小4国語科「友情のかべ新聞」板書例と全時間の指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小4国語科「友情のかべ新聞」(光村図書)の板書例、発問例、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した全時間の授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/大妻女子大学家政学部児童学科教授・樺山敏郎
執筆/茨城県桜川市立大国小学校校長・小林詠二
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、好きなものが正反対で、仲の悪い「東君」と「西君」の二人が起こした出来事を通して、会話や行動、場面の様子などの叙述をもとに、東君と西君の気持ちの変化や性格、情景について場面の移り変わりと結び付けて具体的に想像する力を育てていきます。
また、様子や行動、気持ちや性格を表す語句の量を増やし、話や文章の中で使うようにします。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
言語活動を設定する上で、「友情のかべ新聞」という「教材」の特色と身に付けたい資質・能力の関係に触れておきます。
本教材は、性格が正反対の「東君」と「西君」が起こした出来事の秘密を同じクラスの「ぼく」が、二人の言動を一週間追いながら探ろうとする内容です。同じような事柄が何度も出てきた際、どのように描写されているのかに着目し、場面のつながりを考えることが秘密を探る鍵となります。
そして、「なぜだろう」と思うような登場人物の行動や様子について、他で書かれている登場人物の行動や様子に疑問を感じることと結び付けて、その理由を想像することに面白さを感じることができます。
また、今までに学習した「白いぼうし」「ごんぎつね」において、言葉に着目して出来事と人物の気持ちを捉えたり、気持ちの変化を捉えて感想をもったりしました。そこで、これまでの学習を通して、人物の気持ちや気持ちの変化を捉えることは学級全体で概ね達成しているが、自分の感想をなかなかもつことができない実態がある場合には、「なぜだろう」と思うような登場人物の行動や様子について着目し、面白いと思ったことを互いに話し合う言語活動を設定するとよいでしょう。
その際、つながりに気を付けながら読んだことをもとに、面白いと思ったことをまとめるようにします。文章を読み取った後に、「友情のかべ新聞」について面白いと思ったことは、一人一人異なることでしょう。しかし、この教材を共有し、面白いと思ったことを話し合う活動を設定することで、登場人物の行動や様子について、他で書かれていることと結び付けるようにします。そのときに理由に着目することで、互いの面白いと思ったことを知ろうとする意欲にもつながることでしょう。
「白いぼうし」「ごんぎつね」において、言葉に着目して、気持ちの変化を捉えて感想をもち、互いに話し合っている場面が、学級全体で多く見られた場合には、「友情のかべ新聞」の特色と、学習を通して想像した人物像や相互関係を生かして、「東君」か「西君」になりきって相手に対して手紙を書く言語活動を設定することも考えられます。
「二人で壁新聞を書く前は、相手のことをどのように思っていたのか」「中井先生に二人で壁新聞を作りなさいと言われたときはどのように思ったのか」「壁に青い線をつけてしまったときはどのように思ったのか」「中井先生と一緒に掲示板のよごれを落としたときはどのように思ったのか」という視点で手紙を書くことは、場面のつながりを見つけながら、二人の心情と関係の変化を捉えるのに適した活動になるでしょう。
学級の実態や児童の学びの積み重ねから、どのような言語活動を設定するのがふさわしいか判断しましょう。
4. 指導のアイデア
主体的な学びを生み出す上で大切なのは、導入において、単元の学習が始まる前までに学習してきたことや経験してきたことを振り返り、本単元で学習することに関心をもち、課題に対して解決してみたいという意欲をもつことです。
本単元では、今まで読書をしてきた経験の中で、登場人物の気持ちの変化や性格、情景について、書かれていることにどのようなつながりがあるのかを、場面の移り変わりと結び付けて具体的に想像するようにします。そして、その経験から児童たちの関心と意欲を高めて、見通しをもつことへとつなげていきましょう。
今回は、物語を読むことを通して、自分が面白いと思ったことの感想を書く経験しかなく、互いに「面白いと思ったことを知りたい」という児童の実態を生かし、「面白いと思ったことを話し合う」としましたが、他にも「登場人物に手紙を書こう」などの学習課題を立てることができます。
その際には、「登場人物の気持ちの変化や性格、情景について、場面の移り変わりと結び付けて具体的に想像することができる。」など、単元を通して育成したい資質・能力を踏まえて、最適な単元を構想するとよいでしょう。
対話的な学びで大切にしたいことは、対話する前に自分の考えをもち、何のために対話するのかを明確にすることです。
そして、自分の面白いと感じたことが、対話する人とどのような点で同じなのか、または異なるのか、着目することが大切です。
また、他の人と比べる際には、面白いと思ったことやその場面の移り変わりと結び付けて具体的に想像することなどの観点を明確にし、共有することも大切です。観点を明確にすることで、話し合う際の目安となり、評価をする際の規準の一つになります。そのため、面白いと思ったことをまとめる際には、再度どのような観点でまとめるのか、明確にすることが必要です。
また、話し合った後に他の人と相違点を比べて気付いたことを、自分がまとめたことに生かしていくことが、話し合う意義の実感につながります。
深い学びに向かうためには、単元全体を通した学習でインプットした知識を土台に、自らが形成した考えを乗せてアウトプットできるようにする必要があります。
そしてその成果として、単元の学習が始まる前に得ていた経験より、学習後の豊かな経験につながることが理想です。
ここでは、学習前には自分では選択しなかった本への関心が高まり、学習後にはそのような本を手に取って読書するようになるようにしたいところです。
単元の導入部では、単元全体で学習することを見通し、書かれていることのつながりを見つけながら、面白いと思ったことを表現する方法を把握できるようにします。
そして単元の終末部では、面白いと思ったことをまとめるための観点や、話し合ったことについて振り返るようにします。そのことで、単元全体で学習したことを生かし、書かれていることにどのようなつながりがあるのか、新たな視点から考えながら、深い学びに向かう姿勢につながることでしょう。
5. 単元の展開(8時間扱い)
単元名: つながりを見つけながら読み、面白いと思ったことを話し合おう
【主な学習活動】
・第一次(1時、2時)
① 題名やリード文から物語を想像する。学習の見通しをもち、学習計画を立てる。
② 人物像が読み取れる叙述を探しながら、登場人物の性格や行動を確認する。
・第二次(3時、4時、5時、6時、7時)
③ 書かれていることのつながりを見つけながら読み、人物の気持ちや関係の変化を捉える。
④ 叙述と叙述を結び付けながら、どのような叙述のつながりで謎を解き明かすことができるのかを考える。〈 端末活用(1) 〉
⑤ 面白いと思ったことについて、理由とともに書きだす。
⑥ 書きだした文章をまとめ、まとめたことをもとに面白いと思ったことを話し合う。〈 端末活用(2) 〉
⑦ 友達がおもしろいと思ったことと自分が面白いと思ったことを比べて、書いた文章を見直す。〈 端末活用(3) 〉
・第三次(8時)
⑧ 単元全体を振り返り、どのようなことが身に付いたのかを確かめる。
他に
・登場人物の気持ちや気持ちの変化を捉え、感想や面白いと思ったことを話し合うだけではなく、登場人物の気持ちの変化について、複数の場面の移り変わりと結び付けて具体的に想像することが学級全体で概ね達成できている場合には、次のような言語活動も考えられる。
「ぼく」の推理に基づいて、「東君」と「西君」の行動や気持ちの変化についてまとめ、「東君」と「西君」が本当に仲良くなったのか、自分の考えをまとめる。
板書例、ワークシート例、発問例と全時間の指導アイデア
「友情のかべ新聞」という題名やはじめの文章からどのような内容かを想像するようにします。そのことで、文章を読む前に物語について関心をもつことができるようにします。
文章を読み進めていく中で、自分が想像したことと実際に書かれている内容の相違について知ることができます。その後、単元全体を通して、物語を読んで面白いと思ったことを友達と話し合うようにします。物語を読んで面白いと思ったことについて、言葉や印を端末上の画像に直接書き込めるようにしておきます。児童は、その画像を示しながら話合いを進めることで、具体的なイメージを共有することができます。
単元の終末部では、学習したことを振り返りながら、どのようなことが身に付いたのかを確かめるようにします。
身に付いたことをもとに、今後の学習においても、「なぜだろう。」と思うような登場人物の行動や様子について、他で書かれている行動や様子に疑問を感じることと結び付けてその理由を想像することを要所で押さえ、面白いと思ったことをまとめていけるようにしましょう。
「友情のかべ新聞」という題名やはじめの文章から、どのような内容が書いてあると思いますか。
友達と仲良く、かべ新聞を作るのかな。
友達とけんかしたけど、かべ新聞をつくると仲直りできたのかな。
みなさんが想像した内容と比べながら、物語を読んでいきましょう。物語を一度読んでみて、どのようなことを思いましたか。
「東君」と「西君」の仲が良くないのに、かべ新聞を作ったら仲良くなったのが不思議だな。どうして仲良くなったのか秘密をもっと知りたいな。
「東君」と「西君」の仲が良くないのに、中井先生が二人にかべ新聞を作らせたのが面白かった。
「友情のかべ新聞」を読んで、不思議に思ったことや面白いと思ったことがたくさんありましたね。これから学習を進めていく中で、どのようなことを学習していきたいですか。
もっと物語を読んで、「東君」と「西君」の秘密を知りたいな。
「東君」と「西君」の秘密を知るために、二人がどのような行動をしたのか詳しく知りたいな。行動したことがどのように秘密につながっているのか楽しみだわ。
「東君」と「西君」だけではなく、「ぼく」の行動も詳しく知りたいな。「ぼく」の行動一つ一つが秘密を解き明かすことにつながっていると思うよ。
「東君」「西君」「ぼく」など登場人物の行動や、行動した理由はつながっているのね。
そのつながっている行動からどのような性格なのかを詳しく知りたいな。登場人物の行動や性格を知ることができてとても面白いよ。
そうだね。物語を読んで、面白かったことや不思議に思ったことを友達と話し合いたいな。
そうですね。「友情のかべ新聞」を読んで、登場人物の行動や行動した理由、性格などのつながりに着目し、面白いと思ったことを友達と話し合っていきましょう。
そして、「友情のかべ新聞」の面白いと思ったことを友達に伝えていきましょう。
題名やリード文から物語を想像し、学習の見通しをもち、学習計画を立てている児童を概ね満足と評価します。(端末、発表)
イラスト/横井智美