ハラスメントを許さない学校に!教員によるハラスメントと処分~シリーズ「実践教育法規」~

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シリーズ「実践教育法規」
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日本女子大学教授

坂田仰

田中博之

教育に関する法令や制度に詳しい早稲田大学教職大学院・田中博之教授監修のもと、教育にまつわる法律や制度を分かりやすく解説していく本連載。第30回は「教員によるハラスメントと処分」について。教員のわいせつ行為による懲戒処分は2023年度に最多を記録しています。学校全体でハラスメントを許さない雰囲気をつくり、法規に則った適切な処分を下すことが大切です。

執筆/坂田 仰(日本女子大学教職教育開発センター教授)
監修/田中 博之(早稲田大学教職大学院教授)

【連載】実践教育法規#30

複数の法律により規制

教員によるハラスメントと称される行為は、教職員相互の関係の中で行われるものと児童生徒を対象としたものに区分できます。前者は、いわゆるセクハラやパワハラ等、労務管理に関わる一般的な課題であり、後者は、児童生徒に対する体罰や暴言、わいせつ行為等、学校固有の課題といえます。

労務管理上のハラスメントは、セクハラであれば男女雇用機会均等法、パワハラであれば労働施策総合推進法というように、複数の法律によって規制されています。いずれにおいても事業主に対しハラスメントの防止義務が課せられ、相談窓口の設置や研修の実施等が求められている点に留意する必要があります。

「ハラスメント」の定義

セクハラは、「職場」において行われる「労働者」の意に反する性的な言動を意味します。職場とは、労働者が業務を遂行する場所を指し、勤務場所だけではなく、出張先等を含む概念のことです。また、性的な言動とは、性的なからかい、食事等に執拗に誘う発言、身体への接触、性的な関係の強要、わいせつな図画等の配布や掲示等の行動をいいます。

なお、セクハラは、通常、男女間に見られることが多いですが、同性間で行われる場合を排除するものではありません。

パワハラは、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超え、労働者の就業環境が害されることを指します。身体的な攻撃、名誉毀損や暴言といった精神的な攻撃、仲間外しや無視等の人間関係からの切り離し、業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害等、業務上過大(過小)な要求、個の侵害等がその典型です。

なお、「優越的な関係を背景とした」言動には、業務を遂行するに当たり、被害対象となる労働者が、抵抗・拒絶することができない可能性が高い関係の下で行われるすべての言動が含まれます。上司による言動はその典型ですが、同僚や部下による言動であったとしても、業務上必要な知識を有しているような場合や、集団による行為はここに含まれる可能性が高いです。

わいせつ行為による懲戒処分は2023年度に最多を記録

他方、児童生徒に対するハラスメントは、子どもの尊厳を傷つけ、学校や教員に対する社会的信頼を損ねる行為です。中でもわいせつ行為は、子どもの心に癒やすことのできない爪痕を残すとして、強い批判にさらされています。

文部科学省の調査によると、2012年度にわいせつ行為等を理由として懲戒処分を受けた教職員は168人でした(当事者責任)。それが、2023年度には289人にまで上昇しています。内訳は、懲戒免職が195人、停職が69人、減給が17人、戒告が8人でした。当然のことながら、わいせつ行為等に走った教職員に対する懲戒処分は厳しいものになります。

わいせつ行為(性犯罪・性暴力等)に対する懲戒処分の推移(過去10年間)
文部科学省「令和5年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」より

2021年5月、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律(わいせつ教員対策法)が成立しました。同法第3条は、教員等による「児童生徒等」に対する「わいせつ行為」を明文で禁止しています。また、わいせつ行為をして懲戒免職となった教員に対し、失効した免許状の再交付を厳格にする等、わいせつ教員を教壇から追放する第一歩と評価する声が多く上がっています。

『実践教育法規 2023年度版』に加筆・修正

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