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子供への「二人組になってね」という声がけに潜む問題点とは?

2020/1/28

当たり前の教育活動の中に、子どもを傷つける要素が潜んでいるかもしれないと考えたことはありますか? 例えば、「二人組になってね」。なんの悪気もない、当たり前のように使うこの言葉が、ある子にとっては学校を苦痛な場所にしてしまっているかもしれないという想像力を持てるか持てないか。そこで、子どもとの信頼関係に差がついてくるのです。

執筆/大阪府公立小学校教諭・浅野学

写真AC

「はーい、二人組になってねー」に心拍数が上がる子どもたち

例えば、ある体育の時間。サッカーの練習をするために先生は二人組を作らせたいと考えます。しかし40人の子どもの20通りの組み合わせを予め考えておくなどという時間的余裕は、小学校の先生にはありません。しかし、ある程度の運動量は確保させたいし、人数が増えてダラダラな練習になるのも避けたい。よし、2人組を作らせよう。

「はーい、これからサッカーのキックの練習をします。二人組になってください。決まった人から座っていってね」

これは、よくある教育活動かと思います。日本全国、どこの体育の時間でも見られます。この活動の何が問題なのでしょうか。

これを読んでいるあなたの子ども時代を思い出してください。

あなたは、クラスで二人組を作るときに、

「友だちとすぐに組めて、ほかの人を座って待つ子ども」でしたか?

それとも「最後まで余る子ども」でしたか?

そうです。この活動をすると多くの場合「最後まで余る子ども」が出てくるのです。それはクラスが奇数のときだけではありません。偶数であっても起こります。

集団の端と端に下を向いて恥ずかしそうにしている子どもが二人。先生は優しいです。そんな二人を引き合わせます。「さあ、余った二人はこっちにおいで。よし、これでペアができたね。さあ、始めよう」となるわけです。

体育の序盤の何気ない風景。当たり前の教育活動。ここに心が傷つけられた子どもがいるなんて想像したことがありますか? でも、こんな体験を毎回させられている子どもがいるのかもしれないという想像力が教師には必要なのです。

今回の一例に心当たりがあった先生とそうでない先生がいたと思います。同じような教育活動をしたとしても、誰も傷つかずにスムーズに二人組ができる学級も数多くあるでしょう。大切なのは教師側が「誰かが傷つくかもしれない」その可能性を考慮していたかどうかです。教師が教育活動を設定する以上、そこまで考えておく必要があるのです。そうでなければ、その教育活動には子どもがいません。いるのは、一人一人の「子ども」ではなく、「学級」という集団です。集団を見ていると個別の子どもの気持ちに気付きにくくなります。

「そんなことは大したことではない」「そういう経験で人は強くなるのだ」

こんな意見もあるでしょう。でも、二人組になる活動が辛くて、その子どもが不登校になったらどうでしょうか。その活動が大したことがないかどうかを決めるのはあなたではないのです。

子どもの心理的負担を減らすために必要な「制限」がある

では、どうしたらいいのでしょうか。

考える視点は二つあります。

一つは「児童理解の視点」、もう一つは「教育技術の視点」です。

「児童理解の視点」で考えれば、二人組を作るという活動で動けない子はどんな気持ちになっているのかを想像してみましょう。恥ずかしい、気の許せる友だちがいないか少ない、クラスに居場所がない・・・などです。しかし、この視点は誰にでも持てるわけではありません。普段の様子を見ている学級担任の先生でしか、それはわからないものです。

「教育技術の視点」で考えれば、制限をかけることです。
今回の事例の問題点は、子どもの自由意思に任せている点です。これでは、子どもたちの性格が色濃く反映されてしまいます。それならば、制限という名のルールを作ればいいのです。

例えば、出席番号の前後で組む、男女で組む、生活班で組む。子どもが誰と組もうかなと悩ませるのではなくて、ルールに合った人を選ぶ。これで心理的負担はずいぶん軽減できるはずです。ちなみに、この制限があれば、教師側からも積極的に働きかけができます。

我々教師が教育活動を設定するときに注意が必要なのは、子どもの安全です。この安全にはもちろん心の平穏も含まれています。今回は考える視点を簡単に紹介しましたが、これだけが正解ではありません。正解はあなたの目の前にいる子どもたちにあります。常に、この教育活動でいいのかと自問自答を繰り返すことでしか良質な教育活動は成り立ちません。子ども一人一人の気持ちに寄り添うことこそが我々に最も必要な教育技術なのかもしれません。

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