国語授業のアップデート|国語は楽しい!子供の関心を学びにつなげて「文章の読み方」を教える技【中野裕己の授業技術アップデート11】

連載
明日からできる!授業技術アップデート

新潟大学附属新潟小学校教諭

中野裕己
明日からできる授業技術アップデート

『授業はタイミングが9割』『対話型国語授業のつくりかた』の著者で、国語科、対話指導、ICT活用の研究を精力的に進める中野裕己先生による連載です。国語科の授業にとどまらず、“明日から”できて“ずっと”役に立つ授業の技を、多岐にわたってお届けします。

第11回目のテーマは、《子供の関心を生かして「文章の読み方」を教える国語授業》です。


執筆/新潟大学附属新潟小学校教諭・中野裕己

「国語」という授業について

連載第11回目となりました。新潟大学附属新潟小学校の中野裕己(なかの・ゆうき)です。

今回は、私が大好きな、そして大切にしている教科である国語授業のアップデートについて取り上げたいと思います。

国語と言えば、みなさんはどのようなことを思い浮かべますか。いろいろな先生に聞いてみると、次のような回答がありました。

「国語は毎日授業がある。低学年であれば、1日2コマの日もある」

そうなのです。国語は、行事などがある日を除いて、基本的に毎日授業を行うことになります。このことは、「国語の授業が楽しければ、毎日、子供が前向きに取り組める時間をつくることができる」ということを意味しています。

「お、今日は国語があるぞ。楽しみだなー」
「明日も国語があるぞ。楽しみだなー」
「あさっても国語が…」

と、このように子供が思えると、素敵ですよね。私は、国語の授業が楽しければ、子供の学校生活の満足度も必然的に高くなると思っています。

また、このような回答もいただきました。

「国語は、何を教えるかが難しい、はっきりしない」

とくに説明文や物語文は、まるっと文章が掲載されており、ここを一読して「何を教えるか」を判断するためには、ある程度の経験が必要です。さらに、授業を行っている中でも、想定していない子供の発言に授業プランを揺さぶられたり、授業のまとめをつくることに迷いを抱いたりした経験は、誰もがおもちではないでしょうか。

授業を行う上で、難しさを感じる方が多いのも、国語の特徴であると感じます。

国語で教えるべきこと&3つの指導ポイント

そこで、まずは国語授業で教えるべきことを明確にしたいと思います。

国語授業で教えるべきことは、内容ではなく方法です。物語文や説明文であれば、教材となっている文章の内容を教えるのではなく、文章の読み方を教えるのです。文章の読み方を教えるために重要なポイントは、3つあります。

ポイント① 言語活動を通して学習を進める

このことは、小学校学習指導要領解説国語編の目標にも明記されています。要するに、次のようにして教えることはふさわしくないということです。

【ふさわしくない例①】言語活動を通さず、「読み方」だけを取り出しても子供の学びにつながらない。
【ふさわしくない例①】言語活動を通さず、「読み方」だけを取り出しても子供の学びにつながらない。

読み方は、読むことを通して教えることが重要です。決して上の図のように、取り出して教えることはできません。

ポイント② 子供は文章の「内容」に関心をもつ

文章の内容ではなく読み方が大切といっても、それは教える側の話です。子供が関心をもつのは、やはり教材とした文章の内容です。したがって、次のようにして読み方を教えようとすることは、ふさわしくありません

読み方そのものを学習課題とすることは、子供にとって大変難しい。
【ふさわしくない例②】「読み方そのもの」を学習課題とすることは、子供にとって難しい。

あくまで、文章の内容に関わる関心を生かしながら、読み方を教えることが重要です。

つまり、学習課題は、文章の「内容」に関わるものがふさわしいと思います。上の図のように、「読み方そのもの」を学習課題とすることは、子供にとって大変難しいでしょう。

ポイント③ 読み方は、「見取り」と「フィードバック」で教える

文章の「内容」に関わる学習課題を設定すれば、授業は文章の内容を話題としながら進んでいきます。まとめがあるとすれば、それも文章の「内容」に関わるまとめとなります。

例えば、次のような授業展開です。

子供たちから出た考えを合わせるだけのまとめ方。「読み方」を教える機会のない授業展開の例。
【よくある国語授業の例】言語活動を通した学習で、なおかつ子供の関心を生かしてはいるが、「読み方」を教える機会のない授業展開。

もしかしたら、上の図のような授業展開は、意外と多くの教室で行われているかもしれません。ただ、このような授業では、子供に読み方を教える機会はありません。

そこで、次のように、教師が子供の学習状況を「見取り」、「フィードバック」することが大切になります

【国語授業のアップデート】子供の関心を生かし、文章の内容を追究する子供に現れた「読み方」を、教師が「見取り」、「フィードバック」することで「読み方」を教えていく。
【国語授業のアップデート例】子供の関心から学習課題を引き出し、文章の内容を追究する「子供に現れた読み方」を教師が見取り、フィードバックすることで「読み方」を教えていく。

このように、文章の内容を追究する子供に表れた読み方見取りフィードバックすることで、読み方を教えていくのです。

国語授業のアップデート! 授業モデル(例)

先に示した3つのポイントを踏まえて、次のような授業モデルをお示しします。

<授業モデル>

1.文章の内容に関わる学習課題の設定


2.追究する子供の学習状況を見取り、フィードバックする

3.文章の内容に関わる追究の成果を、それぞれまとめるように促す

1.文章の内容に関わる学習課題の設定

まず、文章の内容に関わる課題意識を引き出します。発問をしたり、子供同士の解釈のずれを提示したり、様々な手だてが考えられます。

2.追究する子供の学習状況を見取り、フィードバックする

次に、課題意識に基づいて追究する子供の学習状況を見取ります。「最初は、こうだったけれど…」と変化を読もうとするなど、子供の読み方を見取ることができたら、「なるほど、あなたは人物の気持ちが変化していることを読み取っているんだね」などと、フィードバックします

3.文章の内容に関わる追究の成果を、それぞれまとめるように促す

そして、文章の内容に関わる追究の成果をまとめるように促します。このまとめは、基本的には子供それぞれに委ねてよいと思います。

最後に付け加えたいことは、ここでお示しした授業モデルは、あくまで一例だということです。全ての教材で、また全ての教室で、いつでもこの授業モデルが適切であるとは限りません。お読みになった先生方がそれぞれの授業モデルを構築する一助になればと考えております。


……と、いうことで、ズバリ! 今回の国語授業アップデートは、

と、いうことになります。

明日の、そしてこれからの授業づくりの参考にしてくださいね。


次回の予定テーマは、《教師が出るタイミング》です。
とっても大切だけれど、言語化することが難しい「タイミング」。発問や指示など、教師が出るタイミングの計り方について、解説します。

どうぞ、お楽しみに……!

中野裕己先生

【著者紹介】
中野裕己(なかのゆうき)
新潟大学附属新潟小学校教諭。1986年新潟県生まれ。新潟市公立小学校教諭を経て、現職。「授業は、子供と教材の相互作用」を合言葉に、子供の学びを「支える」授業づくりを大切にしている。新しい国語実践研究会会長。全国国語授業研究会監事。授業改善コミュニティ「授業てらす」プロ講師。教員サークル「国語授業“熱”の会」代表。

[著書]
『教科の学びを進化させる 小学校国語授業アップデート』(2021年)
『学びの質を高める! ICTで変える国語授業3 Google Workspace for Education編』(2022年、共編著)
『子供が学びを創り出す 対話型国語授業のつくりかた』(2022年)
『授業はタイミングが9割』(2024年)
『タイプ診断で見つける 小学校国語 授業技術大事典』(2024年)

X(旧Twitter):https://twitter.com/yuuuuki0430
新潟大学附属新潟小学校初等教育研究会HP:https://www.fuzoku-niigata.jp

多種多様な「授業技術」と、その技術を活用した「実践」を、5つの授業タイプ、8つの方向性から整理。中野先生の最新刊『タイプ診断で見つける 小学校国語 授業技術大事典』も、ぜひお読みください。
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教師の授業技術を「タイミング」を中心にまとめた中野先生の新刊『授業はタイミングが9割』(明治図書)へのリンクです。

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