子供たちといっしょに読みたい 今月の本#10 教科の学びを広げる本


連載10回目のテーマは、「教科の学びを広げる本」です。その教科が好きになる、その教科に興味がわくなど、教科への関心を高めるきっかけになるような本を紹介します。子供たちの1人読み、先生が読む、読み聞かせなど学級の実態に合わせてください。
監修/東京学芸大学附属小金井小学校司書・松岡みどり

目次
国語
国語のなかでも「詩」の単元は子供にとって分かりにくい学習かもしれません。物語を追いながら「詩」の楽しさや魅力につなげましょう。

『しじんのゆうびんやさん』
作/斉藤倫 画/牡丹靖佳
偕成社刊
小さな街の小さな郵便局で働く主人公のガイトーとトリノスは、一度も手紙をもらったことがないという灯台守のじいさんに、ガイトーが「手紙」を書き、トリノスが届けます。その手紙は「詩」でした。詩人の斉藤倫さんが描く物語。
松岡司書のおすすめポイント
物語の中の手紙にした詩は斎藤倫さんのオリジナルの詩です。物語としてもすてきなうえ、詩を味わうこともできます。詩の学習のときに読み聞かせをしてもよいし、1人読みもおすすめです。また、詩のエッセンスを借りて、手紙のやり取りをする活動を取り入れることで、子供が詩に興味をもつことにつながると思います。中・高学年向き。
算数
子供たちにとって、定規やコンパスを楽しみながら使うことができるかもしれません。子供にとってはハードルが高くなりますが、意欲的にチャレンジできます。

『誰でもできるコンパスと定規で描く「紋」UWAEMON』
著/波戸場承龍、波戸場耀次
彩図社刊
紋は、名字とは別に代々受け継がれてきた家の印のことです。すべてが円と線によって構成され、誰でも紋を描けるようになっていて、解説もあります。水戸黄門の印籠でおなじみの「徳川葵」、豊臣秀吉の「五七の桐」など全部で20の紋を掲載。
松岡司書のおすすめポイント
コンパスと定規だけで「紋」が描けるようになっています。円と直線だけで形ができる不思議さを知るのも形への興味につながります。小3からコンパスを使う授業が入ってきますので、子供たちには少し難しいかもしれませんが、チャレンジしてみてはいかがでしょう。図画工作の時間に「自分の紋をつくろう」というテーマを設定してもよいと思います。
理科・総合的な学習の時間
鳥の言葉を発見した動物言語学者のエッセイ。生き物への興味がわき、生き物が好きな子供たちだけでなく、興味がなかった子供たちの自由研究や自学にもつながります。

『僕には鳥の言葉がわかる』
著/鈴木俊貴
小学館刊
古代ギリシャ時代から現代に至るまで、言葉をもつのは人間だけであり、鳥は感情で鳴いているとしか認識されていませんでした。その「常識」を覆し、「シジュウカラが20以上の単語を組み合わせて文を作っている」ことを世界で初めて解明した研究者による科学エッセイ。動物学者を志したきっかけや鳥の言葉を科学的に解明するための実験方法などをつづります。
松岡司書のおすすめポイント
鳥の言葉を見付けるまでの研究を理科的な視点で読む、研究を進めていくうえでの探究のヒントとして読むなど、いろいろな視点で読むことができます。生物について学ぶときや探究の学習のときに紹介してはいかがでしょう。また、自分の「好き」を究めると研究者の道につながるかもしれないということが分かります。高学年向き。
社会
現在活躍している人のノンフィクション。「好き」を突き詰めて自分の職業にしている内容から、子供たちの生き方のヒントにもつながります。

『ブロックでなんでもつくる!ビルダーの頭の中』
文/三井淳平 イラスト/米村知倫
偕成社刊
レゴ®ブロックとの出合いは1歳のとき。学生の頃から作品制作と発表を続け、大学では「東大レゴ®部」を創部、そして日本初の「レゴ®認定プロビルダー」に! 設計図なしで、大きなものから小さなものまで何でも作る、ビルダーの頭の中が分かります。
松岡司書のおすすめポイント
伝記と言えば歴史的な偉人が一般的ですが、本書は今活躍している人の伝記と言えます。好きを突き詰めて仕事にして、会社を立ち上げ、社会とどのようにつながるかというノンフィクション。球体をつくるという算数的な要素やキャリア教育の要素もあり、算数や特別活動のときに紹介してもよいでしょう。
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松岡みどり司書からのメッセージ
今回紹介した本は、教科や単元に直接関わっているというわけではなく、本に触れることで、子供たちが教科を好きになったり、興味をもったりするきっかけになるとよいと思います。これらの本を読んで、国語や算数などいろいろな学習をするなかで、国語や算数などに関わる学びが広がるようにしてみてください。子供たちに手に取ってほしいのはもちろんのこと、先生方にもおすすめの本です。
読書や本の情報が満載
ウェブサイト「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」(東京学芸大学 学校図書館運営専門委員会)
https://www2.u-gakugei.ac.jp/~schoolib/htdocs/
取材・文・構成・撮影/浅原孝子
授業で使える312冊の絵本を紹介

著/齊藤和貴(京都女子大学教授)
司書教諭の経験を生かしながら、長年、学校現場で「絵本を活用した授業」を行ってきた元小学校教諭が、小学校の授業で使える絵本312冊を厳選。絵本を使った実際の授業が、板書や指導案、豊富な写真とともにオールカラーで具体的に紹介されていますので、授業の進め方がよく分かります。
B5判/112頁
ISBN9784098402212
〈著者プロフィール〉
齊藤和貴(さいとう かずたか)
京都女子大学発達教育学部准教授。元小学校教諭・司書教諭。東京都公立小学校及び東京学芸大学附属小金井小学校、附属世田谷小学校で28年間、教育活動や授業実践に取り組む。その間、生活科や総合的な学習の時間を中心に指導法やカリキュラム、評価方法の工夫・改善を図り、「子供とともにつくる授業」の創造に励む。また、司書教諭の経験を生かし、「絵本を活用した授業づくり」にも取り組んできた。