子供たちといっしょに読みたい 今月の本#7 食育の本
連載7回目のテーマは、「食育の本」です。秋は旬の食べ物も豊富な季節。「食欲の秋」にちなんで、食に関心のある子もない子も食べ物や食べることに興味をもって、食育につなげられるような本を紹介します。子供たちの1人読み、先生が読む、読み聞かせなど学級の実態に合わせてください。
監修/東京学芸大学附属小金井小学校司書・松岡みどり
目次
絵本
低学年も入りやすい絵本で食育を進めていきましょう。内容とともに絵も見どころです。
『た』
作・絵/田島征三
佼成出版社刊
「たがやす、たねまく、たくましくそだつ。そしてたのしむ!」。古来稲作を中心とした農耕によって命をつないできた日本人の営みと精神を「た」から始まる言葉で描いた絵本。「た」というキーワードから広がる、日本語の豊かなニュアンスを堪能できます。
松岡司書のおすすめポイント
「た」の言葉で進む独特の絵本で、ダイナミックな絵も魅力的。お米が育つ過程が自然な流れでストーリー仕立てになっているという構成がすばらしい。読み聞かせもよいし、お米の学習や季節の話に関連付けて紹介するのもおすすめです。この絵本にならって、「1文字で物語をつくりましょう」という活動なども工夫できると思います。
『雪窓』
文/安房直子 絵/長谷川あかり
あすなろ書房刊
安房直子絵ぶんこシリーズ第5弾。初めて雪がふった晩、山のふもとのおでんの屋台「雪窓(ゆきまど)」に、ちょっと変わったお客さんがやってきました……。心がぽっと温かくなる話。
松岡司書のおすすめポイント
安房直子さんの作品は、「きつねの窓」「初雪のふる日」など、国語の教科書に取り上げられているものもあるので、子供たちは安房直子さんの名前を知っているかもしれません。「雪窓」には、「三角のぷるぷる」など、不思議な描写でおいしそうなものが出てきます。「絵ぶんこ」シリーズの他の作品もおいしそうな食べ物が登場するお話があります。内容が親しみやすく、すてきなファンタジー作品なので、ぜひ手に取ってほしいと思います。
『ごちそうごよみ』
作/谷山彩子
小学館刊
お正月にはおせち料理、ひな祭りにはひし餅やひなあられ、というふうに行事の日にはごちそうが付きものです。日本で親しまれている行事を取り上げ、それぞれの日に何が食べられるのか、そのごちそうの意味は何なのかなど、1年の行事やならわしを、食べ物を軸に楽しんで理解できる、こよみ絵本。
松岡司書のおすすめポイント
二十四節気に分け、行事に合わせた食べ物を紹介し、その食の由来や地域による違いなど、食に関する知識が豊富に掲載されています。日本の行事だけでなく、外国が起源のハロウィンやクリスマスなど、日本に定着しつつある行事も紹介されていて、見て楽しく、知識としても取り入れやすいでしょう。給食時に行事に合わせて出てきた食の由来を話したり、各月の行事に合わせて話題にしたりするのもよいと思います。
『そらくんのすてきな給食』
作/竹内早希子 絵/木村いこ
文研出版刊
小学校に入学して、今日が初めての給食のそらくん。しかし、そらくんには食べ物のアレルギーと苦手な食べ物があります。そらくんが安心して給食を食べられるように、どんな工夫がされているのでしょうか? 食べ物アレルギーに関する解説やエピペンの使い方を収録。
松岡司書のおすすめポイント
食べ物のアレルギーをテーマにしたストーリー仕立ての絵本です。食物アレルギー体質の子がいることや給食を提供する人の取組がよく分かります。食物アレルギーの友達がなぜ自分と異なる給食を食べているのかという理解にもつながります。
読み物
高学年向きの読み物です。子供たちと同じ世代の頑張っている姿に感動します。
『天の台所』
著/落合由佳
講談社刊
小学生の天には、かつておいしいご飯を作ってくれる「ばあちゃん」がいました。ところが、ばあちゃんがなくなり、家族全員が戸惑うなか、天は近所で評判の「がみババ」に料理を教わります。天の料理が、どこか穴の空いた家族を再び結んでいきます。
松岡司書のおすすめポイント
「料理」をテーマに、家族の絆が描かれた心にしみる物語です。天は、ばあちゃんの台所を守りたい一心で始めた料理修業。嫌々始めましたが、いろいろな料理を作っていくなかで、だんだん成長する姿がいきいきと描かれています。そんな天を応援したくなります。料理が人と人をつなげることが分かったり、料理を作る場所に関心をもてるようになったりするとよいと思います。
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松岡みどり司書からのメッセージ
食べ物や料理のテーマの本は身近で紹介しやすいと思います。給食の献立に合わせて、本を紹介するのもよいですし、給食におでんが出てきたときに「『雪窓』に出てきた料理だね」と伝えるのもよいかもしれません。季節を意識したり、給食や家庭科など学校の食と関連付けたりすると子供たちの心に響くのではないかと思います。食に関心のなかった子供が、興味をもってくれることも期待できます。
読書や本の情報が満載
ウェブサイト「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」(東京学芸大学 学校図書館運営専門委員会)
https://www2.u-gakugei.ac.jp/~schoolib/htdocs/
取材・文・構成・撮影/浅原孝子
授業で使える312冊の絵本を紹介
著/齊藤和貴(京都女子大学教授)
司書教諭の経験を生かしながら、長年、学校現場で「絵本を活用した授業」を行ってきた元小学校教諭が、小学校の授業で使える絵本312冊を厳選。絵本を使った実際の授業が、板書や指導案、豊富な写真とともにオールカラーで具体的に紹介されていますので、授業の進め方がよくわかります。
B5判/112頁
ISBN9784098402212
〈著者プロフィール〉
齊藤和貴(さいとう かずたか)
京都女子大学発達教育学部准教授。元小学校教諭・司書教諭。東京都公立小学校及び東京学芸大学附属小金井小学校、附属世田谷小学校で28年間、教育活動や授業実践に取り組む。その間、生活科や総合的な学習の時間を中心に指導法やカリキュラム、評価方法の工夫・改善を図り、「子供とともにつくる授業」の創造に励む。また、司書教諭の経験を生かし、「絵本を活用した授業づくり」にも取り組んできた。