小1生活「いきものと なかよし」指導アイデア

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1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」
小1生活「いきものと なかよし」指導アイデア バナー

文部科学省教科調査官の監修による、小1生活科の授業案です。1人1台端末を活用した活動のアイデアも紹介します。今回は「いきものと なかよし」の単元を扱います。

執筆/高知大学教育学部附属小学校教諭・廣瀬愛
編集委員/文部科学省教科調査官・齋藤博伸
 高知県公立小学校校長・尾中映里

年間指導計画

年間指導計画(クリックすると表示します)
4月どきどき わくわく 1ねんせい(スタートカリキュラム)
5月がっこう だいすき
6月きれいに さいてね
7月なつが やって きた
8月いきものと なかよし
9月あきを さがぞう
10月あきの おもちゃを つくろう
11月あきまつりを しよう
12月じぶんで できるよ
1月ふゆを たのしもう
2月しん1ねんせいに がっこうの ことを つたえよう
3月もうすぐ 2ねんせい

単元目標

身近な生き物を探したり飼ったりする活動を通して、それらの育つ場所や変化の様子に関心をもって働きかけ、それらは生命をもっていることに気付くとともに、生き物への親しみをもち、適切な世話をし、大切にしようとすることができるようにする。

本単元と関わりの深い幼児期の経験

  • 犬や猫などの中型動物、カブトムシやクワガタムシなどの昆虫を家庭で飼った経験。
  • 園庭にいるトンボやバッタ、コオロギなどを友達と相談したり工夫したりして捕まえた経験。
  • 捕まえた虫の飼い方を図鑑で調べたり、知っている人に聞いたりして飼った経験。
  • 虫との関わりを通して、生命の誕生や突然の死などに直面して命について考えたり、捕まえた虫のことを思って逃がしたり、大切に飼ったりした経験。
  • 各季節に見られていた虫をあまり見かけなくなったこと、落葉の違いや息が白く見えるようになったことなどの気付きから、季節の移り変わりを感じた経験。
  • 虫などの生き物に関わる中で、疑問に思ったことは、図鑑で調べたり、知っている人に聞いたりして解決しようとした経験。

学習の流れ(全7時間)

今までにどんな生き物を見付けたり飼ったりしたことがあるかな?

犬を飼っているよ。

カブトムシの幼虫を飼ったことがあるよ。

学校の中庭でダンゴムシを見付けたよ。

【小単元1】いきものを みつけにいこう(3時間+常時活動)

【単元のはじめに行うアンケート例
①むしはすきですか。
②むしをさわれますか。
③かいかたをしっていますか。
④ようちえんやほいくえんで、つかまえたりかったりしたことはありますか。
⑤いえでいきものをかっていますか。
⑥いきものとなかよしですか。
⑦なぜそうおもいますか。

生き物についてのアンケートに答えることを通して、幼児期や小学校生活で見付けた生き物や、家庭で飼っている生き物について思い出し、友達と交流します。

【物的支援】
単元導入前に、生き物についてアンケート調査をします。そのことにより、子供の実態を把握したり、ICT端末を使ってアンケートに答える(ウェブアンケート機能)という情報活用能力を育成したりすることができます。

①見付けたことがある生き物や飼ったことがある生き物を発表しよう

カブトムシ

生き物にはどんなものがいるか、幼稚園や保育園で生き物と関わった経験などを発表します。発表する中で、虫、魚、犬や猫といった中型動物などの仲間に分類できる面白さに気付きます。

生き物と関わってきた楽しい経験を話す場面を設定することで、子供が「見付けに行きたいな」「学校でみんなと育てたいな」という思いをもてるようにします。

また、「春見つけのときにテントウムシがいたね」「学校にはどんな生き物がいるかな」と子供に問いかけ、今後の活動への期待感を高めたり、問いを生み出したりすることができるようにします。

小1生活「いきものと なかよし」小単元1「いきものをみつけにいこう」板書例

②どこにどんな生き物がいるか予想して探そう

ダンゴムシを見付けた
ダンゴムシを見付けました。

ICT端末を活用して、運動場、植物園、中庭などの写真に生き物がいそうなところを書き込み、探しに行く場所の見当をつけます。

「草があるところに隠れているよ」「幼稚園では、石をひっくり返すとダンゴムシが出てきたよ」「ここはバッタが隠れやすそうだよ」「こっちの草むらにも、バッタがいそうだよ」など、自分の知っていることや経験を友達と伝え合います。

学校の中で生きものを探す子供たち

学級で伝え合い交流した後、実際に生き物を探します。「石をどけると、やっぱりダンゴムシがいたよ」「畑の草を揺らしたらバッタが出てきたよ」などと、友達と対話しながら虫を探したり捕まえたりします。

【空間的支援】
教室ではペアやグループの机配置で、虫がいそうな場所を予想する活動を行うと、友達との心の距離も近くなり、会話の中でこれまでの経験が表現されやすくなります。

【教師の支援・援助】
教師は、子供同士の伝え合い交流の中で、子供の思いや願いを把握することに努め、実際に虫を探したくなるように授業展開を工夫します。子供がわくわく感をもちながら生き物を探したり、生き物を捕まえたりした達成感を味わったりする経験を積むことは、生き物を飼いたいという思いや願いにつながります。そのためにも、子供の活動を見取りながら、言葉かけをしたり一緒に探したりするとよいでしょう。

③生き物発見カードを書こう

生き物を見付けに行った後は、見付けたり捕まえたりした生き物の様子や見付けた場所について発見カードに書きます。

●思考力の芽生え
これまでの経験を生かしたり、どんな場所にどんな生き物がいるかを予想したりして探しながら、生き物の育つ場所や季節に気付き、生き物を繰り返し探そうとします。

●協同性
友達と実際に生き物を探す中で、「きっと、あの場所にいると思うよ」「たくさんいるかな?」などの互いの思いや考えを共有し、虫を捕まえることに向けて、考えたり、工夫したり、協力したりし、「本当にいた!」と考えていたことが確かなものになると自信をもつようになります。

1人1台端末活用のポイント

ICT端末で撮った写真を見せ合うことで、「そういえば、ここで○○を見付けたよ!」とエピソードを思い出しながら、伝え合い交流することができます。「ぼくの幼稚園にもプランターがあって、プランターをお引越しさせるとダンゴムシがいたよ。だからきっとこのプランターの下にもダンゴムシがいると思うよ」と、経験を基に生き物がどこにいるのか予想することができるようになります。

評価規準

知識・技能:生き物には、それぞれ住みやすい場所があることやその特徴に気付いている。

思考・判断・表現:生き物がいそうな場所を予想しながら探したり、生き物のことを振り返りながら絵や言葉動作などで表現したりしている。

【小単元2】いきものと なかよくなろう(4時間)

①生き物の飼い方を調べよう

バッタ、キリギリス、ダンゴムシ、コオロギなどの実際に捕まえた生き物を友達と協力して飼います。住処と餌を教科書や図鑑などで調べたり、同じような環境となるようにしたりします。

【物的支援】
単元に入る前から生き物の図鑑を教室に置いておくと、生き物に興味をもったり、図鑑を読むことができたりします。

②生き物と仲よくなろう

生き物をじっくり見て気付いたことを絵や言葉で表したり、ICT端末で生き物の声や動きを撮影したりします。

生き物を触ることで、生き物との心理的距離が近付きます。

バッタのバッタンが鉛筆を持っている! 力持ちだよ。

コオロギの足はぎざぎざのとげがついているし、曲がっているよ。人間がジャンプするときも1回しゃがむ感じになって足が曲がるよ。似ているね!

餌を食べているよ! うんちもいっぱいしている。生きている証拠だね。

上記のように、気付いたことを友達や教師に動作化しながら伝え合い交流します。

休み時間にも生き物を探しに校庭へ行きます。繰り返し同じ場所でコオロギを探すことで、「先生、コオロギがだんだんいなくなってきたよ。寒くなってきたからかな」と、季節の移ろいと関係付けながら話します。

【教師の支援・援助】
生き物に名前を付けたり、毎日健康観察をしたりすることで、子供が生き物に愛着をもち、心理的距離が近付くようになります。また、生き物への面白さや不思議さへの気付きを教師が共感したり、一緒に生き物について調べたりすることも大切です。

◆他教科との関連
生き物と関わり、子供の心が動いたタイミングで日記帳に書く活動を取り入れたり、諸感覚を使って観察したことを国語科の書く単元と関連させて指導したりするとよいでしょう。また、体育科の表現遊び「いきものランド」で生き物になりきって、その特徴を捉え全身で踊るのも楽しい活動です。

【教師の支援・援助】
休み時間も生き物を校庭へ探しに行ったり、毎日、世話をしたりする子供の姿を価値付けることで、生き物と関わる意欲が持続するようにします。

【教師の支援・援助】
生き物と関わっていると、生き物が死んでしまうこともあります。その際は、生き物の本当の住処ではないところで長生きさせることの難しさに気付いている子供の言葉に共感し、「もっと長生きできるように住処をレベルアップさせよう」と次の目標を持てるようにします。虫かごの中など、これまでの住処と図鑑などを比較させ、より良い住処になるように工夫する子供の姿を価値付けるようにします。

【教師の支援・援助】
むやみやたらと触ることで生き物が弱ってしまうと考える子供の発言を取り上げ、かわいがることと大切にすることのバランスを子供自身が考え、友達と対話を繰り返し自己決定できるようにします。

小1生活「いきものと なかよし」小単元2「いきものと なかよくなろう」板書例

③生き物と関わってきた自分を振り返ろう

単元の終盤では単元全体の活動を振り返ります。観察したり世話をしたりした経験の中から、特に心に残っていることを「いきものニュースベスト3」とランキング形式で表現したり、生き物に向けてのメッセージを書いたりします。

子供自身が導入時に実施したアンケートと比較することで、「はじめは触れなかったけど、今は触れるよ」と自分自身の変容に気付きます。

【単元終盤に行うアンケート例】
①いきものとなかよしですか。
②さわることができましたか。
③おせわができましたか。
④生きているしょうこが見つかりましたか。
⑤ともだちになりましたか。

【物的支援】
再度アンケートを行い、単元の導入時に子供が目指した姿に合わせてアンケートを作り実施し、子供が自分の成長を感じられるように支援します。

【教師の支援・援助】
アンケート結果を基にして単元を振り返ることで、授業で生き物を探したり捕まえたりしたこと、常時活動で、生き物を工夫して育てること、カマキリの卵の様子など、興味のあることをじっくりと細部まで観察することなどの活動と関連付けながら、自分自身の成長に気付きます。

●自然との関わり・生命尊重
毎日、生き物と関わる中で、生き物の面白さや不思議さに気付き、「かわいいね」「長生きしてほしいね」という思いをもちます。また、生き物が弱ってきたことで、友達と「外に逃がしてあげたほうがいいんじゃないかな」「なにか方法があるかもしれないから調べてみようよ」など、生き物との関わり方を見直し、どうしてあげることが一番よいのかを考えようとします。

●思考力の芽生え
生き物の様子を観察する活動を通して、餌の減り具合や生き物の元気さを根拠に、生き物にとってよりよい飼い方を教科書や図鑑などで調べたり、家族、上級生や先生などの生き物に詳しい人に聞いたりしたことを実際に生かして世話を続けようとします。

●協同性
友達と一緒に生き物を飼う活動を通して、生き物をできるだけ長生きさせようという思いをもち、生き物を飼うために必要なことを教科書や図鑑で調べたり、役割分担をして世話をしたりします。

1人1台端末活用のポイント

ICT端末をいつでも使えるようにしておくことで、生き物の体のつくりや特徴的な動きなど、子供の心が動き、記録に残したいと思ったタイミングと一致します。

また、子供がいないときに虫の鳴き声が聞こえたり夜に活発になったりする虫がいるので、その様子を教師が録画しておき、子供に見せることで新しい発見につながるようにします。

評価規準

知識・技能:生き物は生命をもっていることを、生き物の様子や変化から気付いている。

思考・判断・表現:生き物の立場に立って関わり方を見直しながら世話をしたり、そのことを振り返りながら表現したりしている。

主体的に学習に取り組む態度:飼っている虫に親しみや愛着をもったり、自分の関わりが増したことへの変容を実感したりし、継続的に虫と関わろうとし、これからも生き物を大切にしようとしている。

参考資料 子供の変容

資料1:Aさんの変容

【単元はじめのアンケートより】
幼稚園では、クラスで生き物を捕まえたり飼ったりした経験があります。

「むしはすきですか?」というアンケート項目に「はい」と答えています。

家庭で飼っている犬のことが大好きです。

【単元序盤の姿】
バッタやコオロギなどの虫を触ることができません。

捕まえた虫を観察する活動の際、虫かご越しに見ることも抵抗を感じているようで、表情が終始こわばり、活動への参加が難しかったです。

【単元中盤の姿】
Aさんと仲のよい2人の友達が生き物をかわいがる姿を見たり、「一緒に触ってみよう」と誘ってくれたりしたことで、虫の世話をする際、「餌を新しくしてあげた方がいいよ」と提案したり、コオロギを触ってみようと挑戦したりする姿が見られるようになりました。

【常時活動・単元終盤の姿】
休み時間、両手で何かを包み、「先生! 何が入っているでしょう?」と笑顔でAさんが言ってきました。教師は、おそらく何かの生き物だなと思いながらも「ええ? 何かな?」言うと、包んでいた手をそっとずらし、「じゃあん! コオロギでした!」と見せました。「Aさん、コオロギを触れるようになったの?」と教師が驚くと、「うん、かわいくなってきた」と得意げな表情で言いました。

その後、数日同じようなやり取りが続きました。

資料2:Bさんの変容

【単元序盤の姿】
生き物は好きで、どの虫も触ることができますが、カマキリには少し恐怖心があります。

家には虫かごがたくさんあり、カブトムシの幼虫やバッタなどを捕まえたり飼ったりしています。

【単元中盤の姿】
授業で捕まえたバッタやコオロギを家に持ち帰って餌をあげ、翌日学校に持ってくることを繰り返しました。

家から大きなカマキリを持ってきました。

図鑑で生餌以外の餌を調べ、小さく切った肉をカマキリの目の前で動かすと食べることがあるという情報を得ました。

【常時活動・単元終盤の姿】
チーズ、ベーコン、ささみ肉を家から持ってきて、学校で食べさせようとします。

カマキリがささみ肉を食べたことを友達と喜んでいました。

カマキリに触るときの恐怖心はまだあるものの、友達に助けてもらいながら自分でもカマキリを持てるようになりました。

【Bさんへのアンケート・インタビューより】
幼稚園では、生き物を捕まえることはしていましたが、飼ってはいませんでした。

幼児期に、家庭でカブトムシを飼っていました。

もともと生き物は好きです。

本単元学習後は、生き物がもっと好きになりました。それは、カマキリが触れるようになったり、色々な生き物を育てたりしたからです。

参考資料/
・『あたらしいせいかつ上 教師用指導書 朱書編』(東京書籍)
・『小学校学習指導要領解説 生活編』文部科学省 編(東洋館出版社)
・『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 小学校生活』文部科学省 国立教育政策研究所
・『幼稚園教育要領解説』文部科学省 編
・『保育所保育指針解説』厚生労働省 編

写真/写真AC

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