小6 国語科「仮名の由来」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小6国語科「仮名の由来」(光村図書)の全時間の板書例、教師の発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/山梨大学大学院教授・茅野政徳
執筆/福岡教育大学附属福岡小学校・大村拓也
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、平仮名や片仮名がどのように形成され、継承されてきたのかについて基本的な知識をもつことを目指していきます。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
本実践では、仮名や漢字がどのように形成され、継承されてきたのかを知るために、万葉仮名クイズをつくり、仮名の由来について感じたことや考えたことを伝え合う言語活動を設定します。
クイズづくりを通して平仮名や片仮名の由来を調べたり、伝え合ったりする中で「仮名の由来に文字の音や形が深く関わっていること」に気付くことができると考えます。
このような言語活動を通して、仮名がどのように形成され、継承されてきたのかなどについて基本的な知識を得ることができるでしょう。
上記の活動を中心にしつつ、万葉仮名が使われている看板を提示するなどして、「平仮名に変わってきたはずの万葉仮名がなぜあえて使われているのだろう」といった問いを追究する活動に発展させることも考えられます。そうすることで、仮名の由来調べに終わらず、万葉仮名がもつ日本らしさのイメージを活用していく気付きを促すことができるからです。
また、本実践を既習単元の「言葉の変化」と関連付けて取り扱うことで、児童は、言葉がもつ「意味、音、形の変化」をまとまりのある知識として捉えることができると考えます。時代の変化が人々の意識の変化を生み、人々の意識の変化が言葉や文字の変化につながっていることに思いを馳せることができれば、本学習の本質に近づいたといえます。
さらに、万葉仮名から平仮名や片仮名への変遷を毛筆で書くといった活動もおもしろいと思います。書くことで「形」に目が行きますので、毛筆を硬筆に生かすことや、日常の書字への興味・関心を深める上でも有効だと考えます。本単元と、知識及び技能(3)エの書写との関連を図る取り組みに挑戦するのはいかがでしょうか。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 現在の生活の中にある万葉仮名を探す
「私たちが使う平仮名や片仮名の由来を知ることが楽しい。」「分かった、できた、もっとやってみたい。」と子供たちが実感する主体的な学びをつくるには、以下の条件が大切です。
・万葉仮名は生活の中にある「身近な文字であること」に気付く学習であること
・万葉仮名の「音」「形」が読む手がかりとなることに気付く学習であること
・万葉仮名と「日本らしさ」のつながりに気付く学習であること
そのために、現在の生活の中にある万葉仮名を読んだり探したりする学習が有効です。
教科書p186の「うなぎ」と「おそば」を提示し、児童がその読み方について話し合ったり、自分で万葉仮名が使われた看板を探したりする活動を充実させるとよいでしょう。
学習の終末には、調べた万葉仮名を使った看板などを基に「なぜあえて万葉仮名を使っているか」を話し合う活動もおすすめです。和食など日本らしさを感じさせたい場などにおいて万葉仮名が使われることが多いことから、「日本らしさを感じさせるために現代においても多く万葉仮名が使われていること」に気付く学習は、子供たちにとって多くの発見があります。
主体的に仮名の由来が生かされている状況を捉えようとする子供の姿が見られると思います。
このように、現在の生活の中にある万葉仮名を手がかりに子供が自ら読んでみる、書いてみる、調べてみる状況をつくることが、粘り強く様々な角度から追究する姿を生み出します。
〈対話的な学び〉 万葉仮名との対話を促すクイズスライドづくり
本単元のように由来など歴史的な認識を教材として取り扱う際には、対話的な学びとして仮名(学習対象自体)との対話を意識付けるとよいでしょう。
具体的には、「万葉仮名特有の形や音から現在使われる平仮名や片仮名を想像すること」だと考えます。
それに向けて本実践では、万葉仮名と平仮名や片仮名の対応表(教科書p188)をもとに、万葉仮名と平仮名や片仮名の共通点や相違点を整理し、「万葉仮名でつくった言葉から現代の言葉を当てるクイズ」を設定しました。
その活動によって子供たちは、仮名と対話しながら平仮名や片仮名がどのように形成され、継承されてきたのかについて基本的な知識をもつことができるでしょう。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
・変換機能の活用〈 端末活用① 〉
例えばキーボードで1文字打ってスペースキーを押し「あ」を漢字に変換してみましょう。
様々な予測変換で漢字が出てくることと思いますが「安」「阿」など万葉仮名が現れるはずです。
普段何気なくスペースキーを使って変換している中にも、万葉仮名とのつながりを見いだすことができるのです。「い」だったら、「が」だったら、「ぱ」だったらなど変換を試すことで、新たな発見があるおもしろさを子供たちが味わえるとよいですね。
さらに、「波留(はる)」「奈都(なつ)」なども変換すると同様に出てくることを紹介していきます。子供が日々端末で文章の文字を漢字に変換する際に、「これは万葉仮名かな」「どんな言葉に変わっていったのかな」などと意識することで、気付きがふくらんでいきます。
・スライドショーモード機能の活用〈 端末活用② 〉
クイズづくりの活動においては、スライドショーモードを活用するとよいでしょう。
クイズの問題のページで1スライド、答えのページで1スライド、答えの解説のページで1スライドをつくり、スライドショーモードを使って友達とクイズを出し合います。
ただし、大切なのは、クイズの活動を通して、「万葉仮名の音や形のどこを手がかりに答えを出したのか」を共有することです。3枚目の答えのスライドでしっかりと解説をまとめるなど、目的を明確にしたスライドづくりを心がけましょう。
6. 単元の展開(1時間扱い)
単元名: この言葉読めますか? 万葉仮名クイズをつくろう『仮名の由来』
【主な学習活動】
1時
〈 導入 〉
① 日常の中にある万葉仮名を読んだり書いたりする。〈 端末活用 ① 〉
〈 展開 〉
② 万葉仮名を使った言葉で平仮名や片仮名を予想し、言葉を当てるクイズをつくったり出し合ったりする。〈 端末活用 ② 〉
〈 終末 〉
③ それぞれが作成した万葉仮名クイズや、生活の中で使われる万葉仮名の例をもとに、万葉仮名が現代でも使われているわけについて、学級全体で話し合う。
全時間の板書例と指導アイデア
イラスト/横井智美