山場の「魔の6月」を乗り越える!学級メンテナンスの手立て完全ガイド

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埼玉県公立小学校教諭

紺野 悟

新学年が始まって2ヶ月、いわゆる「魔の6月」「6月危機」を乗り越えるため、教師が知っておきたい学級経営の具体的な手立てを伝授! 慣れてきたからこそできる学級経営の技や、先生が教室にいなくても子どもたちが自律的に学習を進められるコツ、さらには季節の変化に対応した楽しい学級レクの提案まで。子どもも教師も楽しみながら成長できる、6月の学級経営アイデアが満載です。

執筆/埼玉県公立小学校教諭・紺野悟

6月危機を乗り越える視点

学級経営において6月はどんな時期でしょうか? 次の3つの観点で考えてみましょう。

①2ヶ月経過した時期

4月に学級がスタートして2ヶ月がたちました。2ヶ月間、学級の中で過ごしてきた子供たちにとっては、1日の生活ルーティーンが確立されてきた時期であると言えます。つまり、多少のイレギュラーな出来事があったとしても給食の準備は行うことができ、移動教室の際には声を掛け合って行うことができます。誘い合って校庭で遊ぶことも、図書室で本を借りることもできます。

教科や先生による授業の仕組みも理解してきているので、発表や話し合い、ノートに書く、タブレット端末で学習を行うことなど、指示が通りやすく、活動が滞りなく進むこともしばしば見られるようになります。

一方で、ダレてくる様子も見られるようになります。毎日同じような日々、変わらない日常に何か刺激が欲しくなるのでしょうか。これは、よくない方向に表出することがあるので要注意です。

②水泳学習がスタート

6月には水泳の授業が始まります。水泳は学年で授業を行う学校がほとんどでしょう。大規模校では100人以上の子供たちが学習します。教師は学年全体に気を配らなくてはならないので、どうしても学級の一人一人に声をかけたり、変化に気づけない場面が出てきます。また、様々な事情で教室に担任がいない時間も生まれてくるでしょう。つまり、こうした隙間が生まれる時期でもあります。

③季節の変わり目

そして6月は季節の変化が見られる時期です。最近は気温が上がり、暑さ指数が高くなると、外遊びを制限する場合も多くなりました。また梅雨に入る時期でもあります。雨の日が多いと気圧の変化から頭痛になる子供がいたり(科学的にはよくわかりませんが、以前そんなことを言っていた子がいました)、外に出られず思いっきり走れないことからストレスがたまる子供が出てくる時期でもあるのです。

これらが「6月危機」「魔の6月」と言われるゆえんです。6月と言えば、一山越える時期なのです。そこで大切なことは、「何かあったらどうしよう」「危険な時期だなあ」と構えるのではなくて、備えること。そして逆に変化を楽しむということです。

  • 恐れるのではなく、事前に準備をしておく。
  • 変化にバタバタするのではなく、変化に対する耐性を育てる。
  • 慣れてくるからこそできることを生かす。
  • 慣れてくるからこそ一味加えて、日常を面白く色付けしてみる。
  • 先生がいない時間だからこそ、子供たちで秩序を保てるようにする。
  • 暑くて、または雨で教室に全員いるからこそできるレクリエーションを行う。

実はこういった発想こそが、「6月危機」を乗り越える視点なのです。

6月危機を乗り越える手立て① 慣れてきたからできる3選

①先生1日10回チャレンジ

まずは「先生1日10回だけチャレンジ」です。例えば「1日先生10回しか喋りませんチャレンジ!」をやると、教師にとっては「次は?」「何やっているの?」「早くして!」なんて言いすぎていないか検証することや、変わり映えのしない日々のチェック機能として働きます。子供たちにとっては「次はどうしたらよいか?」いつも以上に先を考えて行動することや、危ないことや他の子が嫌がることをしないようにしようとする「秩序を保つ」機能として働きます。

午前中だけにしたり、10回だけ声かけるなどのルールにしてもいいかもしれません。そのほうが、いざという時に声を出して危険を回避できますし、「5回で済んだよ! すごいね!」と子供たちを承認することもできます。

【導入の例】
今日は先生、1日喋らないで過ごしてみようと思います。ここまで2ヶ月間過ごしてきましたから、掃除や給食、次の授業の準備や移動などみんなで声を掛け合って取り組むことができると思います。いつも通りやれば大丈夫。案外できますよ。協力して1日乗り越えられたらすごい成長だと思いませんか? どうですか? 題して『1日先生10回しか喋りませんチャレンジ!』です。

実際にチャレンジでは、こんな視点で見ていきます。

【子供たちの様子】

  • 楽しんで取り組もうとしている子は誰か? 何人いるか?
  • 逆に何も変わらない子は誰か? 何人いるか?
  • ふざけてしまう子は誰か? 乗る人は誰か?
  • 誰がそれを止めているかな?
  • 普段は気づかない子供たちのよい行いはないかな?
  • 小さなよいことをしている人は誰かな?
  • 休み時間のトイレはどうなっているかな?
  • いつもと違う場所から教師を眺めてみたらどうかな?
  • 困っている場面はないかな?

 【先生自身の振り返り】

  • ついつい口出ししたくなるのはどんな時かな?
  • ついつい口出ししたくなるのは誰の行動かな?
  • 支援、勇気づけはどのように機能していたかな?
  • 注意しすぎていたのはどんな場面かな?

このように『1日先生10回しか喋りませんチャレンジ!』は、先生にとって学級の状態を測る機会になります。「ここで声をかけて子供たちに動いてもらっていたんだな」「こんな場面、指導したくなっちゃうな」などと振り返っていきながら、4月に比べてできてきていることやよくなっていることを見つけて、学級通信などで感謝を交えて伝えていきましょう。修正点を見つけたら、学級で話し合いながら改善を測っていきましょう。

② 1時間〇〇チャレンジ

上記の1日チャレンジの取り組みは授業以外の場面を含む取り組みですが、たとえば「この1時間の授業をサイレントで行ってみる」という取り組みもあります。交流も筆談で行います。号令もサイレントで行います。先生も、指示はスライドで写すなどして、とにかく静かな時間で音を出さないようにすることで楽しみます。こうすることで、いつもと違う雰囲気で「静かにする」経験をすることができます。

また、疎かになっている「ルールを守る」ということを「楽しむために守ろう」としてくれます。ルールが疎かになってくる原因の多くは、教師の判断の曖昧さにあります。「静かにする」というルールを設定するならば、徹底的に静かにすることが必要です。とはいえ、厳しく指導してとにかく黙らせるというのはナンセンス。静かにすることの価値を子供たちに理解させ、実行できる力を養うことはとても重要な指導です。

どのスポーツにも、遊びにも、一定のルールがあるからこそ楽しめます。ルールがなかったら、秩序が乱れてスポーツどころではなくなります。ルールを守って楽しむことの価値を理解する機会をこの時期に設けることは、とても意味のあることです。

 【導入の例】
今日の国語の授業は、全てサイレントで授業を行います。サイレントってどういうことかわかりますか? 音を出さないということです。静かな教室で、静かに交流したり、発表してもらいます。静かに発表ってどうすればいいの? 書いたら伝えられますし、ジェスチャーも使えます。音を出したら負けだと思って楽しんで取り組んでみましょう。

他にも下記のようにいろんなチャレンジが考えられます。どれも言わなくてもある程度できる段階だからこそ成立します。重要なのは楽しんで取り組んでみること。失敗も笑って再度チャレンジできる、そんな学級の風土を醸成していくことです。

【1日〇〇チャレンジのアイデア】

  • 「あ行」は言わないで音読
  • 歩き出す時は右から行う
  • 今日は1日方言で喋ろう
  • 今日は1日誰に対しても敬語を使おう

③ ひみつの友達レターを専科の先生へ

これは、いろんなネーミングで多くの教育書で紹介されている取り組みです。簡単に説明します。

①クラス全員の名前が書かれたカードを用意します。
②子供たちは、クラスの友達の名前が書かれているカードを受け取ります。
③誰のカードを持っているか誰にも言ってはいけません。
④名前の書かれている人を観察して、よかったところを書きます。
⑤帰りの会でカードを本人にプレゼントします。

これを、誰にも言わず、専科の先生に行うのです。子供たち同士はお互い誰に書いているか教えてはいけないルールになっていますから、まさか全員専科の先生に書いてたなんて思いもよりません。

では渡すぞ!と言う場面で、専科の先生のところにみんなで押しかけます。もらった専科の先生も嬉しそう、子供たちもサプライズができて楽しそう。そんな時間を共有します。こうした変化球も、時に学級を盛り上げてくれます。

6月危機を乗り越える手立て② 先生が教室にいない場面

①授業の開始5分で訓練する

チャイムと同時に授業を開始して、チャイムと同時に授業を終える。これは疑う余地もないくらい正しいことですし、教師もできることなら毎時間そうしたいものです。しかし水泳が始まると、プールの水温を確認しに行ったり、片付けをしていたりと、イレギュラーな対応をしなくてはなりません。だからこそ事前に練習しておくのです。前もってやることがわかる(見通し)、流れがわかる(順序)ことで、人はできるようになります。

例えば、国語なら授業参観でも行う常時活動で紹介させていただいた漢字の学習がそれに当たります。まず、プールが始まると先生はどうしても授業に間に合わないことがあること、授業のチャイムで始められないことがあること、でもみんながただ待っているだけではもったいないことを伝えます。次に、そうならないためにできることは何か、話します。

【導入の例】
水泳が始まると、先生はどうしても授業に間に合わないことがあります。なぜなら水温を確認しなくてはならなかったり、消毒のための塩素を撒かないといけなかったりしなければならないからです。とても休み時間の10分では戻って来られないことがあります。そんなことがあったら、ごめんなさい。

そんな時に先生が一番心配なのは、チャイムが鳴ってもみんながおしゃべりしていて勝手に休み時間にしてしまったり、授業時間に間に合わなかったりすることです。勝手に休み時間にして、ちょっかいを出し合って、怪我でもしたら一番最悪でしょう。でもね、そんな時、どうしたらいいかな? 毎時間やっている新出漢字の学習をみんなで進めてもらえませんか? もしこれができたらすごいことだよ。いつもやっていることだし、できるんじゃないかなって思っているんだけど、どうかな?

練習の際は、先生は一言も喋らず、笑顔で後ろから見届けます。2回目の練習は廊下から見守りましょう。3回目は、もう少し離れた廊下の隅で5分間任せてみましょう。

算数なら、10マス計算や100マス計算、日直問題として日直がこれまでの学習の中から2問ほど問題を出しても良いでしょう。社会科ならば地図記号クイズや都道府県クイズ、理科ならば昆虫クイズなどをタブレットで作っておいて、初めの5分間は問題を出し合う時間にします。

大切なことは、チャイムによって気持ちが切り替わり授業が始まること。これまでは先生がいて成立していたものを、先生がいなくても子供たちの気持ちが授業に向くようにしていくことです。こういう先生がいない時間だからこそチャレンジをする。そんな心意気で行ってみてはいかがでしょうか。

②授業の間5分で練習する。

授業の途中で先生がいなくなってしまうこともあるかもしれません。こうしたイレギュラーに対応できるようにするには、そんな時どうすれば良いのか、見通しと順序がわかるように事前に教えて、練習しておくことです。

手始めに、話し合いの時、教室から1分抜けてみます。廊下で声を聞きながら、1分後に戻ります。

【先生の言葉】
今、どうしても1分ぐらい教室を抜けなくてはならなくていなかったんだけど、みんな何してた? 話し合いを続けてくれていたよね。ありがとう。どうしても抜けてしまうことがこれからもあるかもしれないけど、今日のように学習を続けてほしいなあ。でも、もし何したらいいかわからないこともあるよね。そんな時は、ひとまず何ができるかな?

このように話し、解決方法を事前に確認しておきます。私が授業を担当する学級では、デジタルドリルで「いざという時問題」と名付けられたドリルが配信されています。問題数は300問程度あります。本当に先生が戻って来なくて、授業が始まってしまったら、それに取り組むことになっています。

③自走できる学習者へ

本来、学びとは、学習者が学びたくなって主体的になるものです。これまで紹介してきたことは、学習に対してあまり前向きではない学級で実践してきた例がほとんどです。理想を言えば、先生が教えるのではなくて、先生が伴走しながら学習者が主体的に学んでいく学習が理想なのかもしれません。しかし全ての教室がそのように育っていくわけではないし、学年、学級の雰囲気、学力、人間関係など様々な要因があります。それらを加味して、「学び合い」や「自由進度学習」には取り組んでいくようにしています。

6月危機を乗り越える手立て③ 暑い日&雨の日の教室レク

① 増殖するボク

「相手の名前を呼ぶと好感がもたれる」という説を聞いたことはありませんか? ビジネスや恋愛で用いられるテクニックです。「おはよう!」より「りょうさん、おはよう!」。「話そう」より「たかとさん、話そう!」の方が心地よく感じるものです。名前を気軽に呼び合える教室が、心地よく感じるものです。名前を気軽に呼び合える教室が、心地よい教室の条件だと私は考えています。

【取り組み方】
①教室の中を自由に歩いて、ペアをつくります。この時、「長谷川さん、やろう!」と名前を言って声をかけられると◎です。

②お互いにフルネームで自己紹介をします。
「こんのさとるです。よろしくね!」「はせがわともみです。よろしくね!」

③じゃんけんをします。負けた人は、勝った人の名前を、自分の名前の上に追加していきます。
(例)「はせがわともみ・こんのさとるです」(自分の名前の上に負けた分だけ名前が追加され、言うのが大変になっていきます)

④「ありがとうございました」と握手をして、次のペアを探しにいきます。

⑤ここまでを繰り返します。

 

慣れてきたら、最も長い名前を言えた人が優勝などのルールを追加します。これにより、じゃんけんで負けても負けではなくなります。また、好きな食べ物や得意なこと、誕生日などで行うなどのアレンジも考えられます。

参考リンク:学級レクリエーションに最適!クラス作りに役立つ楽しいゲーム5選https://kyoiku.sho.jp/4113/

② もっているのだ〜れ?

協力してみんなにバレないようにするドキドキ感を味わうと、一体感、親近感が湧くものです。外に出て思いっきり走ることはできないけれど、心を揺さぶることはできます。そんな時間が雨の日のモヤモヤ、暑い日のだるい空気感を払拭してくれることでしょう。

【取り組み方】
①班で一つ消しゴムを用意します。
②右から順に消しゴムを手渡ししていきます。(または渡すフリをします。)
③最後の人まで渡したら、誰がもっているか回答をしてもらいます。
④当てられたら勝ち、当てられた人が5人以内だったら出題班の勝ちです。

③ しりとり応援団

しりとりは多くの人が知っている遊びです。このレクリエーションは、しりとりに大きな声を出すアレンジを加えたものです。いつも教室で「うるさい!」と言われてしまう元気の有り余る子が活躍するチャンスです。

【進め方】
学級で2つのチームに分かれます。初めは1人対1人で行うと理解しやすいです。2人対2人、4人対4人とだんだん人数を増やしていきましょう。


①団長を決めます。団長は、次に何を言うか、最終決定権を持ちます。わかりやすいよう、椅子に立ちます。例えば、「いぬ!」「いも!」「いちご!」などみんなから出た意見から「いちご! 次はいちご!」とみんなに伝達する役割です。

②先攻側が「いちご、いちご、いちごに続け!」と言います。言っている間に、後攻側は次に何を言うか考えます。例えば、「ごま」に決まったとしたら、団長が「次、ごまね!」とみんなに伝え、チームのみんなも伝え合います。

③後攻側が「ごま、ごま、ごまに続け!」と返します。

④これを繰り返します。

しりとり応援団

④ NEWじゃんけん列車

じゃんけん列車は、じゃんけんをして負けたら後ろについて段々増えていき、最後まで勝ち続けた人が勝ちと言うレクリエーションです。しかし、このじゃんけん列車は違います。負けたら、先頭の人だけが後ろにつきます。

【進め方】
①ルールを実際に動きながら説明します。
②音楽が止まった時点で長い列全員が勝ちです。
③音楽をかけて、どんどんじゃんけんをしていきます。
④音楽が止まった時の1番長い列が勝ちです。

図を見てください。

あいこは全員解散です。

緩急+ちょこっとアレンジで山場を乗り越えよう!

「魔の6月」だからといって、乗り越えるために新しいことをしなくてはならないわけではありません。ふだんの学級づくりを行ってきた中で、緩急をつけてみたり、アレンジを加えてみたりすることで、十分に楽しめます。しかもそのほうが、基本と応用のように、学級の基本にちょっとアレンジを加えたことが、案外基本がしっかりしてくることも大いにあり得ます。

また外から眺めてみたりすることで、これまで見えなかったことが見えたり、気づかなかったことに気づいたりして、夏休みまでの学級の方向性も見えてくるかもしれません。ぜひ、背伸びせず、無理をせず、ちょっとした工夫を付け加えながらこの6月を乗り越えましょう!

執筆者:紺野悟(こんの・さとる)
埼玉の教育サークル clover 代表。イベントを数多く企画・運営し、価値ある教育情報を広めている。共著『全単元・全時間の流れが一目でわかる!社会科 6 年 365 日の板書型指導案』(明治図書出版)他多数。

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