体験)がしづらいという特性があります。

では、そうした特性をもつ「一つの花」で、人物の気持ちを想像するには、どんな言葉に着目し、どのように考えることが求められるのでしょうか。
また、教科書では「題名の意味について考え、伝え合う」が言語活動として設定されていますが、どうすれば「気持ちを想像すること」を「題名の意味について考えること」へとつなげられるでしょうか。

教科書例示の言語活動にプラスα 〜○○にとっての『一つの花』〜

「題名の意味について考える」=「作品の主題を捉える」と考えると、4年生の子供たちにとってはやや抽象度が高い活動になることが予想されます。
学習指導要領でも物語の全体像を捉えることについては高学年の指導事項とされており、あくまでも中学年段階における「登場人物の気持ちの変化や性格、情景について、場面の移り変わりと結び付けて具体的に想像する」ための活動として「題名の意味について考えること」を位置付けるべきでしょう。
ただし、前述したように、本作品は三人称客観視点で描かれており、地の文から人物の気持ちが想像しづらい特性をもっている点に留意することも必要です。

そこで、本単元では「○○にとっての『一つの花』」を考えることを中心的な言語活動として設定することを提案します。
この活動は、基本的には教科書例示の「題名の意味を考えること」をベースとしていますが、それを「ゆみ子にとっての『一つの花』」「父にとっての『一つの花』」「母にとっての『一つの花』」「ゆみ子一家にとっての『一つの花』」のように、それぞれの人物の立場から考えるようにしています。
それぞれの人物にとって「一つの花」がどんな意味をもつのかを考えるようにすることで、4年生段階の子供たちにとっても具体的に想像しやすい活動にしています。
そうすることで、作中に繰り返し出てくる「一つだけ」という言葉に着目し、人物の気持ちを場面の移り変わりと結び付けて想像する必然性も生まれます。

4. 指導のアイデア

⑴ 題名の意味への着目を促す【教材との出会い】の工夫

単元の導入では、その単元で何を学び、そのためにどんな活動に取り組むかの見通しをもてるようにすることが大切です。しかし、いきなり単元の学習課題や言語活動を示し、「この単元では〇〇を学びます。そのために、〜~という言語活動に取り組みます。」と語っても、学びの方向が教師から一方的に与えられたものになってしまいます。

教科書の扉ページの「見通す」には、「『一つの花』という題名から、どのような物語を想像しますか。」という問いかけが示されています。いわゆる「題名読み」を促す発問です。
私たちは本を手に取る時、題名から「どんな物語だろう」と想像を広げることが多いと思います。その体験を学習活動として仕組み、子供自らがそうした問題意識や見通しをもてるようにしたいものです。
その際、「一つの花」単体だと「一つの花が出てくるお話」のように内容の予想で終わってしまいがちですが、既習教材も想起したり、冒頭の「『一つだけちょうだい。』これがゆみ子のはっきり覚えた、最初の言葉でした。」も含めて提示したりすることで、「どうしてこれが初めて覚えた言葉なんだろう」「題名の『一つ』という言葉とも関係しているのかな」といった問いが、子供の側から立ち上がってくるでしょう。

⑵子供同士の対話をつなぐ【教師のファシリテート

子供たちは、「一つだけ」という言葉の意味や登場人物の気持ちを考える中で、互いに異なる解釈をもつようになります。ただ、思いをうまく言葉にできない子供や解釈の違いに戸惑う子供もいるでしょう。
こうした反応はネガティブなものではなく、むしろ子供たちの「当惑」や「ずれ」こそ、主体的・対話的で深い学びの出発点となります。
では、どのようにすれば、当惑やずれを「学びの起点」にすることができるでしょうか。私がそのファシリテートで大切にしているポイントをいくつか挙げます。

・手が挙がっていない子から考えや困りごとを聴
いきなり挙手した子から指名すると、考えがまとまった子たちの「発表会」になりがちです。まだ言葉にならない思いをもつ子供たちの「現在地」を聴くことから始めます。

・発言をリピートしたりまとめたりせず、他の子供の反応を待つ
教師が発言をリピートしたり言い換えたりしていると、次第に子供同士で「聴き合うこと」をしなくなります。他の子供が反応するのを「待つ」ことを大切にしたいものです。

・「沈黙」を恐れない
シーンと静まり返っても問題ありません。「今、何を考えていた?」と問いかけ、子供たちの現在地を確かめましょう。何も反応がない時は、「もう1回聴いてみようか」と投げかければ、聴くことへの意識がぐっと高まります。

・つぶやきを拾う
「ああ」「似ている」「確かに」「えっ」「でも」「だったら」など、子供たちの小さなつぶやきを丁寧に拾い、「『ああ』って、どんな気持ちだった?」などと問い直すことで、新たな対話の糸口を生み出します。

・叙述への立ち返りを促す
誰かが根拠となる叙述を挙げたときには、「今、どの文のことを言っていた?」と全体に問いかけ、本文と自分たちの読みをつなぎ直します。教科書を開いて読み返す姿も積極的に価値付けます。

・「何て書けばいい?」で立ち止まりを促す
「聴く」ことを促す手立ての発展版として、「黒板に何て書くといいかな?」と全員に問い返します。板書に残す言葉も、いつも教師だけで決めてしまうのではなく、子供と共に考えていくと、互いの考えを聴き合いながら、言葉への立ち止まりが生まれます。

このように、「聴く」「待つ」を基盤としたファシリテートを意図的に積み重ねていくことで、子供たちは少しずつ言葉をつなぎ、互いの読みをひらき合う学びの場をつくりだしていくでしょう。

⑶インプットとアウトプットを行き来する【学びのサイクル】

対話を通して、自分とは異なる読みや考えに出会うと、「分かったつもり」になることがあります。そこで、対話のあとには、中心となる言語活動「○○にとっての『一つの花』を考える」ことに立ち戻る時間を設けます。

言語活動を単元末のまとめとしてのみ取り組ませるのではなく、第二次で小刻みに表現の場を設けることで、「インプット」と「アウトプット」を行き来しながら、「自分は何に気付き、何にモヤモヤしているのか」を意識した学びのサイクルができていくでしょう。

5. 単元の展開(10時間扱い)

 単元名: 題名のもつ意味について考えよう〜 ○○にとっての「一つの花」〜

【主な学習活動】
・第一次(1時2時3時
① 既習教材と「一つの花」の題名を比較・分類し、題名のもつ意味について考える見通しをもつ。
② 全文を読んで内容の大体を捉え、初めの考えをもつ。
③ 初めの考えを共有し、学習の計画を立てる。〈 端末活用(1)〉

・第二次(4時5時6時7時8時〈 端末活用(2)〉
④ 第1場面を読み、口ぐせになってしまった「一つだけ」の意味を考え、母の気持ちを想像する。
⑤ 第2場面を読んで父・母からみたゆみ子にとっての「一つだけ」の意味を考え、両親の気持ちを想像する。
⑥⑦ 第3・4場面を読んで、それまでの「一つだけの○○」と「一つだけのお花」の違いを考え、それぞれの人物にとっての「一つの花」の意味を考える。
⑧ 第5場面を読み、10年の時を経て「一つの花」がどのような意味をもつようになったかを考える。

・第三次(9時10時
⑨ それぞれの人物にとって「一つの花」がもつ意味を再考し、考えを共有する。〈 端末活用(3)〉
⑩ 単元の学習を振り返り、日常生活の読書等でも題名の意味について考える見通しをもつ。

6. 全時間の板書例、発問例、児童の発言例

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例
題名から物語を想像し、初発の感想をもつ

本時では、既習教材の題名を分類・整理し、これまで学習してきたことを振り返ることからスタートします。実態によっては、教科書の挿絵をフラッシュカードのように示し、どんな物語を読んできたかを思い出す場面を取ってもよいでしょう。

これまで学習した物語には、どんな題名があったかな?

「スイミー」 

「大きなかぶ」

「モチモチの木」

それぞれ、物語の何が題名になっているんだろう?

イラスト/横井智美

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