小6特別活動 学級活動編「もうすぐ中学生」指導アイデア
文部科学省視学官監修による、小6特別活動の指導アイデアです。2月は、<「もうすぐ中学生」学級活動⑶ア>です。
これまでの学校生活や自らの成長について振り返りながら「なりたい自分」を思い描き、「どのような中学生になりたいのか」「そのためにはどのようなことに取り組んだらよいか」などについて話し合い、具体的な目標を決めていく活動を紹介します。
執筆/埼玉県公立小学校教諭・後藤 敦
監修/文部科学省視学官・安部恭子
埼玉県公立小学校校長・大澤 崇
目次
年間執筆計画
4月 学級活動⑶ ア 6年生になって
5月 学級活動⑴ 6年〇組スタート集会の計画を立てよう
6月 学級活動⑵ ウ(イ) SNSとの付き合い方
7月 学級活動⑴ 1学期がんばったね集会をしよう
9月 学級活動⑴ 夏休み発表会をしよう
10月 学級活動⑶ ウ 自主的に取り組む家庭学習
11月 学級活動⑴ 学級読書祭りをしよう
12月 学級活動⑵ ウ 病気の予防
1月 学級活動⑴ オリジナルカルタをつくろう
2月 学級活動⑶ ア もうすぐ中学生
3月 学級活動⑴ 学級お別れ会をしよう
本時のねらい
卒業まであと2か月。「中学校への進学」という新たなステージに向けて、明るい見通しをもち、前向きな意思決定ができるようにします。これまでの学校生活や自らの成長について振り返りながら「なりたい自分」を思い描き、「どのような中学生になりたいのか」「そのためにはどのようなことに取り組んだらよいか」などについて話し合い、具体的な個人目標や実践方法を決めていきます。
事前の指導
① 自らの成長や中学校生活に向けた期待等に関わるアンケート調査を行う
6年生の1年間でがんばったことやできるようになったこと、成長したと思うことは何か事前に題材についての意識を高めます。また中学校への進学を控え、どのような気持ちをもっているのか、学校生活に関するアンケート調査を行い、事前に題材についての意識を高めます。このアンケートは本時の導入場面で活用し、子供たちが課題意識をもって、授業に臨むことができるようにします。
※学級の子供の実態により、6年生の1年間と限定せず、これまでの小学校生活を振り返ってがんばったことや成長したと思うことについて聞くことも考えられます。
<アンケート質問例>
Q 6年生でできるようになったことやがんばったことは何ですか。
Q この1年間でどんな力が付いたと思いますか。
Q どんな中学生になりたいですか。
Q 中学校生活で楽しみなことはなんですか。
Q 中学校生活で不安なことはありますか。それは、どんなことですか。
など
② 中学校生活について家族や学校の先生にインタビューして、情報収集をする
子供たちが自ら調査活動をすることで、課題を自分事として捉えられるようにするとともに、より前向きに課題解決ができるようにします。また、事前に家庭へのお便りなどでインタビューの協力についてお願いしておくことで、学習の意図や目的について共通理解を図ることができ、より効果的な調査活動が期待できます。
<家庭へのインタビュー内容の例>
●中学校時代の思い出は何か。
●中学校生活で一番がんばったことは何か。
●どんな校則があったか。
●どんな学校行事があったか。
●小学校生活との一番の違いは何か。
など
また本時において、子供たちが「なりたい中学生の姿」をより具体的にイメージしていくことができるよう、進学先の中学校と連携し、先輩や卒業生に充実した中学校生活についてインタビューした動画などを教師が準備しておくことも考えられます。これまでも中学校区として小中で交流がある地域など、学校の実態によっては、子供たちが直接中学生にインタビューすることも考えられます。
いずれにしても教師が中学校側に授業の意図やインタビューの目的、どのようなことを話してほしいかについてしっかりと伝えるなど、事前に打合せを行い、中学校の協力を得るようにします。また、可能であれば、実際に中学生が話す内容を確認しておくことにより、インタビューがより適切なものとなります。
本時の指導
① 子供たちが課題を実感できるようにする(つかむ)
授業の導入では、本時の題材を自分事として捉えることができるようにします。
具体的には、キャリア・パスポートなどを活用しながらこれまでの学校生活を振り返ったり、事前のアンケート結果をもとにしたりしながら「これまでの自分はこんなことをがんばってきた」と認識できるようにします。また、中学校生活で楽しみにしていることや不安に思っていること、どんな中学生になりたいかなどについて具体的な理由を付け加えながら発表し合います。
学級活動⑶では、なりたい自分を目指すことができるように自己実現を図る力を育てていくことが大切になります。「がんばってきた自分」や「成長してきた自分」を見つめられるようにして、子供たちが新たな学校生活に希望や期待感をもてるようにします。
中学校生活を楽しみにしている人が多いようですが、どのようなことが楽しみですか。
ぼくは部活動が楽しみ。
体育祭が小学校よりも広くて、迫力があってかっこいいね。
中学生になるに当たって不安もあるようですが、どんなことですか?
※不安に感じている子供が、自分と同じ思いの友達もいるのだ、と安心することができるようにします。
② 子供たちが自分の可能性に気付くようにする(さぐる)
「つかむ」の段階で共有したそれぞれの思いを踏まえ、将来を見通すことで、中学校生活に対して明るい希望やあこがれの気持ちをもてるようにします。
例えば、事前の活動でそれぞれが調査した中学校生活の様子についてお互いに確認したり、先輩や卒業生からのインタビュー動画などを通じて充実した中学校生活について聞いたりすることで「次のステージでもまたがんばろう」「自分もこんな生き方をしたい」という期待感や明日への意欲につなげることができます。
中学校生活の楽しさややりがいについて考え、どのような中学生になりたいか考えて
いきましょう。
私も先輩たちのように部活動も学習も目標をもってがんばれるような人になりたいな。
中学校生活の様子や、学習と部活の両立について知ったら、自信をもってがんばれそうな気がしてきたぞ。
<ICT端末の活用例>
ICT端末を活用し、中学校生活の写真やインタビュー動画をクラスの共有フォルダに入れて、あらかじめ自由に見られるようにしておくのもよいでしょう。子供たちの中学校生活への期待感を高め、楽しみに思う気持ちがもてるような素材を集めるようにしましょう。
③ 解決方法等について話し合う(見つける)
「さぐる」の段階で見えてきた「なりたい中学生の姿」を踏まえ、今からどんなことを意識し、何を努力していくのかについて話し合います。
子供たちの思考を活性化し、できるだけ多様な解決方法を考えられるようにするために、マンダラート(マンダラチャート)などを活用することも考えられます。また、個人で思考したことは全体で共有するとともに、ゲストティーチャー(中学校の先生など)や教師から子供にはない視点を示したり、より具体的な解決方法について提示をしたりすることも大切です。
<ICT端末の活用例>
自分に合った意思決定をするためにも、できるだけ多様な解決方法について考え、個人やグループで話し合った内容は端末を用いて学級全体で共有するようにしましょう。
得意の国語をもっと伸ばしていけるように読書を続けていこう。
読書の量だけじゃなくて、読む本の分野を広げるのもいいよね。
私は部活動も勉強もがんばりたいから、自主学習だけじゃなくて体力づくりにもチャレンジしてみようかな。
④ 個人目標を意思決定する(決める)
「見つける」の段階で話し合ったことを生かして、一人一人が具体的な内容や自分に合った実践方法を決められるようにします。
具体的には、自分がなりたい中学生の姿を明確にし、それに向けて取り組むことを決め、めあてのカードに書きます。めあてカードに書いた目標をペアやグループなどで見合い、実現可能な具体的な目標となっているかを確認します。友達のアドバイスをもとに、必要に応じて目標を修正します。学級全体で発表し合い、実践意欲を高めるようにします。
事後の指導
① 決めたことを実践する
意志決定したことを実践し、振り返ります。教師は実践の様子を見ながら、子供たちの努力を認めたり励ましたりしていきます。ペアやグループで実践の進捗状況を伝え合ったり、朝のスピーチなどで実践を紹介したりしながら、子供たちの意欲を継続させていきましょう。
② 定期的に自分の立てた目標を振り返る
一度立てた目標にずっと取り組むのではなく、途中で修正したり、さらにバージョンアップしたりするなど、自己調整が図れるようにします。そのために、帰りの会などで定期的に振り返りの時間を設けるようにしましょう。
時間が空いたときに、本を手に取って読書をするという目標は達成できているな。
読んだ本のジャンルも広がっていて、進んで読書をしようという意識が伝わってきたよ。
ぼくの「毎日休み時間に縄跳びして、体力を付ける」という目標は、委員会の仕事な
どもあって、毎日はちょっと難しいな。
目標の見直しが必要な人もいるようですね。
③ 目標を修正したり、新たな目標を設定したりする
達成状況を踏まえ、必要に応じて新たな目標を設定したり、目標を修正したりします。
目標を達成した人は新たな目標を立て、今の目標について、今後も達成が難しいなと思う場合は目標を修正しましょう。
自主学習については、目標をさらにバージョンアップさせて、1週間に3日以上取り組むことにしよう。
1週間の計画を立てて取り組むといいよ。
「毎日は難しかったから、火曜日と木曜日の休み時間は縄跳びをして体力をつける」に目標を修正しよう。
なりたい中学生に向けてがんばろうという気持ちが、伝わってきますね。
本実践は比較的長い期間での実践となるため、月ごとなどに振り返りを行ったり、帰りの会などで実践状況を確認したりします。
教師は子供たちが活動に取り組む様子や目標の達成状況などを確認し、努力を称賛したり、励ましたり、温かく見守ったりして子供たちの実践意欲が継続するようにしましょう。
構成/浅原孝子 イラスト/高橋正輝
監修
安部 恭子
文部科学省視学官
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。
特別活動の魅力をすべての教師に伝える本!
楽しい学校をつくるには、具体的にどのようにすればよいか。コロナ禍の新しい学校生活様式を踏まえた小学校での特別活動の基本がよく分かります。特別活動を愛する3人による、子供たちとの学校生活を充実させるための「本質」が語られています。
著/安部恭子 著/平野 修 著/清水弘美
ISBN9784098402106