「コグトレ」でコミュニケーション力を育てよう〔違った考えをしてみよう〕#15ダウンロードプリント付

連載
子どもたちの認知機能を高める 教室コグトレ
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立命館大学教授・一般社団法人日本COG-TR学会代表理事

宮口幸治
「コグトレ」でコミュニケーション力を育てよう〔この人たちはどんな気持ち?〕#2ダウンロードプリント付 バナー

15回目の今回は、他者の感情を理解する力や自分の感情をコントロールする力を養う「段階式感情トレーニング」のなかの〔違った考えをしてみよう〕にチャレンジしましょう。「コグトレ」とは、宮口幸治先生たちが開発した「コグニティブ(認知)機能」に着目したトレーニングのことで、身体面、学習面、社会面の3方面から包括的にトレーニングする特徴があります。本連載では、社会面のトレーニング(認知ソーシャルトレーニング)をもとに、感情を上手にコントロールしたり、相手の気持ちを考えたりする、コミュニケーション力を高めるトレーニングを紹介します。ダウンロードプリントを活用して、ぜひ試してみてください。

監修/立命館大学教授・宮口幸治

認知ソーシャルトレーニングとは

コグトレの認知ソーシャルトレーニングは、感情を統制する、危険を予知する、対人スキルを高める、問題を解決するなど、社会で生きる力を養うトレーニングです。以下の表のように「段階式感情トレーニング」「危険予知トレーニング」「対人マナートレーニング」「段階式問題解決トレーニング」など、4つのトレーニングから成り立っています。

コグトレ 表1

今回は、「段階式感情トレーニング」のなかから、〔違った考えをしてみよう〕の課題を紹介します。このトレーニングは、トラブルのもとになる怒りなどの感情をコントロールする力を養います。過去1週間を振り返り、不快な気持ちになった場面について、何があったか、あなたは何をしたか・思ったか、その時の気持ちを課題シートに書き込みます。そしてそのときの怒りなど不快な気持ちの強さを0~100%の範囲でどれくらいあったかを書きます。

次に、その不快な気持ちを下げるために、違った考え方を3つ挙げて書き、そう考えたときの不快な気持ちの強さの変化や感想を書き入れます。多角的な考え方をすることによって、怒りなどの感情をコントロールする力をトレーニングします。

〔違った考え方をしてみよう〕にチャレンジ!

ねらい
日常生活の中でトラブルのもととなる怒りなどの感情をコントロールする力を養います。

進め方
1 過去1週間を振り返り、不快な気持ちになった場面について、日にち、場所・場面、何があったか、あなたは何をしたか、どう思ったかを課題シートの上段から順に書いてもらいます。
2 そのときどんな気持ちがしたか、怒りなどの強さはどのくらいであったかを書きます。強さは0~100%の範囲です(回答例を参照)。
3 書き終わったら、その気持ちを下げる違った考え方を3つ挙げて書いてもらいます。併せてそれぞれについて、考え方に対する気持ち、不快な気持ちの強さ、感想を書いてもらいます(回答例を参照)。

 

課題シート

課題シート 違った考えをしてみよう
課題シートをクリックで拡大、ダウンロードできます。

回答例
【何があった?】…AさんとBさんが私のほうを見て、笑って話していた。
【あなたはどうした? どう思った?】…私のことをばかにしたと思った。
【どんな気持ち? どれくらいの強さ?】…気持ち:怒り 強さ:80%

違った考え
考え方① もう二度とAさんやBさんと話さないし、遊ばない。
気持ち 怒り 90%
感想 もっとムカムカしてきた。

考え方② こんなことで怒っても仕方がない。私ががまんしたらいいんだ。
気持ち 怒り 50%
感想 でも、やっぱり思い出してしまう。ムカつく。

考え方③ AさんとBさんは、たまたま私のほうを見て話していただけかもしれない。
気持ち 怒り 20%
感想 そういえば私もCさんと笑いながら話していて、Dさんと目が合うことがあった。気にしないようにしよう。

※不快なことであれば、どのような感情を扱ってもよいのですが、できれば「怒り」「悲しみ」などの、よくあるネガティブな感情を扱うようにしましょう。
※違った考え方は、感情の強さが40%以下になるものが出てくるまで考えてもらいましょう。 

授業の進め方

進め方は以下の手順を参考にしてください。※詳しくは『子どもの認知能力をグングン伸ばす!マンガコグトレ入門』(小学館)をご覧ください。

※マンガに登場する出来事は回答例の出来事とは内容が異なります。

『子どもの認知能力をグングン伸ばす!マンガコグトレ入門』(小学館) マンガ 〔違った考えをしてみよう〕
『子どもの認知能力をグングン伸ばす!マンガコグトレ入門』(小学館) マンガ 〔違った考えをしてみよう〕

  

宮口幸治(みやぐちこうじ)

立命館大学教授 一般社団法人日本COG-TR学会代表理事
京都大学工学部を卒業し建設コンサルタント会社に勤務後、神戸大学医学部を卒業。児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務、2016年より現職。困っている子どもたちの支援を行う「日本COG-TR学会」を主宰。医学博士、子どものこころ専門医、日本精神神経学会精神科専門医、臨床心理士。著書『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)が大ベストセラーになる。

取材・文・構成/浅原孝子 イラスト/畠山きょうこ

出典:『社会面のコグトレ 認知ソーシャルトレーニング①段階式感情トレーニング/危険予知トレーニング編』(三輪書店)

 

『逆境に克つ力』(宮口幸治・神島裕子著)表紙


『逆境に克つ
~親ガチャを乗り越える哲学~』(小学館)

著/宮口幸治 ・神島裕子
新書判 192ページ

逆境に苦しんでいる子への支援のヒントが満載

どの親のもとで生まれたかによって子どもの人生が左右される現実をカプセルトイにたとえた「親ガチャ」という言葉。 『ケーキの切れない非行少年たち』の著者と気鋭の哲学者が、全ての人が幸せを追求できる社会のあり方を考えながら、逆境を乗り越えるための心の持ち方人生を切り開く力のつけ方を、哲学・精神医学・心理学の観点から具体的に提唱する。

『マンガコグトレ入門』(宮口幸治著)表紙

『子どもの認知能力をグングン伸ばす! マンガコグトレ入門』(小学館)

著/宮口幸治
A5判 224ページ

教室を舞台にしたマンガでコグトレの進め方を楽しく具体的に紹介しています。「コグトレを取り入れたいけれど、何からどのように始めたらよいかわからない」という方にもピッタリの1冊です。「コグトレ」の代表的な50種のトレーニングのねらいや進め方・ポイントなどを、マンガを交えてやさしく解説。紹介する課題のワークシートはすべてダウンロード可能。

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