「係活動:成果物発表会」子供たちの可能性を引き出す!学級経営&授業アイデア#3
自ら考え、活動したり学習したりする子供たちの可能性は無限大。そうした子供の内に秘めている可能性を引き出すための「学級経営&授業アイデア」を紹介する連載です。『教室ギア56』(東洋館出版社)などの著書をもつ鈴木優太先生が、学級活動、教室環境、授業アイデアなどの中から、毎月1本厳選して解説します。第3回は、係活動が活発になる「成果物発表会」の実践を取り上げます。
執筆/宮城県公立小学校教諭・鈴木優太
目次
できるようになったことも披露する「成果物発表会」
「アクションプラン」を自分たちで設定できるようになると、子供たちが係活動に主体的に取り組むようになります。2023年度の連載では、「係活動アクションプランシート」の提案をたくさんお読みいただき、ありがとうございます。
今回は、係活動がバズる実践をもう一つご紹介します。
それは、「成果物発表会」です。それぞれが取り組んだ成果を発表する係活動のお楽しみ会。「作ったもの」だけでなく、「できるようになったこと」も披露し合います。例えば、ザ・お笑い係なら自分たちで考えたお笑いネタを披露するなどです。
下記は、昨年度2年生の子供たちと実践した第1回のプログラム例です。
①準備(5分)
②アピールタイム(各係30秒程度)
③前半(12分)
④後半(12分)
⑤片付け(5分)
大きな行事の合間をぬって年4回程度実施します。目安は、7月、9月、12月、2月です。各回の終了直後に、次回の具体的な日時の告知をすることが肝心です。すると、時間(時数)はかけずとも、期間をかけて係活動が活発に行われていきます。係活動に訪れがちな停滞期も何のそのです。
①準備:ホワイトボードと名前マグネットで教室の俯瞰図を作成
教室内に、それぞれの係が発表ブースを設けます。屋台村のようなイメージです。必要のない机や椅子は極力廊下に出し、教室をなるべく広く使えるようにします。どの係が、どのあたりの場所で行うかは、事前に係の代表が話し合って決めます。
ホワイトボードを使って、教室を俯瞰した図に「名前マグネット」を貼っていくとスムーズです。ホワイトボードは当日も会場図として設置します。
②アピールタイム:実物提示&実演で係の魅力を伝える
アピールタイムは、黒板前で活動期間中に取り組んだことや、ブースでこの日にやることをアピールします。係のメンバーが次々と出てきて、30秒程度ずつテンポよく行います。
ワクワクマンガ係です。今まで描いたマンガを全作品展示します。
すいませ~ん! 「くちびる君」を描いてください。さらさらさらさら、どうぞ! このように、リクエストしてもらったオリジナルキャラクターをその場で描いてプレゼントします。ぜひ、来てください。
ソロキャンプ係です。問題です! デーデン! これは、ただのゴミ袋に見えますが、とても便利な手作りキャンプグッズです。何でしょう?……正解は、かっぱです。このようなサバイバル術をたくさん紹介します。よろしくお願いします。
どーもー、ザ・お笑い係です。コント、もちつき。ぺったん、ぺったん、ぺったん…もっちもち! ぺったん、ぺったん、ぺったん……筋肉~もりもりっ! ぺったん、ぺったん、ぺったん……来てねーーー! 楽しいお笑いネタを連発します。
スピーチだけでなく、実物を見せたり、実演したりするように促しましょう。
③前半&④後半:自由に係のブースを行き来する
前半と後半は、自由に係のブースを行き来する時間です。店番として係の発表をする時間と、お客さんとして係の発表を見る時間が「どちらも同じくらい」になるようにします。
うまいことやってみて~。
このように、思い切って子供たちに委ねてみましょう。
3分ぐらいずつで交代しようよ。
前半の半分はマンガ係、後半の半分はミュージック係の仕事をするね。
お客さんの数が少ないみたいだから、1回、遊びにいこうか?
複数の係を掛け持ちする子供も、その場の状況に応じて、調整しながら上手に対応します。厳密にシフト表のようなものを作る子供もいるのですが、臨機応変さも大切です。お互いの成果を「いいね、いいね」と肯定し合いながら、ゆるやかに楽しみましょう。
実践改善:招待タイムの導入で、他学級や他学年と交流
第2回の成果物発表会からは、「他クラスの人たちも招待してみたい」という声が子供たちから挙がりました。そこで、成果物発表会を2校時の25分間と3校時の20分間に分け、業間休み時間に「招待タイム」を設けました。
①準備(5分)
②アピールタイム(各係30秒程度)
③前半(12分)
④招待タイム(業間休み時間)
⑤後半(12分)
⑥片付け(5分)
まず、同学年の他クラスに声をかけました。給食時間に数名の子供たちが教室におじゃまし、宣伝をさせてもらいました。アピールタイムと同じようにです。希望者による参加としたのですが、とてもたくさんやって来てくれました。これに子供たちは大興奮。第3回は1年生を、第4回は1~6年生を招待し、ダイナミックな異年齢交流活動に広がっていきました。学年合同で取り組むのもおすすめです。
「成果物発表会」の劇的な体験の刺激も相まって、日々の係活動の「アクションプラン」がより具体的で、工夫あふれるものに進化していきました。
PBL(Project Based Learning=課題解決型学習)における、プロジェクト計画に不可欠な7つの要素は以下の通りです。
【プロジェクト計画に不可欠な7つの要素】
①挑戦的な問題や疑問
②継続的な探究
③「本物」を扱う
④生徒の声と選択
⑤振り返り
⑥批評と修正・改訂
⑦成果物を公にする
参照:スージー・ボス+ジョン・ラーマ―著 池田匡史・吉田新一郎訳『プロジェクト学習とは 地域や世界につながる教室』(新評論)
係活動に「成果物発表会」と「アクションプランシート」を取り入れることで、プロジェクト型の学習活動を豊かに積み重ねることができるのです。
1~6年生、どの学年でも実践することができます。また、1年間のどのタイミングからでも始められます。「成果物発表会」と「アクションプランシート」による係活動にぜひ取り組んでください。
鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア56』『教室ギア55』(共に東洋館出版社)、『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)など、著書多数。
参照/鈴木優太『教室ギア56』(東洋館出版社)、鈴木優太『教室ギア55』(東洋館出版社)、鈴木優太『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)、多賀一郎監修、鈴木優太編、チーム・ロケットスタート著『学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク』(明治図書出版)
イラスト/高橋正輝
【鈴木優太先生 連載】
・自治的な学級をつくる12か月のアイデア(全12回)
・子供同士をつなぐ1年生の特別活動(全12回)
・どの子も安心して学べる1年生の教室環境(全12回)
【鈴木優太先生 ご著書】
教室ギア56(東洋館出版社)
教室ギア55(東洋館出版社)
「日常アレンジ」大全(明治図書出版)
学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク(明治図書出版)