小4国語「スワンレイクのほとりで」京女式板書の技術

今回の教材は、「スワンレイクのほとりで」です。本単元では、「読んで考えたことを友達と伝え合おう」が学習活動になります。そのため、本時では、読んで心に残った言葉に着目するために、心に残った言葉の交流だけではなく、その意味付けを大切にした板書の工夫を紹介します。
監修/元京都女子大学教授
元同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教諭・酒井愛子
単元名:読んで考えたことを友達と伝え合おう
教材名:「スワンレイクのほとりで」(光村図書出版)
目次
単元の計画(全7時間)
- 学習の見通しをもつ。
- 物語の組み立てや物語の設定を確かめる。
- 心に残った言葉に着目して物語を読む。
- 登場人物の気持ちの変化について、観点を選んで考える。
- 物語の最後で登場人物が書こうとしていることは何かを、理由とともに考える。
- 考えたことを伝え合う。
- 学習を振り返る。
板書の基本
〇教材の扉に「読んで考えたことを友達に伝え合おう」という導きがあります。「読んで考えたこと」という学習内容は漠然としていますので、具体的に学習活動がイメージできるめあてが必要です。教材の内容は、登場人物である「歌」という少女がアメリカで体験したことが中心になっています。そこで「めあて」は「(読んで)心に残った言葉に着目する」ことにしました。
〇物語は「歌」の経験したことや「グレン」との交流によって、新しい世界を広げていく様が巧みに表現され、心に残る言葉で書かれています。板書を通して、登場人物である「歌」の経験したことを見通せるようにします。
〇物語は「げんこう用紙を広げて、えんぴつをにぎった。」ところから始まり、「そこまで書いたところで、手が止まってしまう。」までと「げんこう用紙のそばから、えんぴつを取り上げると、」というまでの長い文章を丁寧に読んでいく過程を板書で見やすく、分かりやすく整理していくことが大切だと考えました。
板書のコツ(3/7時間目前半)
板書のコツ①
日付、題名、作者名、めあて「心にのこった言葉に着目してお話を読もう。」を板書します。特に「心にのこった言葉」について選び方を補足し、1人学習をさせます。補足の内容は「様子が想像できる言葉や文」「いいなと思ったこと」などです。さらに「文章の横に線を引く」「書き込みをする」という具体的な学習方法を指示します(タブレット端末を活用すると見やすくなります)。
板書のコツ②
子供たちの印象に残った言葉を発表させる過程で場面に違いがあることに気付かせます。板書では、「現在(作文)」「グレンとの出会い」「現在」を示し、発言の位置付けをします。
板書のコツ③
1人学習で見付けた言葉を共有する時間を設けました。子供たちの発言を「現在(作文)」「グレンとの出会い」「現在」に分けて、時系列に板書します。心に残った言葉を受けて、さらに深めたいところは、空白を作ります。空白がある板書の効果は、「何を書くだろう」という疑問や期待感、自分だったらこのことを書くという板書との一体感をもたせます。
板書のコツ(3/7時間目後半)
板書のコツ①
心に残った言葉の交流だけを目的にした板書ではなく、その意味付けを大切にした板書にします。具体的には次の板書です。
友達になれたらいいな。なりたいな。でも、なれるかな。
この文章から感じることを発表し合いました。「なれるかな」からは、「期待」「楽しみ」が感じられることや、「でも、なれるかな。」の言葉からは、「期待はあるけれど、やっぱり、不安がある」だから「でも」なんだと思うという発表を受けて、「でも」を黄色のチョークで囲みました。
板書のコツ②
「『友達になれたらいいな。なりたいな。でも、なれるかな。』と感じる『歌』の気持ちを表した表現を見付けよう」と問いかけ、「それまでは真っ青だった湖に、黒っぽい雲のかげがうつっていた。……翌朝は快晴になった。」を導き出し、板書しました。
「なれるかな」と「黒っぽい雲のかげがうつっていた。」に波線を引き、言葉と言葉をつなげました。また、「なりたいな」と「快晴」に二重線を引いて、2つの言葉を矢印でつなげ、「歌」のドキドキした気持ちを違う文章で伝えることを広げていきました。
板書のコツ③
子供の発言をすべて板書するということではなく、視点を広げる手がかりになるものをあらかじめもっていることを大切にして板書しました。選ぶ基準は、めあての「心に残る言葉」です。その言葉は気持ちの変化を想像することにつながるからです。板書した「言葉の追いかけっこ」は、「表現がとても素敵だ」という感想がたくさん聞かれたので、「ステキな表現」と書き加えています。「言葉の追いかけっこ」は、言葉の美しさの共有ができ、想像が広がる言葉です。
構成/浅原孝子