ベースボール型ゲームにひと工夫。子供たちが「やってみたい」、「またやりたい」と思える体育学習にするために

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ベースボール型ゲームをする子供たち

ベースボール型ゲームは、素敵な領域だと思っています。友達が打つためにボールをセットしてあげたり、1人のプレーにみんなで一喜一憂できたり、チームで協力して守ったりすることができます。子供たちの「主体的に学習に取り組む態度」を十分に育てることができる領域と言えるのではないでしょうか。子供たちの生き生きとした素敵な言葉が溢れる、そんな授業実践をお伝えします。

執筆/東京都公立小学校教諭・河田侃也

ベースボール型ゲームの特性

ベースボール型ゲームの特性は、以下の通り考えます。

楽しさや喜びを感じられる運動
ボールを打つ、蹴る、全力で走るといった動作を通じて、点が取れる瞬間に大きな達成感や喜びを味わうことができる。
仲間とのつながりを深める運動
チーム内で声を掛け合い、友達が点を取ったり、守備で良いプレーをした際に一緒に喜び合うことができる。協力の楽しさを感じられる。
ルールの複雑さによる課題
ルールやゲームの進め方がやや複雑で、特に初めて取り組む子どもには理解が難しく、十分に楽しさを感じられない場合もある。

このような特性を踏まえた上で以下の工夫を行いました。

初めのルールについて

子供たちに提示した初めのルールは、以下の通りです。右は、変更後のルールです。

【初めのルール】
<こうげき>
全員で6回こうげきする。(1人最低1回)
投げたらコーンまで走る。
1つ目のコーンなら1点、2つ目なら2点。
<守り>
ボールをフラフープに当てたらアウト!

【4ー1のルール】
<こうげき>
全員で6回こうげきする。(1人最低1回)
打ったらコーンまで走る。
1つ目のコーンなら1点、2つ目なら2点、3つ目なら3点。曲がったところにあるコーンは4点。
バットを入れて、入ったら1点。
やり直しは2回まで。
場外は、3点。
小さいボールとラケットは、3回まで。
<守り>
ボールをフラフープに当てたらアウト!
フラフープは、印のところに置いておく。
入ってはいけないゾーンを作る。

初めのルールを見て分かる通り、第1時はバットを使わずにゲームを行いました。それには、以下の理由があります。
「ルールが分からないと楽しめない」という児童が6割程度いたこと
バットを扱うと、ルールがややこしくなったり、知識・技能の指導をするため、児童が知ることが多い。
まずは、バットを使わずにボールを投げてゲームを行うこと(バットレスベースボール)で、ベースボール型ゲームの行い方を知ることができる手だてとしました。今回は、ベースまで一直線にしました。それは、小学校学習指導要領解説(平成29年告示)体育編で、「ベースに向かって全力で走り、かけ抜けること。」と明記されているためです。
第1時に提示したルールは分かりやすく、子供たちが楽しんでゲームに取り組む姿が見られました。

授業の様子1
授業の様子2

 規則の変更

第2・3時では、規則の変更を行いました。私は、規則とルールについて使い分けることが大切だと考えています。
 規 則…安全で楽しくゲームを進めるための基本的な約束事。
 ルール…競技性や公平性を重視した取り決め。(ChatGPTより)
また、小学校学習指導要領解説(平成29年告示)体育編に、「規則を工夫したり,ゲームの型に応じた簡単な作戦を選んだりするとともに,考えたことを友達に伝えること。」と明記されていますので、規則の変更する項目を子供たちに示しました。

作戦について

小学校学習指導要領解説(平成29年告示)体育編には、「規則を工夫したり、ゲームの型に応じた簡単な作戦を選んだりするとともに、考えたことを友達に伝えること。」と明記されています。そのため、単元前半の子供たちの様子を見取り、以下のようなルールを用意しました。

作戦図

子供たちにとって、分かりやすく、取り組みやすい作戦を用意しました。子供たちは、どこに打てば良いかを考えながらゲームに取り組んでいました。
この作戦は、子供たちから「チームで作戦を考える時間がほしい。」という意見を生かし、時間を設けました。選んだ作戦を、オレンジの「選んだ作戦」の部分に移動させ、どの作戦を選んだか明確にしました。
右側のゲームボードは、守備で自分がどこにいればよいのかを明確にするために用意しましたが、使用するかしないかは、子供たちに任せました。

今回の授業では、「攻撃」に関して子供たちに多くの言葉掛けを行いました。ゲーム・ボール運動領域の特徴の1つですが、初めは多くの点を取ることができていても、だんだんと守備が上達していき、点を取ることができなくなってきます。ゲーム・ボール運動領域の楽しさや喜びは、何といっても「点を取ること」だと私は考えます。守備で良い動きする子供たちも多くいましたが、そこは言葉掛けをするのを堪え、攻撃をするための言葉掛けをメインに行いました。

授業を通して

運動があまり得意ではない子も、フェアゾーンギリギリに打つことで、多くの点を取ることができたり、友達に認めてもらったりすることで、楽しさや喜びを感じている姿が見られました。しかし、予想した通り、単元後半には守備が上達し、点を取ることが難しくなっている姿がありました。「フラフープは動かさない。」「守備の人数は4人」など、初めのルールの工夫が必要だと感じました。

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【引用参考資料】
小学校学習指導要領解説(平成29年告示)体育編

イラスト/難波孝


河田侃也

執筆
河田侃也(かわた なおや)
東京都公立小学校教諭
令和四年度東京教師道場部員
令和六年度第14期NPO健康・体育活性化センター小学校体育研究員

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