メーカーに聞く「学校用ドリルソフト」製品レポート #1|ドリルパーク(ベネッセコーポレーション)

1人1台端末の整備により、注目されているデジタルコンテンツ。デジタル教科書は国の施策により配布が始まっている上、採点の手間がないなどのメリットから、教育現場でのドリルソフトの導入率・活用率も高まっている。

では「学校用ドリルソフト」を提供している各社のそれぞれの製品には、どんな特徴があるのか。小学校の教科書が新しくなる2024年度へ向けての対応を含め、自社製品のよさと展望をメーカーの開発担当者に聞いた。(取材・文/村岡明)

今回の取材先

ベネッセコーポレーション 小中学校商品部のみなさん

左から佐々木雅弘氏(部長)、梅山晃広氏(リーダー)、宮林佑多氏(リーダー)

製品概要

ベネッセコーポレーションのドリルソフトは「ドリルパーク」という名称。「ミライシード」という統合ソフトに含まれているソフトです。全国約9,300校に導入されています。問題数は約4.9万問。

問題の質の良さ

ドリルパークの特徴は、まずなんといっても教材コンテンツの中身です。進研ゼミなどからのノウハウを生かし、問題文のわかりやすさ、習熟していくための流れ、難易度調整の細やかさなど、教材の質という面でご評価いただいています。

また、算数・数学など系統だてて学ぶ教科については、AIを使って個別最適の課題を出せるようになっているところも特徴です。ドリルパークは2015年から利用いただいているので、現在330万人の子供たちに使ってもらったデータをAIに生かしています。

紙とデジタルのベストミックス

ドリルソフトの普及により、紙の教材を廃止したところもある一方、紙とデジタルを共存させるというところもあります。紙とデジタル、それぞれに良さがありますので、現時点では両方使いたいという先生が多いのではないでしょうか。

授業は紙で、課題はドリルパークでご利用いただく工夫として、先生がドリルパークの問題を子どもに一律で配信できる機能もあります。

授業の中での活用

今後は、より授業の中で使っていただけることを考えています。たとえば授業の終わりの5分間で解けるよう、単元の復習問題をドリルパークの学習履歴をもとにAIが出題する機能(おすすめ問題)も用意しています。こうした使い方の場合、個別最適化機能は必要なく、教科書準拠の内容が求められるはずです。当社の場合、ほぼすべての教科書会社に対応しているので、その点が強みになるかなと考えています。

また「ドリルパーク」は「ミライシード」という統合ソフトの一部機能です。これに含まれる「オクリンク」「ムーブノート」などの授業用ソフトとも連携させることを視野に入れて開発しています。

先生向けの機能

ドリルパークには、先生の指導目的に添えるような工夫があります。たとえば子供たちに課題を配信する際、配信先や配信する問題の種類、配信時間などが細かく設定できる機能です。もちろん一人一人の学習履歴も一覧できます。

また、先生独自の問題を作成し、配信する機能もあります。作成した問題は、学校内で共有することが可能です。もし自治体全体で導入いただいている場合は、自治体内でも共有できます。

課題配信の設定画面

今後に向けて

授業における端末の活用が活発になるにつれて、教材や学習履歴データの重要性は増していくのではないでしょうか。これまでのような「読んで解く」形式の問題だけでなく、動的なコンテンツを「見て解く・動かして解く」問題や、試行錯誤しながら「試して解く」ような問題を開発していく予定です。同時に、図版や動画を用いた解説を充実させていくとともに、振り返りの画面では、自分の学習を分析できるような工夫が必要と考えています。

児童生徒の振り返り画面

また、授業全体での活用をイメージすることが重要です。ドリルパークだけの最適化を考えるのでなく、ミライシード全体として授業でどう使っていただくのか、そのためには、どんな機能や情報提供が必要となってくるのか。このような視点で製品やサービスを提供して参ります。

取材を終えて

「コンテンツの質を評価いただいています」という部分に、教材会社としての矜持を感じました。ソフト開発をしていると「どんな機能が必要か」を真っ先に考えがちだが、製品説明の端々から教育内容を第一に考えていることがうかがえました。それが最後の「授業全体での活用をイメージ」という言葉につながったのだと思います。

課題はソフトウエアとしてのパフォーマンスでしょう。実際に使っている先生からは「画面の読み込みに時間がかかる」といった声が筆者のところに複数寄せられています。ただこの点については、すでに改善に着手しているとの返答をいただいたので、今後の改善に期待したいと思います。

取材・文/村岡明
国語教科書編集者を経て「ジャストスマイル」など教育ソフトを多数企画する。その後教職員向けのネットマガジンを創刊。ソフトウエア開発、Webサービスの開発を20年以上経験している。

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!

授業改善の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました