小学校理科の “教材研究” ってどうやるの? 【理科の壺】
教材研究はとても大切です。各授業では、何を学ぶ必要があるのか、授業の目標と、何をどう評価するのかについて、あらかじめ確認しておきたいですね。しかし、どのように授業を進めるのか、そして、どこまでできるかは、子どもたちの様子や先生の力量によって変わってきます。つまり、授業の方法は1つではありませんし、先生自身が「うまくいきそう」と思える方法でないと実際の授業でもうまくいきません。そこで、教材研究が必要になってくるわけです。どのように皆さんは教材研究をしますか? 優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?
執筆/東京都公立小学校主任教諭・木月里美
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
新年度になり、初めてもつ学年や今年から理科をやることになった先生もいらっしゃるのではないでしょうか。「教材研究をしたいけれど、何をやったらよいのかわからない」。
そんなときは、次のような手順で進めてみてはいかがでしょうか。
STEP 1 教科書(指導書)を読む
これは、みなさん必ずやりますよね。理科の教科書を見るときは、
①学習の流れを確認する
②使用する教材を確認する
③注意事項(安全指導)の内容を確認する
の順に確認していくとよいでしょう。特に、最後の安全指導の部分は教科書だけでなく、指導書にも細かく書かれていることが多いので、必ず目を通すようにします。
STEP 2 使用する教材を使ってみる
理科では、観察や実験のための器具がたくさん出てきます。学校にある実験器具の形状や仕様が教科書に載っているものとは違うことも多々あります。
自分の学校にある器具を確認し、実際に教科書と同じような活動を行ってみることが大切です。
例えば、3年生や6年生で太陽の位置を確認するために遮光板を活用しますが、遮光板を通すと太陽がオレンジ色に見えるものや緑色に見えるものなどがあります。教科書の示し方と違っても、実際に前もって分かっていると、慌てずに指導することができます。
4年生の金属、水、空気と温度の学習で、沸騰したり、水を凍らせたりする実験は、時間がかかります。事前に実験を行って、授業の中でどれくらいの時間の確保が必要か確かめておきましょう。また、器具の個数を確認しておくことも大切です。何セット使用できるかによって、グループの人数を調整する必要が出てきます。
STEP 3 複数の教科書会社の教科書の内容を比較する
少し時間の余裕があるときや、研究授業を行うことになったとき、観察や実験がうまくいかないときにおすすめの方法です。小学校の理科の教科書は6社ほどが発行しています。自分の自治体で選択している教科書以外の会社の教科書をいくつか持っておくと教材研究に役立ちます。学習内容は同じでも、教科書会社によって観察や実験の方法は異なることが多々あります。教科書を見比べて、学校の環境や児童の実態にあった方法を選択するとより教育効果を高めることができます。
<実は、教科書によってこんなに違うのです>(令和2年度版の教科書の内容です)
6年「人のからだのつくりと働き」唾液を使った消化の実験
A社 チャックつきの袋にストローで唾液を入れ、湯で温める。
B社 唾液をしみ込ませた綿棒を小さなプラスチック容器に入れ、手で温める。
4年「金属、水、空気と温度」空気の温度による体積変化を調べる実験
A社 試験管の口に石鹸水のまくを付け、石鹸水のまくの変化で調べる。
B社 ガラス管をゼリーに挿し、ゼリーの動きで調べる。
C社 ガラス管を水につけ、水の動きで調べる。
忙しい毎日の中で、教材研究を行う時間を確保するのは大変ですが、ぜひこの3ステップを参考に理科の授業準備を進めてみてください。
イラスト/難波孝
「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
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<執筆者プロフィール>
木月里美●きづき・さとみ 東京都公立小学校主任教諭。大学では理科専攻にて学び、卒業後は学級担任、理科専科を経験。教科書の編集委員として教科書作りに携わる。共著に「これからはじめる “GIGA” 全学年・全単元×1人1台端末×活用事例 小学校理科5・6年」(日本標準)、「小学校理科『フローチャート型』授業ガイド」(東洋館出版社)など。
<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。